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コラム羅針盤

2014.09

モノ造りに魅せられて

2014.9_column1.jpg冒頭から私事で恐縮ですが、アナリストの道を離れ、日本のモノづくりに携わる一員として新たな道を進むことにしました。というわけで、今回が私の最後のコラムとなります。最後までお付き合い頂ければ幸いです。
 
大きく二つのお話「アセットアロケーションの変更時期と高速売買」と「アナログ技術は強い」について綴ります。前者は前々から思っていて発信する機会が無かった話。後者は三年あまりのアナリスト生活を振り返って確信していることです。
 
長期と短期
 
入社以来、長期って何年ですかと何度となく、お客様より質問をお受けしたことがありますし、また、社員同士議論したこともあります。答えは勿論、一つではありませんが、私なりの考えを述べます。
 
以下、かなり乱暴な数学的な話です。数学的話に興味のない方は、以下の3つの段落をとばして頂いても差支えありません。
 
今、ある解析的な関数があったとしましょう。そして、時間の関数として株価の値が与えられたとする。すると、期間を限定してやれば(あるいは、しなくても良い場合もある)、その最大値と最小値はわかってしまいます。だから、最小値で株を購入して、最大値で売却すれば良いという結論になります。空売りの場合はその逆。至って、単純明快です。
 
しかし、実際に株価を時間の関数として、陽に表すことに成功した人は、未だ誰もいませんし、さらに、変数は時間のみではなく、政治家の発言、金融政策の変更、戦争の勃発等様々な外部変数も存在するでしょう。そもそも株価は関数と言うより汎関数(無限個の変数を持つ関数と思って頂きたい)と定義した方が理論的には取扱いやすいのかもしれません。これは、経済物理の分野では、コピュラという概念で若干現れていますが、筆者の知る限りあまり進展していないようです(物質のふるまいを決める理論の一つである密度汎関数理論的アナロジーで話している)。むしろ、金融界に混乱を引き起こしたという話もあります。
 
話が若干それましたが、局所的でなくグローバルな、つまり大域的な振舞いがわからない限り、その関数の最大、最小値を求めることは事実上不可能です。一方で、局所的な最大、最小を論じるのは、はるかに簡単です。
 
直観的な例を挙げましょう。例えば、我々の住む地球が丸(球面)であると感覚的に認識できる人がどれほど居るでしょうか?普段、地球は平ら(平面)であると認識していて十分です。実際、数学的にも球面は平面によく近似できます(一般相対論を使うGPSではそうはいきませんが、今、そんなことは考えないことにします)。地球が局所的には平面でも大域的には球面であるのは小学生でも知っています。しかし、実際に、大域的構造(遠くの地形)を知るのは難しいことだと、おわかり頂けると思います。
 
したがって、コンピュータの発達した現在では、より短期(局所的)な売買をする方が、数学的には簡単であるし、統計学上のリスクは小さくなります。これはこれでひとつの理屈でありますし、否定するつもりもありません。ただし、断っておきますが、こんな投資(といよりはマネーゲーム(?))を追求すると、常に他人より速く動作するコンピュータ、そのハードに最適化されたコンピュータプログラムを常に用意しなければなりません。さらに、常に、最新にアップデートしなければならないので、コストは莫大になります。それにも拘わらず、その計算が当たる保証はどこにもないのです。弊社の目指す哲学とは全く対極に位置するのは言うまでもありません。
 
さて、私の結論です。長期投資におけるアセットアロケーション変更は、世の中の大域的構造(「大域的トポロジー」と言う方がふさわしいが、数学用語なのでやめておく)の変化するときと言えるでしょう。
 
それで、長期投資屋として、このような手法で戦う市場参加者とどう対峙していくのか。以下が、一つのヒントになれば幸いです。
 
アナログ技術は強い
 
最近は、電機、半導体、二~三年前だと鉄鋼業や、造船業がもう終わりかのような勢いで、まるで、日本のモノづくりすべてが崩壊して、日本全体がそんな悲壮感のなか沈没してしまうかのような論調が溢れていたと記憶しています。しかし、今では、手のひらを返したかのように、世界ナンバーワンの○×会社とか報道されている会社もあります。あまりにも乱暴な論調の変化なのは明らかですが、なぜこう認識されてしまうのでしょうか?
 
これも、いつも伝わりにくいので、料理に例えてみます。例えば、おいしいレストランの味をご家庭や同業他者が真似てみようと思ったとします。まずは、レシピを盗まないと始まりません。レシピ無しで、味を真似るのはかなり難しいはずです。
 
しかもレシピを盗むだけでは料理はできません。その後の調理法も極めて重要です。どれくらいの火加減、茹で加減か?前処理は湯通し?油通し?粗熱はどうやってとる?徐冷、急冷等の塩梅は、かなり泥臭い試行錯誤が必要で簡単には真似できないのです。
 
一方で、例えばインスタント食品は、誰でもおいしい食事がつくれてしまいます。そんなインスタント食品のようなハイテク工業製品は実際に存在します。お金さえ払えば、高価な装置を購入できて、製造ラインを構築して、スイッチを押すだけ。こんな製品はコスト競争になって、新興国企業に負けやすくなります。そして、負けた(負ける)日本企業も実際に存在します。どうも、この辺りのことが、ごちゃ混ぜにして論じられている傾向がかなり強いと思います。というわけで、アナログ技術はそう簡単には盗めないと強調したいと思います。
 
さて、最後になりましたが、お客様には、温かい励ましの声や、時には厳しいご意見も頂戴し、感謝の言葉も見つかりません。今後はモノづくりの一員として微力ながら尽力して参ります。
 
以上は私の意見であり、弊社内でコンセンサスがとれているわけではありませんし、また、そんな必要もないはずです。多様性のない組織はつまらないですから。それではごきげんよう。

【ジュニアアナリスト 石井 聡】




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