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企業対談

2016.02

『「和の心」で挑む未知未踏の挑戦』 浜松ホトニクス株式会社

独占状態でありながら、自身で進化しつづける同社
守るべき伝統と打破すべき壁とは
 

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浜松ホトニクス株式会社
代表取締役社長
晝馬 明様
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取締役最高投資責任者 兼 ファンドマネージャー
草刈 貴弘


草刈(以下草) 現在御社の光電子増倍管は、ほぼ世界で独占状態です。しかもハイエンド製品は全て御社の製品と言っても過言ではないと思います。なぜこの分野で世界No.1にまで成長することができたのでしょうか?

 
晝馬(以下晝) 我々は創業して63年目になりますが、創業当時は光電子増倍管ではなく光電管というもっと単純な構造の機器を作っておりました。光電子増倍管はとても高感度で有用な光センサーだと世界で言われていましたが、まだ日本で製造している会社はほとんどありませんでした。ある企業様からの注文で試行錯誤の末に開発に成功し、1959年から製造を開始しました。日本だけではなく世界トップレベルの製品を作るのだという意気込みで取り組んできましたので、光電子増倍管のシェアをどんどん伸ばしていくことができました。しかし、光というのはまだまだ未知の領域が残されています。例えば光電子増倍管のQuantum Efficiency(量子効率※)は良いものでもまだ30~40%。これを現会長の晝馬は100%を目指すと言っています。そこにどうやったらたどり着けるかと現場の社員自身が考え試行錯誤する。そうやって新しい製品を作り出し、直接社会に貢献しているという意識が成長のドライバーになっていると思います。

未知未踏の世界での生産性
 
 光の世界は未知未踏な世界だと現会長の晝馬様が以前仰っていました。目標や手本があるわけではないので自分自身を信じる以外にないという非常に難しい状況です。ライバルのような存在があってこそ奮起して成長するという方が一般的です。それが存在しない今、組織をどのようにしてコントロールされているのでしょうか。
 
 光センサーには様々なものがありまして、電子管事業部の光電子増倍管以外にも、固体事業部が取り扱うフォトダイオードなどの光半導体素子もあります。事業部の中には部門があり、それぞれが独立採算制で動いています。よって社外だけでなくある意味社内にもcompetitor(競合者)がいることがあります。それぞれが切磋琢磨し競い合っていますが、企業全体としてはひとつの方向に邁進しています。
 
 事業部同士がcompetitorになってしまうと、社内でシェアの奪い合いとなってしまいかねません。最悪の場合会社全体ではむしろ成長していないということもありえます。ところが御社の場合では、研究開発型で『顧客の求める性能の良さ』という絶対的な指標があるのでそれは起こりえない。常に新しいものを作り出さなければいけないという点で同じ方向ということですね。
 
 そうですね、以前は営業も事業部ごとにありましたが、お客様の要望に対してベストな提案ができるように、営業本部として一つにまとめることで窓口を一本化しました。1つ例を挙げますと、光電子増倍管が使用されている装置を小型化したいというニーズがあった場合、固体事業部で扱っている小型な光半導体素子を提案するなど、スピーディーに対応することができます。
 
 電子管事業部に限らず、固体事業部、システム事業部も様々な産業に対して相当数の種類の製品を作られています。その中にはガラス加工のように手作業での生産も少なくありません。これは他の製造業の方も秘訣を聞きたい所だと思うのですが、少量多品種でかつ高品質ということは、在庫や材料という視点で非効率的になりやすい。にもかかわらず御社は事業の拡大と高利益率を維持されていらっしゃいます。これはなぜ実現できるのでしょうか。
 
 少量多品種といっても需要を予測して在庫を確保しているということではなく、多くがお客様の要望によって作られる特注品ですので非効率的にはなりにくいと言えます。特に電子管事業部では、お客様ごとにかなり細かな仕様が要求されるため、製造のプロセスごとにお客様の要望にすぐ対応できるよう生産工程や製造設備が完備されています。一方で、少量多品種の生産を素早く行うことも大切で、光電子増倍管に固体事業部の持つ半導体製造技術を応用し、工程を縮めて低価格で、ある程度の量を自動的につくることができる製品開発も行っています。また、同じような性能を持つ、今までの工程を少なくしたよりよい製品をどのように効率的に作っていくかを考えています。
 
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産業のピラミッドを広げる
 
 今後は事業部を越えた製品がでてきたり、人も世代交代が進んだりすると思います。御社の10~20年後を見据えた時に、晝馬社長が考える守破離とは何でしょうか。
 
 創業者が実際の仕事に関わらなくなってきても、創業当時の強い想いは守っていきたい。ただ、同時に常に変化をするためにも世代交代は必要ですので、次の幹部候補を育成する体制を整えました。以前はカリスマが旗を立て、皆でそこへ向かって走るというイメージでしたが、今後は社員個人個人の能力を足していく「和の心」を持って、10年20年先を想像しながら、若い世代と共に議論して会社全体の方向を考えるという経営をしていきたいと思います。また、もともとカリスマに対して現場が何も言えなかったかというとそうではなく、逆に下からの突き上げが大きい会社かもしれません。これもなくしてはいけない所だと思います。今後も部門独立採算制は続けていきますが、現場の声を聞きながら組織に横串を刺し、事業部を越えた様々なプロジェクトを進めていこうと思っています。
 
