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コラム羅針盤

2016.04

GDP、20世紀で最も 偉大な発明と評される経済指標

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 日々新聞やテレビ等で目にするGDP。直近では「中国成長率7%割れ 7~9月6.9% 6年半ぶり低水準」「新5カ年成長、6.5%以上に=国防予算7.6%伸び-中国全人代開幕」などが報道され、政治や金融市場へ大きく影響します。 歴史上の出来事においては1970年代のイギリスが挙げられます。当時は低い経済成長率に対して、インフレ率は高く、貿易赤字の対GDP比は大きく上昇しました。それによって金融市場の信頼が失われ、ポンドの価値は暴落しました。IMFの緊急融資を受けるためにも、財政赤字のGDP比率を一定以下に切り下げる必要がありました。当時政権を握っていた労働党は財政支出の急激な削減を迫られ、その後の選挙でマーガレット・サッチャー率いる保守党が政権を握ることとなります。しかし、後の調査において、貿易赤字とGDPの数値が修正され、ポンド危機が実はそれほど深刻ではなかったことが明らかにされています。過去にタラレバはありませんが、もしもより正確な数字を算出することができていれば、サッチャー政権は歴史上とはまた違った形になっていたかもしれません。このようにGDPは歴史を左右する重要な経済指標の1つと言えます。
 
 
GDPとは?
 
 GDPは「生産」「支出」「所得」の3面から求めることができ、どの方法においても、原則として結果は同じになります。一般的にマスコミなどでのGDPの捉え方は支出面からであり、数式では以下のように表せます。
 
――――――――――――――――――――――――
GDP=消費者支出+投資+政府支出+(輸出-輸入)
――――――――――――――――――――――――
 
 家計・個人の消費、企業による投資、財やサービスに対する政府による支払い、それに輸出入の差額を加えたものであり、国内で使われたお金をすべて足せばGDPになります。考え方はいたってシンプルながら、実務におけるその算出はきわめて複雑です。それはどこまでも細分化されることによるデータ収集の困難さだけでなく、経済活動自体の複雑さが増してきたためです。
 現在では一部の製品に対して質の変化を考慮したヘドニック指数が多くの先進国で採用されています。例えば、質の劇的な向上と価格の低下です。十数年前には何億円としたスーパーコンピュータと同等以上のスペックのスマートフォンが数万円で手に入る時代です。ある試算によれば、労働単位当たりで見た場合のコンピュータのパフォーマンスは、1900年以降、年率30%以上で拡大したと算出されています。品質向上の過小評価はインフレ率の過大評価と同じことであり、実質所得を過小評価してしまいます。これらの利用者の価値の増大をGDPに組み込むために同指数が用いられます。しかし依然として指数に対応していない商品が存在するほか、家事や帰属家賃などもGDPには組み込まれておらず、まだまだ改善の余地が残されていると言えます。紙面の関係上、ここですべての事例を紹介することはできませんが、GDPの歴史的変化は大変興味深いものです。
 
 
GDPに対する私の疑問
 
 私がGDPに興味を持ったきっかけは、「GDPは成長を続けないといけないのか?」と常々思っていたからです。何事も成長はポジティブ、衰退はネガティブに捉えられますが、それは対象物そのものの定義や基準を知ったうえでないと判断はできません。
 GDPのここ数十年の成長要因は、さきほども言及したイノベーションや多様化によるところもありますが、GDPの金融業における統計手法の変化も大きいです。もともとは金融業界の付加価値は他のサービス業と同様に手数料のみで算出されていました。その後、金融仲介による利息収支が最終付加価値と認められ、現在では借入による支払利子と貸出による利息収入を別々(従来はこの差額)に計上しています。これによりGDPに占める金融業の割合は高まり、その影響度は大きくなっています。リーマンショックのきっかけとなったサブプライムローン問題のように、無秩序なリスクの増大による金融主導のGDP増加は良い成長とは言えません。そしてもう1つ考慮すべきは、GDPには環境破壊、事故、戦争などによって生み出された我々にとっては負の要素も成長要因として測定されているということです。
 経済成長がなければ所得を十分に分配することはできません。そして1人当たりのGDPの増加と人々の幸福度との間には、実際に強い相関があるという最近の研究結果もあります。しかし強い相関があるからといって、そこに因果関係があることは証明できません。かのチャーチルは「成長は全ての矛盾を覆い隠す」と言いました。GDPの他にも「人間開発指数」や「Better Life Index」などの指標も開発されており、それらを補完的に活用して政策を論じることも必要でしょう。
 最後に世界で最も清貧な大統領と言われた元ウルグアイ大統領ホセ・ムヒカ氏の言葉を紹介します。
 
「発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。」
 
【アナリスト 坂本 琢磨】




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