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コラム羅針盤

2014.11

歴史は繰り返すのか?今回は違うのか?

2014.11_column1.jpgアベノミクスが採用されて約2年経過します。筆者はアベノミクスに疑問を持ち弊社開催の金曜勉強会などでリスクを指摘してきました。本稿ではアベノミクスの狙いと成果を概観し、筆者が懸念するスタグフレーションと日本銀行のジレンマ、そして今後ありうるリスクと筆者なりの対応策について述べながら、歴史は繰り返すのか、それとも今回は違うのかを考えます。
 
アベノミクスの狙いと成果
 
アベノミクスの狙いは金融政策(日本銀行の政策)で物価を上昇させ(第一の矢)、機動的な財政政策(日本政府の政策)で消費を刺激し(第二の矢)、規制緩和などで投資を呼び込み(第三の矢)、経済を回復させることです。三本の矢のうち第一の矢の成果である物価上昇が目立ちます。代表的な物価(総務省の消費者物価指数総合)を見ると2014年8月までの一年間で3・3%上昇しています。消費税の影響1・7%を除くと1・6%の上昇となります。対して平均的な収入(厚生労働省の現金給与総額)は2014年8月までの一年間で1・4%の増加に留まり、物価上昇分3・3%の影響を除いた収入(実質賃金)は1・9%低下しています。現在の収入で買える物の数は1年前より少ないのです。失業率は改善し2014年8月では3・5%となっていますが、改善は非正規雇用が中心であり長期雇用である正規雇用は減少しています。ですから、物価だけが上昇して消費と雇用が増えないスタグフレーションと呼ばれる状況を筆者は懸念しています。さらに日本経済全体の満足度(社会余剰と言う)が改善しないことも懸念しています。
 
スタグフレーションとは「インフレーション(物価上昇、以下インフレ)が存在しているにも関わらず、失業率が改善しないこと」です。この定義で暗に仮定されているのは、インフレの背後には強い消費が存在し、旺盛な消費が物の値段を上昇させているということです。その為、筆者は現在進行しつつあるインフレが消費の拡大によるものでないことをリスクと考えています。何故ならば、消費とインフレの関係は1970年代の高度成長期のような時期には当てはまりますが、2000年代のように成熟経済と言われ消費が低迷している時はそうではありませんでした。そこに筆者が考えるアベノミクスの罠(リスク)が二つあると考えています。
 
第一は金融緩和で実現した円安、第二は物価が上昇すると予想され消費が増えた時(消費税増税前の駆け込み需要が発生した時など)に生産不足になることです。
 
第一の罠の円安は輸入している物の値段だけでなく電力価格などを引き上げ、結果として物やサービスの消費量を減らすことに繋がります。消費が減れば雇用が減ることが懸念されます。つまりスタグフレーションの要因となります。
 
第二の罠の消費に対し生産不足になる状況は、すでに現実となりつつあります。2014年4月の消費税増税前に駆け込み需要で消費は活発になり消費が日本国内の生産力の限界にまで近づきました。先に述べたように消費が生産の限界に近づきインフレを引き起こしている可能性もあります。もしこのまま消費が増え続ければ生産が追い付かないために物価上昇が継続します。
 
問題は日本国内の生産で賄いきれない分を輸入に頼った場合、円安による物価上昇が発生することです。第一、第二の罠が相互に強く影響しあいます。この場合に企業は日本国内に工場建設などの投資をして、長期的な雇用を作り出すのでしょうか。日本国内での雇用創出の前提には増税前の駆け込み需要程度の活発な消費と輸出のため現在の円安が継続することが考えられます。仮にこれらが継続すると考えれば日本企業の日本国内での投資と生産は回復していくと言えるでしょう。しかしそうでなければ長期的な雇用が改善せず、スタグフレーションとなることが予想されます。
 
歴史は繰り返す
 
スタグフレーションについて我々は歴史から学べます。世界経済は過去にスタグフレーションを経験して克服しているのです。それは1970年代に米国が経験した石油危機後のインフレと景気後退です。当時の米国経済は消費に対する生産不足と石油価格高騰によるインフレに直面し、失業率が改善しないスタグフレーションを経験しました。現在の日本経済と似ています。因みに米国経済は政府の消費を減らす、企業に対し増産のための投資を促すなどの政策を導入しながら解決を試みましたが、解決には石油価格低下が一番の要因でした。
 
歴史は繰り返すのでしょうか?筆者は、今回は違うと考えています。その理由は現在日本経済が直面しているインフレに関しては金融政策が与える影響が大きいことです。もし金融政策が緩和姿勢を変え円安傾向が落ち着くと円安に伴うインフレが緩和されます。
 
しかしここにこそ、日本銀行のジレンマとアベノミクスのリスクが存在します。日本銀行の目標として物価目標かそれとも経済回復か、そのどちらを選ぶのかというジレンマです。仮に日本銀行が円安の影響を緩和するために米国に合わせて利上げするとしましょう。この場合、企業による国内投資は増えず長期的な雇用も改善しない可能性があり、アベノミクスの最大のリスクが現れます。それは国債の利子率が上昇し財政負担が増加することです。もし税金の最大の使い道が国債返済となり社会保障支出が抑えられると、我々が直接負担する医療費が増え病院に行くのを控えたりして我々の日常生活に支障が生じます。社会余剰が悪化しうるのです。
 
社会余剰の悪化やスタグフレーションを回避するためには、消費を無理やり増加させるのではなく緩やかでも消費が持続する仕組みを作ることが大事だと筆者は考えます。そのために介護や医療の専門職など若い人を多く雇用する産業を積極的に支援しサービスの対価として高齢世代から若い世代へとお金を回し、若い世代の消費を促すのも一つの方法と考えています。
 
実際の政策や経済全体のリスクを見極め、市場の先を見つめる。それが機関投資家の役割だと考えています。筆者の考えを今後も金曜勉強会などで発信していこうと思っております。
 
【アナリスト 福田 真二】




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