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「ヒゲのウヰスキー誕生す」
川又 一英著
新潮文庫
 

スイスはジュネーブの新聞に、「国際問題研究所の日本人学生が仕事を求めています」の広告を出したら、21通の仕事オファーが届いた。初日の面接で即座にOKをもらったのが、世界でも指折りの運用会社。
 
バイトではじめた仕事が、いつの間にか本業になってしまった。いま思うに、とんでもない職場へ紛れ込んだことが、厳しくもラッキーな人生を歩むスタートとなった。
 
ジュネーブ時代の4年ちょっとは、土曜日曜もなしで1日16~17時間、それこそ朝から晩まで仕事漬けの日々だった。なにしろ、無我夢中で仕事したくなるほど強烈なあこがれを抱かされる先輩が、社内にゴロゴロいたのだから。
 
世界のトップレベルとは、こんなにもすごいものかを嫌というほど感じさせられる。トコトン挑戦してやろうと、自分でいうのも気恥ずかしいが、すさまじい修業の時代だった。
 
日本へ戻って、ふと手にしたのが本書。サントリーウヰスキーを育て上げ、ニッカウヰスキーを生んだ竹鶴政孝という日本人の、スコットランドにおける悪戦苦闘のウヰスキー修業ぶりが、あのジュネーブ時代と二重写しとなって迫ってくる。
 
まったくの白人社会に唯一のアジア人。本場物のウヰスキーや投資運用がどこまで分るものかと、冷ややかな視線を四六時中浴びる。
 
なにを言われ、どうけなされようと、先ずは学び尽くしてやる。そして、いつか必ず本場物とやらを超えてやろう。
 
そういった気骨と気概でもって生き抜いた明治の先人に、ジーンとさせられたものだ。

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