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日本で唯一のSKYTRAX社「5スター」エアラインである同社。
ナンバーワンとなっても挑戦し続けるDNAの源泉とは?
 

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ANAホールディングス株式会社
専務取締役執行役員、グループCSR推進会議議長
秘書部・グループ法務部 担当、コーポレートコミュニケーション室長

殿元 清司様
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取締役最高投資責任者 兼 ファンドマネージャー
草刈 貴弘

厳しい時さえ挑戦するDNA
 
草刈(以下草) 私たちの考える企業価値というものは、四半期決算毎の細切れになった評価ではなく、それらが繋がった5年、10年分を積み上げた本質的なところであると考えています。以前、弊社では日本航空さんにも投資していましたが、2000年代初頭に長期的な企業経営に対する考え方の違いが鮮明になったと判断したことをきっかけに御社にしぼりました。それは当時競合であった日本エアシステムと日本航空との統合といった理由だけではなく、御社の人的ソリューション、サービスや競争力をいかに高めていくかといった点に競争優位性を感じたからです。
 しかし、航空会社は原油価格の高騰や戦争など、外的要因によって業績が振れやすく収益が厳しい時期もあるかと思います。そういったときでも御社のように優れていて生活に必要だと思う企業に対して私たちは投資させていただきたいと考えています。ファンド仲間の方から「なんでわざわざ業績が悪い企業に投資するの」というご意見もいただきましたが、そんな時こそ応援をしたいとお伝えしています。このような取材を通じて、ファンド仲間に投資先企業をご理解いただき、厳しい時期に思い出して将来を楽しみにしていただきたいのです。
 
殿元(以下殿)ありがとうございます。弊社の歴史から少しお話させていただくと、弊社は1952年にヘリコプター2機の会社としてスタートいたしました。特定の資本の傘下になるのではなく、純民間航空会社として創業し、チャレンジしてきた会社です。
 私が入社した当時は国内線のみの会社でしたが、現在では国内・国際旅客事業、貨物郵便事業を展開しています。 世界中のフラッグキャリアと呼ばれる会社が経営破綻したり、チャプター11により再生する中で、我が社はそういった経験をせず乗り越えてきたという歴史を持っています。
 これは振り返ってみると経営状況を従業員に広く情報共有し、厳しい時には一致してそれに挑むという会社のDNAがあったからだと思います。
 
正面から乗り越えた4つの課題
 
  それともう一つ、2000年当時にIR活動を組織的に強化しました。海外でのIR活動の際に、投資家の皆さんから見たANAにはどのような課題があるかと伺うと、ほぼ共通して4つのご指摘がありました。
 
 1つ目は日本航空と日本エアシステムの統合が発表された時でしたので、ANAの国内線優位という立場が崩れる、これにどう対応するのかということ。
 
 2つ目は赤字が続く国際線事業をどう黒字化するのかということ。
 
 3つ目は関連事業。ホテルや不動産等の関連事業をこの厳しい環境の中でどう再生し処理するのか。
 
 4つ目は当時自己資本に比べて借金がものすごく多かった。イベントリスクが起こると容易に債務超過になるような脆弱な財務体質をどう対応・改善するのか。
 多くの投資家の皆さんと議論を進めていく中で、これらの問題提起に集約されていきました。それを乗り越えられたのは課題から逃げず、正面から経営がリーダーシップをとって対応していったからでしょう。
 今まさに、国内線を安定的な利益基盤として確保しながら、国際線の旅客貨物事業のように将来性のある事業に投資し、拡大しています。またコスト構造改革を不断の努力で続ける。この収入を増やす・コストを効率化するという両輪で回しています。最近は燃料価格が原油価格の下落によって安定してきているので、今後数年間は比較的堅調な状況が続くのではなかろうかと考えています。またお客様からの期待にもサービスで応えることができ、SKYTRAX社ワールド・エアライン・レーティングで最高評価である5スターを3年連続獲得しました。
 我々は公益事業ですから、旅客輸送・貨物事業を通じて、事業活動そのもので社会貢献できる、あるいは社会の課題を解決できるという側面があります。そんな社会の期待に応えることが従業員の誇りにつながり、グループ全体のポテンシャルにつながる。そんな会社になりつつあると思います。これが、私が38年ANAグループで働いてきて誇れるところ、他社との違いであると思います。

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