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コラム羅針盤

2014.03

ITによる差別化を考える

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私たちの生活を支えるIT
 
21世紀に入ってから私たちの生活にはよりITが欠かせないものとなりました。特に93年に一般に公開されるようになったインターネットは00年以降急速に一般家庭に浸透していき、今では多くの人がYahoo!やGoogleで調べ物をし、クックパッドを見ながら料理を作り、楽天やAmazonで買い物を楽しむようになっています。抵抗感を抱いていた人が少なからずいた資金決済も、セキュリティ技術の発達によりインターネットを介して行うことが当たり前のようになり、一般消費者向け電子商取引の市場規模は9.5兆円にまで拡大してきています。近年爆発的にスマートフォンが普及した背景には、これらのネットサービスとアプリケーションの存在があったのだと思います。
 
IT技術の発展は私たち暮らしを便利で豊かなものにしてくれました。しかし、IT技術が支えているのは生活の便利さだけではありません。企業活動の中心となる製造・販売などに使用される基幹系システムや交通・電力・上下水といった社会インフラもIT技術によって支えられています。今や社会生活や企業活動を営むうえで欠かせない技術なのです。近年は新規サービスの創出に向けて高い能力を持ったIT技術者を求める企業が多くなってきており、ITに対する取り組みは今後より活発化していくことになりそうです。
 
ITを活用した競合との差別化
 
いざなみ景気でIT投資が最も盛んであった03年頃、多くの証券会社が新規顧客の獲得を争って次々にインターネット取引システムを導入していきました。各社が開発したインターネット取引システムには、リッチな見栄えと機能を搭載した画面や独自のアルゴリズムを組み込んだトレーディング機能を持っていました。しかし、結局のところ各社が提供する機能や性能に大きな差は生まれず、システムの導入だけでは他社との差別化を図ることは出来なかったように思われます。IT技術はビジネス拡大の可能性を持っているものの日進月歩で進化するため、どんなに高度な機能や性能をもったシステムを構築しても、あっという間に横並びとなってしまい差別化を図るのが難しいという側面を持っています。しかし、その一方でITをうまく活用して差別化に成功した企業も存在します。
 
日本を代表するグローバル企業として知られる建機メーカーのコマツは、世界中で稼動する約30万台の建機の位置情報、運転内容、稼働時間、燃料残量、エンジン負荷、故障情報を鉱山現場から離れた場所で確認することができるKOMTRAXというシステムを開発しました。KOMTRAXから得られる詳細な情報は、建機トラブルの未然防止や故障時の迅速な対応を可能にしました。KOMTRAXは盗難対策として建機にGPSを搭載したのがそもそもの始まりだった様ですが、その後に機能の拡充といった改良を重ね、結果として最終顧客にきめ細やかな保守を可能にする仕組みを提供することで他社との差別化を図り、世界中の顧客から支持を得ることに成功しました。また販売台数の増加はアフターサービス部門の収益増加にも繋がり、利益率の向上と安定収益の拡大をもたらすことにもなりました。ITによる差別化は難しいものですが、顧客の視点に立って他社には無い新しいサービスをいち早く提供することで、顧客からの信頼を勝ち取ることが差別化を図るうえで一番重要な点だと思います。
 
社会インフラ分野での取組み
 
世界的にも高い水準で運用されている日本の社会インフラ分野において、日立製作所や東芝などの企業がIT技術を活用して世界の競合と差別化を図ろうとしています。各社が目指しているのは社会インフラの全体最適で、これまで電力・交通・上下水といった社会インフラは別々の管理システムで運用されてきましたが、IT技術を使って異なるインフラ管理システムを結び付けていく取り組みを行っています。複数のインフラ設備を1つの管理システムに集約することが出来れば、より少ない人数で運用が出来るようになります。
 
また、1つのインフラが何らかのアクシデントにより停止した場合でも、他のインフラの能力を利用して稼働を止めないといった仕組みを構築することが出来れば、より安定した社会インフラ運営が可能となります。
 
社会インフラの統合は運営の効率化だけではなく、利用者の快適性や利便性を高めるスマートシティの実現に必要な技術でもあります。13年には政府によってインフラシステム輸出戦略が策定されましたが、これらのノウハウはアジアを中心とする新興国の国民や運用者にとっても魅力的なソリューションになり得ます。日本の社会インフラはもともと高品質でもあるため、ITで付加価値をつけることで差別化を図ることが可能だと考えています。
 
差別化に向けた今後の取組み
 
近年ではクルマとITが融合するといった新たな潮流が生まれています。クルマがインターネットに接続され始めると、コマツの事例にあったような不具合情報をリアルタイムで察知し重大な事故を未然に防ぐサービスや盗難車を遠隔地から制御・静止させるといったサービスの他、車の位置や速度などのデータをリアルタムで解析することで渋滞回避や省エネ走行支援や日々の走行距離や運転態度に応じて保険価格が随時変動する商品の提供などが可能となり、既に各企業の間で競争が始まっている状況にあります。
 
今後はクルマだけに留まらず、様々な製品がインターネットに常時繋がる時代が到来するでしょう。その様な状況下で、どこよりも早くITを使って製品へのアクセスを可能にし、他社が提供していないプラスαのサービスを提供することで顧客からの信頼を勝ち取れるかどうかが企業の立ち位置を決めていくと考えています。その為には、常に顧客の声に耳を傾け、経営・事業部門・IT部門の三者が一体となって迅速に戦略を立てていくといった取り組みが必要となってきます。顧客視点に立ったサービスの提供で差別化に成功する日本企業が今後たくさん出てくることを期待したいと思います。
 
【運用調査部 アナリスト 岡田 知之】




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