“会長書きおろし”20年間の年次レポート

1999.08.24~2000.08.23
さわかみファンド、こんなこともあったね(第1期)

さわかみファンドは、1999年8月24日に船出した。「本格的な長期投資で、市井に生きる人々の財産づくりをお手伝いしよう」という長年の夢が、ようやく実現の運びとなったのだ。

一刻も早く本物の投信を世に出したい。その想いが強く、8月23日だけの1日募集とした。それでも、487名の方々がファンド仲間となっていただき、16億2,776万円で運用開始となった。

後になって知ったのだが、1日だけの募集というのは日本に例がないという。それでも、16億円を超すファンド設定となったのだ。すごく幸先のよい船出ができた。

日本では前例のない本格派の長期保有型の投信を、それも直販主体ではじめた。ファンドを購入されたお客様には、本当に大丈夫だろうかといった不安もあろう。そう考え、毎月2回報告書をお届けすることにした。月中と月次の月2回の報告書で運用内容を全部さらけ出そう。そうすれば、ファンド仲間となったお客様も、どんな投資運用をしているのか一目瞭然で安心してもらえる。

ファンドを設定した当時、株式市場では国際優良株とIT関連や情報通信株が大人気となっていた。高く買われすぎている相場を後追いするなど、長期投資家の名折れである。成績にもつながらない。

こちらは、株式市場が見捨てていた重厚長大型の株式を拾っていく投資方針に撤した。そしたら、「澤上さんは、もう古い。情報通信関連相場についていけない」と、あちこちでいわれた。そんな批判は無視するだけだが、さわかみファンドを買っていただいたお客様や、これから買おうか検討している方々にどう影響するか、内心はおだやかでなかった。

株式市場のブームなんて、そう長くは続かない。いまに見ておれとばかり、安値に放置されていた大型株を中心にポートフォリオを構築していった。月中・月次報告書でも、「うちの長期投資の方針はこうだ、人気化している相場は追いかけない」と繰り返した。

2000年4月に入ると、株式市場の状況は一変した。情報通信やネット関連小型株への熱狂相場は崩れをみせはじめた。その横で、さわかみファンドの基準価額はプラスの世界へ浮上してきた。ようやく、本格派の長期投資の片鱗を世に示すことができると、社内で喝采の声をあげたものだ。

それ以降は、今日に至るまで、さわかみファンドの基準価額は、ずっと日経平均株価やTOPIXを上回っている。これは、さわかみファンドにとって大いなる誇りである。