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2016.07

舞 ~能に果てなし~

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 都内の通勤ラッシュは人の海だ。電車のドアは一斉に人を吐き出し、また一杯に吸い上げ次の駅へ向かう。そんな右に左に踊る満員電車も、人の数だけ願いを運んでいる。そして古来、人は願いを舞いに託した。「世界最古といわれる舞台芸術『能』は、劇作家シェイクスピアより約200年前、ここ日本で確立された。」観世流 能楽師 久保さんは語る。

「能は祈り、能を世界へ。」
 そう、久保さんの長期投資の先には能文化を世界へ広める挑戦が待っている。
 
いつでもおいで

 2011年秋、震災後の臨時オフィス立ち上げに駐在した神戸。地元客でにぎわう飾りのない小料理屋で久保さんに出会った。「能楽師です。よろしく。」温かい雰囲気についたずねた。「能の魅力って…?」「分からなければ、いつでもおいで。」楽しげに言う。「能の起こりは申楽(さるがく)、申踊り。」
 
「観る」より「やる」
 
 初めて観た能舞台は、眠気に包まれた。地謡(じうたい)が耳に心地よく、舞いの意味は掴めずストーリーを追えない。ところが回を重ねると、楽師の躍動が目に耳に迫ってくる。「能は見世物じゃない。」と久保さん。「母を想うシーンなら『私なら何を想うか。』と観客も役に入り込む。楽師の演技力が3なら、観る人の想像力が7。楽師と観る人が一体となって世界をつくる。」
 今、ハリウッド映画など魅せるエンタメが主流だ。一方、想像力を頼りに楽師の一挙一動から心や時の流れを掴む能をシンドイ又はおもしろいと思うかはその人次第だろう。ただ、能が人間の想像力を信じて生まれた芸術なら、人間の欲をAI(人工知能)が先回りしてつくる娯楽番組では辿りつかない領域がある。室町の頃より人々が能に託してきた「祈り」の領域だ。
 
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「祈り」は途絶えず
 
 能を大成した世阿弥生誕653年。数多の芸事が動乱に消えゆく中、なぜ能は今も受け継がれるのか?「起源は田楽、飢えを恐れる庶民が五穀豊穣を願い田畑で舞った。神を招き、神にご覧頂くために。源平合戦後は『戦争はやっちゃいけない。』と人々は天下泰平を祈り、非業の死を弔うために舞ったとされる。悲しみ、嘆き、願い。いつの時代も能は庶民の祈りを『カタチ』に、そして将軍家は世を治めるために能を守った。」
 世の中が、能を必要としたのだ。
 
教えない
 
 2歳で初舞台に立ち、能に生涯をかける久保さんは「教えないのが一子相伝」と言う。「『丁寧に謡わなきゃ。』と師匠に叱られた5年後、私がその舞いを弟子に稽古中つい同じ言葉が口をついた。この時、師匠の叱った意味が初めて分かった。やり方や答えじゃない。師は自ら答えを出すための教えを授けてくれていたんだ。子供時分には鞍馬天狗の舞台途中、動きが分からず絶句ならぬ絶型した。終了後、師である父にぶん殴られた。明らかな稽古不足。私も今、弟子の稽古を見れば失敗の中にも練習をしてきたかどうか一目で分かる。子供も大人も同じ、小手先の技術に逃げてはいけない。今、全てを分かろうとしてなくていい。所詮人間、過程の磨き込みが全て。生き様が、姿をつくる。」
 
アンコールワットで鎮魂を
 
 能の聖典「風姿花伝」に「誠の花」をとの一節がある。移ろう世間の目に映る「時分の花」でなく、老いてなお人の心を掴む、時の審判に耐えうる花だ。久保さんが目指す誠とは?
「分からないよ。互いの人生が終わる頃に分かるものじゃないか。ただ、経済より人として大切なことを重んじる。足代だけの公演決定後、十分な報酬が出る話があっても断る。先約を守る。とはいえ蓄えも必要だ。だから自分で出来ることは何でもやる、さわかみ投信でお金にも働いてもらっている。以前、奈良でカンボジア王国王女を前に舞うご縁をいただいた。内戦による自国民虐殺など悲しい歴史をもつ同国のアンコールワットでいつか鎮魂の能を舞いたい。時の将軍に寵愛と不遇を受け晩年を迎えた世阿弥の心の闇奥は知れないが、『命に終(おわり)あり、能に果(はて)あるべからず。』と残された。祈りに国境はない。一人でも多くの方々に能を知ってほしい。」
 今ある経済・文化・芸術等が、(結果的に)先人の選び残した遺産なら、能は能楽師の方々のご尽力によると共に、人々が祈りを託すために約700年も選び続けたとも言えないだろうか。豊かな社会は、為政者や企業のみならず、私たち生活者が選び、掴むものなのだ。そして、思いをカタチにする長期投資はまさにその大いなる一手だ。楽師と観客がつくる能、企業と生活者が未来をつくるさわかみファンド。いずれも原点は、私たちの暮らしの中に。
 
 
【直販部 佐藤 紘史】
 

 
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シテ方 観世流準職分
 
久保 信一朗様(写真右)
 
2歳「老松」にて初舞台。14歳 「猩々(しょうじょう)」で初シテ。道成寺・安宅他を開曲。2012年 日本・ウズベキスタン外交樹立20周年記念「シルクロードと日本を結ぶ美の交流」海外公演に参加。2013年 平成大遷宮の出雲大社にて観世流能「大社」を奉納、前シテを勤める。今年8月27日美保神社(島根県・松江)にて「羽衣」「翁」公演予定。




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