 未知未踏の地を開拓しながらも、新しい人が下からどんどん突き上げてきて前に進んでいるという感じですね。弊社もそうですが、創業者はカリスマ性が強い。故に今後は皆でチカラを合わせて「和の心」でいこうというのは非常に理解できます。人材確保の面では、光産業創成大学大学院を設立されましたが、若い人材はどうでしょうか。どのような人材や施策が必要だとお考えですか。
 
 弊社では、一人の技術者が製造だけでなく同時に開発にも関わっているという所が他のメーカーとは違います。ですから今まで全くやってきたことのないようなことをやる新しい人材が必要だと思います。人材育成とは少し話がずれてしまうかもしれませんが、一般的な産業構造は、完成品メーカーを頂点として産業の裾野が広がっていくピラミッド型です。しかし、光産業は逆ピラミッド型だと思っています。我々はそのボトムにいる。我々のようなセンサーや光源などの要素製品メーカーがボトムにあり、それらを使ってモジュールを作るお客様がいて、その上にモジュールを組み込んだシステムを作る会社がある。そしてシステムを使用してサービスを提供する。このように段々と裾野が上に向かって広がっていく産業構造だと考えています。ですから、ボトムである我々の製品がお客様の作る最終製品の性能を左右してしまう、そう自負しています。そのような我々が成長するにはどうしたらいいかというと、一つはモジュールまで作る、つまり逆ピラミッドの少し上の領域まで手掛けるということが考えられます。もっと大切なのは新たなアプリケーションを見つけること。つまり新しい産業を見つけて逆ピラミッドの上部を広げるのです。そういう事ができるのはベンチャーだと思うんですね。新しい領域を作るベンチャー企業がどんどん出て、それに伴って光技術の応用が広がる。そういったベンチャーをリードする人の育成と支援が必要だと思います。静岡大学、浜松医科大学、光産業創成大学院大学、そして弊社の4者で浜松光宣言というものを出しました。浜松が将来的には光の聖地になればいいと思います。そこから新たな光技術を応用したベンチャー企業や産業が生まれ、世界各国から研究者が集まる。浜松市に来て一緒に新たな製品づくりをするという仕組みが生まれるのではないかと思っています。

リスクをとりながらも着実に進化
 
 なるほど、浜松が光の聖地となりそこから世界へ発信するわけですね。ある意味地域活性化にもつながるということですね。製造業が海外に移っていますが、光については逆に世界から浜松に集まる。産業と地域の両方が活性化するとは非常に楽しみな構想ですね。晝馬社長は今後楽しみな研究テーマなどはありますか?
 
 中央研究所では次世代プロジェクトというものが動き出しています。メガネなどを使わないでも空間内に作り出された立体的画像が見えるような技術の開発や、非侵襲という特徴を持った中赤外光の応用開発など、かなり高い目標で研究を続けています。今までも、当社ではレーザー核融合やPETなど、実現までたどり着くには10~20年かかるかもしれないような高い研究目標を掲げて取り組んできました。このような高い目標を目指す途中で新しいアプリケーションが見つかるかもしれない。新しい応用を見つける力、すなわちセレンディピティ※を持った社員を育てたいですね。
 
 一般的な投資家であれば、企業の売上や利益の成長という観点でしか判断しません。誤解を恐れずに言うと御社はそれほど利益を追わなくていいはずなのです。なぜなら新たな光の領域、高い目標に向かって進み続け、その過程で新たな領域を生み出すからです。その新たな領域はほぼ独占状態ですから後から結果としては儲かる。もちろんその過程で研究を続けるための利益が必要だと思いますが。
 
 小柴先生と会長の晝馬がカミオカンデ用の20インチ光電子増倍管を開発した時の話ですが、結果的に数億円の損が出ました。はじめから損をすると分かっていたわけではないのですが、やり遂げた結果、素粒子観測に関する仕事が生まれたのです。当時の数億は弊社にとってかなりリスクのある金額でしたが、それが無ければのちの数百億もの受注も取れなかった。あの時の決断がなかったら、今の日本の素粒子の研究への発展はなかったと思います。また1980年代の話ですが、ある製品では若いプロジェクトリーダーが開発期間の7年程で髪の毛が真っ白になるほど苦労していました。それはハレー彗星が来るのに必要だということで開発した彗星探査機用のセンサーです。彗星は待ってくれませんから相当苦労して作り上げました。このセンサー技術が、開発から20年経った後に必要とされる分野が出てきたのです。今ではバイオ分野向けのカメラに組み込まれ、シェアを大きく伸ばしています。このように、リスクは当然ありますが、リスクを取らなかった場合のリスクも考えなくてはいけない。どれだけ大きなものを逃したのか測ることができないですから。挑戦していくということを非常に大切にして我々は伸びてきました。若い人たちには失敗を恐れないでやってほしいと思います。
 
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 10~20年後の御社はどのようになっていたいとお考えですか。
 
 社内にベンチャー的な、急激な社会の変化にも対応できるような小回りのきく組織ができればと思っています。それが成長すれば、浜松ホトニクスのDNAをもった関連子会社として外に出て行ってもいいでしょう。親が子を産むように、子が孫を産むように、それぞれの会社が育っていく。そうやって新たな産業をつくり出すことで逆ピラミッドを広げていくような浜松ホトニクスグループを作っていきたいと思っています。
 
 

 

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浜松ホトニクス株式会社
代表取締役社長
晝馬 明 様
 
昭和56年ニュージャージー州立ラトガース大学卒業
昭和59年浜松ホトニクス株式会社入社
平成17年米国ハママツ・コーポレーション社長就任
平成21年浜松ホトニクス株式会社社長就任
平成22年学校法人光産業創成大学院大学理事長就任




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