オーエスジー株式会社

　今回訪問した八名工場はタップの主力工場です。世界一の製品を作る主力工場と聞けば、「最先端の煌びやかな製造装置が並んでいる」といったイメージがあるかもしれません。しかしこれまで実際に様々な企業を訪問する中で、（一概には言えませんが）高いシェアの製品を作る工場に共通している点は、意外と生産設備が古いということでした。同工場も例にもれず、古き戦士達が活躍していました。そしてこれらの大部分を自社で設計されていることが同社の強みの一つでしょう。タップの製造工程におけるボトルネックは後工程のねじ切り（研削）にあり、内製設備によってタップへ必要な特性を持たせることを可能としていました。創業者である大沢秀雄氏の哲学に「世界に受け入れられる優れた製品を開発するには、それらの製品を作るための専用機を自前で開発しなければならない。」という言葉があります。その初期の生産設備のレプリカが展示されており、タップ産業において後発ながら力強く世界一を獲得したそのDNAが脈々と受け継がれていることを実感しました。

　工具ビジネスは顧客とのすり合わせが欠かせません。加工対象物の素材や加工形状によって最適な工具は様々であるため、最先端の知見を持つ同社のもとへは多くの産業から工具の開発依頼が来ているようです。同社はそのような顧客が気軽に宿泊などに利用できる施設として、ゲストハウスを持っておられます。そしてその隣には同社の開発陣を一堂に集めた研究開発施設があり、顧客と効率よく開発する体制を整えられていました。

　今回の企業訪問ツアーでは、ゲストハウスにてタップによるねじ穴の作成を、研究開発に携わられているエンジニアの方々の指導の下、体験させていただきました。タップの設計においては、ねじ切りの過程で発生する切子をいかに効率よく排出するかが一つの課題です。今回の体験ではタップによってアクリル板にねじ切りを実際に行うことで、タップに対する理解が深まる良い機会となりました。

　軽くて耐久性のある炭素繊維をはじめとした素材技術は進化の一途にあります。しかしながらいくら新素材が開発されようとも、精度よくかつ経済的に効率よく加工できなければ日の目を見ることはありません。例えば炭素繊維は硬いうえに繊維のほつれを残さない必要がある加工が難しい素材です。従来の工具では加工が困難と言われていましたが、ダイヤモンドコーティング技術などの進歩により航空機などの付加価値の高い産業に利用可能な加工精度や効率が実現されました。素材の進歩を工具で支える同社の成長に今後とも期待します。