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コラム羅針盤

2014.12

環境規制と電装化

2014.12_column1.jpg型フォード工場建設による自動車の生産革命が起きたのが約100年前のことです。1905年に年間1000台規模であった世界の自動車生産台数が25年には180万台、45年には1000万台と大量生産の時代を迎えました。それから100年が経過しようとする現代において、自動車における新たな変化が起きようとしています。著名な経済学者JAシュンペーターはイノベーションこそが経済を発展させるとの理論を構築しましたが、現在そして今後起こり得る自動車産業での技術革新は多くの分野で経済的な変化をもたらすものであると考えます。自動車産業でもたらされる変化はどういったものでしょうか?最近ではニュースでも話題となっておりますが、「環境」と「安心安全」この2つが今後の大きな要因になるでしょう。
 
環境規制
 
世界の自動車市場は2020年にかけて大きな変化を迎えます。その要因となるのが各国で施行されるであろう環境規制です。過去には米国排ガス規制法「マスキー法」が一つのターニングポイントとなりました。マスキー法は大気汚染の原因物質である一酸化炭素と炭化水素、窒素酸化物を従来の10分の1に削減した車でなければ販売を認めないというものでした。当時の米国は大気汚染が深刻な社会問題となり、その後同様に日本でも大気汚染が問題となり、日本版マスキー法を導入することになります。達成不可能と言われたマスキー法を世界で初めてクリアしたエンジンを開発したのが、当時は二輪車の中小メーカーであったホンダです。のちにマスキー法はBIG3の政治力により延期されましたが、直後のオイルショックも後押しし日本車は生産台数において米国車を抜き去りました。四輪では後発であった日本車が米国で大きく販売台数を伸ばせたのも規制を発端とした技術革新期の競争に勝てたからに他なりません。
 
話を現在に戻してみます。中国では大気汚染が大きな問題となり、インドでは中国以上に環境問題が深刻であるとも言われています。今後世界の自動車市場を牽引するこの2か国の置かれている状況は過去の米国、日本と似ています。先進国では欧州を筆頭に高い水準の環境規制が始まります。欧州では販売した新車の総平均CO2(欧州公式認定試験NEDC基準)を、2015年130g‐CO2/㎞、2020年95g‐CO2/㎞にしなければならないというものです。ちなみに三代目プリウスの欧州基準の燃費は約90g‐CO2/㎞です。エコカーの代表でもあるプリウスと比較することで、この制度のハードルの高さが分かるかと思います。また、基準値に満たない場合は制裁金を支払う必要があります。ざっくり試算しますと、年間100万台の販売をするメーカーの基準値超過分が3gと仮定すると、罰金額は約450億円(140円/ユーロ)となります。米国でも2025年にかけて自動車燃費基準(CAFÉ基準)が強化され、乗用車では25・9㎞/L、小型トラックでは23・2㎞/Lとなっています。中国での2020年規制案は20㎞/Lと日本の目標と同水準であり、インドでも今後規制が強化されていくでしょう。
 
電装化と48V化
 
燃費を上げるための1つの手段がエンジンの高効率化です。圧縮比14のエンジンや熱効率40%のアトキンソンサイクルエンジンなどの技術進歩は大きく目標達成に貢献するでしょう。ほかには車体の軽量化などもありますが、大きなトレンドの1つが車載の電装化です。最たるものはハイブリッド自動車です。エンジンだけでなく駆動用のモータを積み、さらにトランスミッションを電気的に制御することでエンジンとモータを最適な配分で作動させることができます。またエンジンの効率化においても電装化は大きな役割を果たします。エンジン内の温度や酸素、濃度などをセンサで感知し、ECUによって計算処理し、モータ・アクチュエータによって最適なタイミングで燃料を噴射させることによって熱効率はさらに高めることができます。これらに共通するのは機械的に制御されてきた構造がセンサ・ECU・モータ・コネクタなどの電子部品で電気的に制御されていることです。そして欧州を中心に注目されているのが自動車の電圧の48V化です(現在は12V)。理由は簡単で大きなコストをかけずに燃費を改善するには48Vは最善と考えられるからです。自動車の高電圧化は今に始まったことではありません。1950年頃には電源電圧が6Vから12Vへ引き上げられました。それまで照明や点火装置だけであった電気系統に対して、エンジン制御やエアコン、オーディオ、ナビゲーションといった新たな電気系統の増加が要因です。その後、自動車1台当たりの電力消費量は過去30年超で4倍以上に増加してきました。それに伴い1990年から2000年にかけても12Vから42Vへの高電圧化の取り組みがなされましたが、電子部品や電池の技術的問題やコスト高が原因により計画は頓挫しました。重要部品は以前に比べて技術的に進歩し、コストパフォーマンスも向上しており、条件は好転していると言えます。50年の時を経て、車の高電圧化が進むのか?注目すべきポイントであると思います。
 
収益構造の変化
 
車載の電装化によって車における収益構造は変化していくと予想されます。たとえば1台200万円の車があったとします。うち原価を160万円とすると、機械部品の原価が110万円、電子部品の原価が50万円というのがおおよそ従来の構造でしょう。しかしながら電装化が進むことによって電子部品の割合が大幅に増加していくと思われます。つまり自動車の電装化によって電子部品に何兆円という新たな市場が生まれます。この電装化の恩恵を受けることができないメーカーはますますコモディティ化し、新たに従来のサプライチェーンでは存在感の小さかったメーカーが大きく飛躍する可能性があります。過去にマスキー法によって日本車が米国車に取って代わったように、今後は自動車部品の業界において序列が変わる可能性が高いと考えられます。自動車は安全性・信頼性が第一です。コスト重視であり季節性の高い一般消費者向けの電子機器と異なり、自動車に使われる電子部品は高い品質と自動化による安定した生産がモノを言うため、日系メーカーの持つ競争力を発揮できる領域であると期待します。
 
【アナリスト 坂本 琢磨】




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