Sawakami Asset Management Inc.

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2014.2_column.jpgはじめに
 
昨年8月23日の運用報告会で、さわかみファンドにおけるトレーディング部門のお話をさせて頂きました。しかし、ご来場頂けたのはファンド仲間のごく一部の皆様であること、またそれに加え、さわかみファンドのトレーディングは何をしているのかというご質問をよく受けることから、改めて今回は弊社トレーダーについてお話させて頂きます。具体的な説明ができない部分も多くありますが、トレーダーに対する大まかなイメージを持って頂ければ幸いです。
 
さわかみのトレーダー
 
さわかみ投信には2名のトレーダーが在籍しております。我々の仕事は、ファンドマネージャー(以下、FM)が思い描いた売買を執行することです。具体的なFMからの指示とは、①銘柄、②売りか買いか、③いくら以上(以下)で売買するという指図価格、④どれくらいの数量を売買するという売買数量、⑤売買を実行する期間があります。例えば、○○工業の株1000株を300円以上で2週間以内に売却してほしいといった内容の注文がFMからきます。するとトレーダーは各自の戦略に基づいて期間内に300円よりも1円でも高く、要求された数量を売却します。また、評価としては、マーケットの出来高加重平均価格であるVWAPよりも期間内でいくら上回れるかどうか要求されます。例えば、期間内の○○工業のVWAPが315円ですと、315円に1000株を掛けた31万5000円から、ブローカーに支払うコストと消費税を引いた額よりも1銭でも高く売却できているかどうかが要求されるのです。長期投資には必要ないという声も社内で上がりましたが、チリも積もれば山となるという事に加え、実際昨年の1年間の取引においてVWAP(コスト控除後)を上回った差額の合計が馬鹿にならない金額になった事からその必要性が数字で証明されました。このような評価基準の下、トレーダーは各自の戦略で結果を残さなければなりません。
 
しかし、トレーダーの仕事は売買だけではありません。現在、ファンドの純資産は約3000億円(2014年1月21日現在)を超えています。規模が大きいが故に1度の売買が大きくなり、マーケットインパクトを配慮しなければならない状況です。具体的には、1つ1つの取引量が大きいため、自らの売買で株価を動かしてしまう可能性があるので、売買に際しては細心の注意を払わなければならないという一般投資家にはないファンドならではの悩みがあります。このような事や不測の事態に備え、一昨年のPTS5%ルール規制緩和に合わせPTS(私設取引システム)とダークプール(非公開によるブローカーの電子市場)といった流動性を提供している代替市場に参加しました。また代替市場に加えアルゴリズムを使用した電子取引により、1つの注文サイズを細分化し、市場を分散して売買を行うなど、特定の株式を売却(買付)した場合に、株価を誘導する事態が起こらないような仕組みを作っています。このように、国内市場の変化への対応や、マーケットインパクトに対する配慮も我々の仕事です。
 
さわかみ投信のトレーダーのイメージを持って頂けたでしょうか。それでは、次に私のトレーディングについてお話致します。
 
私のトレーディング
 
「どのゲームにもカモがいる。4、5分経っても誰かわからなければ、自分こそがカモだ。」毎朝デスクに腰を掛けると必ず自分自身に言い聞かせるポーカーの格言です。日本ではポーカーはギャンブルであるという認識が高いようですが、ポーカーもトレーディングも不完全情報ゲームあり、私はギャンブルではないと考えます。詳細を記載することはできませんが、私のトレーディング戦略のベースは実はこのポーカー(テキサスホールデム)にあります。
 
ポーカーとトレーディングには共通点があります。それは不完全情報ゲームであるため、運と実力が共存しているということです。私が好きなテキサスホールデムは、各プレーヤーに配られた2枚の手札とフロップ(各プレーヤの共通カード)の3枚、ターン(フロップの次に配られる各プレーヤーの共通カード)とリバー(最後に配られる各プレーヤー共通のカード)の各1枚から最良の5枚で手札を作るというゲームです。相手の手札の2枚はもちろん見ることはできません。フロップが配られる前と配られた後、ターンとリバーの後にそれぞれベット(賭ける事)することが可能です(もちろん途中で降りることも可能)。リバーまでに最良の手札が揃う期待値が高く、そのゲームの参加に値する場合でも、相手が偶然自分よりも強い手札をフロップの時点ですでに揃えていると負けてしまいます。しかし、当然ですが運だけではありません。フロップ、ターン、リバーのカードは見えている事、トランプの枚数は52枚と決まっている事、相手の賭け方や賭けに対する行動のスピードといった具合に様々な情報があり、どのくらいの確率で勝てるか算出することができます。このように、見えない部分と、与えられた情報があるからこそ、短期的には運がものを言いますが、自分に課した規律を守り続けることにより長期的には実力がモノを言うのです。
 
ポーカーよりもトレーディングの方が複雑ですがおおよそ同じです。つまりは、規律にしたがって損失をいかに少なくし、自身にエッジ(優位性)がある時に大きく勝負し続けるかどうかです。そこで私は大きく分けて3つの規律を持っています。①リスクに対する合理的な態度をとる事。②プレッシャーの下での素早い決断を下す事。③過去のレコードから自身の行動が運であるか実力であるのかをデータを使い客観的に判断しフィードバックする事。
 
この3つの規律の中に更に細かな規律を設けていますが、基本的にはポーカーをプレーする時と同様、確率の考え方を基に規律を守り続けるスタイルが私のトレーディングなのです。
 
最後に
 
私は、長期投資における考え方も規律が重要になると考えます。どの時点から資産運用を始められたとしても遅くはありません。ファンド仲間の皆様が描いたイメージに合う規律を作り、大切な資産をぶれずに運用してみてはいかがでしょうか。
 

【運用調査部 トレーダー 前野 宏明】

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