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コラム羅針盤

2014.08

公平な税負担とは?

2014.8_column.jpg6月の閣議において法人税率の引き下げが決議されました。今後数年で法人税の実効税率を20%台にまで引き下げるというこの法人税改革では、日本の立地競争力の強化と日本企業の競争力を高めることを目指すと謳われています。「日本の実効税率(約35%)は諸外国と比べて高い」、いや、「企業が負担する社会保険料等を考慮すれば負担率はそこまで高くない」、「企業のマーケットは海外に移っているので法人税率引き下げは効果が薄く税収が減るだけだ」、いや、「他国の例のように法人税率を下げても税収はやがて増加する」、等々の議論はありますが、結局、法人税率の引き下げがどのような影響を及ぼすのかはフタを開けてみなければわからない、というのが実情ではないでしょうか。さて、その一方で消費税は4月から8%へ引き上げられ、今度は10%へ上がる見込みが高そうです。その他にも個人所得税や相続税では控除額の見直しや最高税率の引き上げが予定されており、これら昨今の税制改正の流れは、生活者の税負担を益々増やすものと考えられます。ただし一概にこれが悪いかと言えば、そうとも言い切れません。国を支えるための社会コストを賄うために税金が必要であることに疑いの余地はなく、結局は、誰が、いくら、税金を負担するのが公平で適切なのかという問題にぶつかります。
 
応益課税と応能課税
 
公平性を考えるにあたっては、応益課税と応能課税という2つの考え方があります。
 
私たちは社会生活を営む上で橋や道路といった公共財、司法や行政サービスなどの公共サービスを利用しなければなりませんが、この公共財等の利用から得た利益に応じて受益者に税金を負担させようという考え方を応益課税と言います。一方で、納税者の経済的な税金負担能力(担税力)に応じて税金を負担させようという考え方を応能課税と言います。応益課税も応能課税も、誰=(利益を得た人)が、いくら=(得た利益や経済的地位に応じた額)、の税金を負担する、つまり、多くの社会サービスを利用した人や所得や資産の多い人が多くの税金を負担するという点において公平と思える考え方だとは思いますが、それを現実に税制として反映させるのは非常に困難です。
 
所得税は応能課税の一例として挙げられますが、かつて高額納税者の常連であった松下幸之助さんは「日本の所得税は高すぎる。労働意欲を無くす税制は如何なものか」、という趣旨のお話をされました。当時の高額所得者の最高税率は所得税・住民税を合わせて約90%と、頑張って稼いでもほとんどを税金として徴収されていました。企業の社会性を強く意識し、税金を払わない赤字は社会悪であるという考えの松下幸之助さんにすら首を傾げさせたこの例は、いくら応能課税の考え方に立脚していたとしても納税者の納得が得られなければとても公平とは言えない一例と言えましょう。
 
節度ある税務戦略
 
さて、納得という観点で税金を考えた場合、企業に関する税金については、納税者としての企業自身の納得だけではなく、社会的にも納得が得られるかが重要になってきます。
 
企業にとって利益を減らす税金はコストであると考えられます。従って税負担を軽減し利益の最大化を図ることは株主から経営を委託された経営者にとって当然の義務と言えます。勿論、脱税等の違法・脱法行為は論外ですが、法の下において行われる節税や租税回避行為は経営努力の範疇であるとの考えが成り立ちます。しかし、そうした経営努力の結果であったとしても、少なすぎる税負担は時として社会からの反発を生みます。
 
2013年5月、米国アップル社のティム・クックCEOは米議会上院の公聴会に召喚されました。同社は、アイルランドの子会社に利益を集中させることでアイルランドと米国の税制の違いを利用し、連邦法人税の負担を不当に抑えていると問われました。同社のForm10‐Kによれば、2011年から2013年の3年間において約9兆円の税引き前利益を海外で稼いでいますが、税金費用は約2千500億円(税負担率約2.7%)でしかありません。
 
また、スターバックス(UK)は、1998年に英国に進出してから累計で約3千800億円の売上を上げているにも係わらず、収めた税金が約11億円であったことが問題視されました。同社は、珈琲豆の仕入れや焙煎にスイスやオランダの会社を経由させる等の方法で費用を積上げ、15期中14期で赤字を計上し税金費用を抑えていました。このあまりにも低い納税額は消費者の不買運動にまで発展し、結局、同社は自主的に約30億円の税金をその後2年で追加納税することを発表し事態の収拾を図りました。
 
現在までのところ、これらの租税回避行為に違法性があるとは認められておらず、経営責任を果たしているだけだ、と言えばその通りでしょう。しかし、行き過ぎた租税回避行為は応能・応益双方の観点から見ても公平であるとは言い難く、企業には法律を超えて社会的責任や影響力を自覚した節度ある税務戦略が求められることをこれらの例は物語っています。なお、このような国際的企業の租税回避行為による税収の逸失額はEU域内で1兆ユーロ(約140兆円)にも上るという試算もあり、国際的にも租税回避の規制強化の動きが始まっています。
 
公平性は社会的責任意識から
 
この世の中に税金を払いたくて働いている人はおそらくいないと思います。なるべく払いたくない、なんとか安く抑えたいと思うのが人情で、企業であれば、株主利益の最大化のためにも税負担は抑えたい、と考えるのも当然だと思います。しかし、社会に必要なコストの一方で少なくなった分は、他方で誰かが負担しなければならず、法人税減税のための財源確保も増加する国債も負担の転嫁であると言えます。誰がいくら負担するのが公平かという命題も法制度で解決するには限界があります。結局のところ、公平な税負担というのは税率の上げ下げではなく、企業も人も自らの社会的責任を考え自分に何ができるかを問うことから始まるのではないかと思い至るのと同時に、それにしても税金は有意義且つ効率的に使って欲しいと切に願います。
 
P・S
 
長期投資の複利効果で利益が積み上がれば税金もその分多くなりますので、投資家も国もwin‐winの関係が築けますね。
 
【クレジットアナリスト 中村 明博】




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