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さわかみ投信のアナリスト公開勉強会でIoTを取り上げたのが2014年のこと。当時は日経新聞(電子版調べ)の取り扱いも月あたり10件程度でしたが、17年に入ってからは180件も取り上げられています。頻繁に取り上げられるようになったのは、企業がIoTに対する取り組みを構想段階から実用段階へと推し進めてきたためです。そこで今回は、さわかみファンドの注目テーマでもあり、世間からも注目度の高い「IoT」に関する3つの見方をご紹介します。

製造業のビジネスモデルを大きく変える

実のところIoT は決して新しい概念ではありません。実際にさわかみファンドが組み入れている企業の中でも、モノづくり企業のコマツ(00年から組入)や三浦工業(03年から組入)は、2000年に入る前から自社製品をネットに繋げる取り組みを始めています。そして、納入済みの自社製品の状態を遠隔地から自動で収集して解析したり、制御したりすることで革新的な運用・保守サービスを生み出していきました。先の2社は、メーカーでありながら、IoTを活用して顧客に新しい付加価値を提供する超優良なサービス会社とも言えるのです。
センサーやコンピューターをより安価で手に入れることができるようになった近年、世界中の企業はコマツや三浦工業の様な成功モデルを手本にしながらIoTへの取り組みを加速させ、付加価値を『モノからサービス』へとビジネスモデルを転換しようとしています。これからは品質面で定評のある企業であっても、「いかに良いサービスを提供できるか」という点が重要視されていくようになるでしょう。

新時代の産業インフラ基盤が登場する

さわかみファンドは企業活動を支える産業基盤にも長らく注目してきました。あらゆるモノをネットに繋げることが世界中の企業にとって当たり前となる時代が到来するのであれば、IoTを実現するための基盤は企業にとって無くてはならない存在となっていくはずです。IoTへの取組みが加速していった背景にクラウド技術の目覚ましい進歩があったことを考えると、クラウドサービスを提供するベンダーはもちろんのこと、例えばセンサーや半導体、ストレージ、ネットワーク機器といったクラウド環境を構築するために必要な要素にも目が離せなくなります。
加えて注目すべきは、いま世界のモノづくり企業が自社のノウハウを活用しながらIoTプラットフォームの開発に取り組んでいるという点です。IoTプラットフォームがサービスとして提供されれば、中小企業であっても大企業と同等レベルのIoT環境を手に入れることができるようになります。既に米GEが「Predix」、独シーメンスが「Sinalytics」をサービスとして提供しており、日本でも日立製作所「Lumada」やNEC、富士通が参入するなど熾烈な争いが繰り広げられています。日立製作所は既にこの分野で9,000億円を売り上げ、19年3月期には1兆円を上回る売上規模にしたいと公表しています。各社の動向に目を向けながら、モノがネットを通じて繋がる先の環境基盤にも注目していく必要がでてきています。

情報セキュリティの重要性が益々高まる

今年5月に「WannaCry」と称するウイルスが猛威を振るい、少なとも150ヶ国において企業、工場、病院、鉄道、大学などで深刻な被害が発生しました。過去最大規模と言われる今回のサイバー攻撃は、『ネット経由で自己繁殖しながら拡散していく』という特徴を持っており、Windowsの脆弱性が残った状態でネットに繋がれていた機器がその被害を受けています。万全な対策をしていれば感染を防げた今回の攻撃は、セキュリティ対策を施していない幾つもの機器がネットに繋がってしまっている実態を浮き彫りにしました。そして、その影響は時に病院や鉄道といった社会インフラにまで広がっていく可能性があることも同時に示唆しています。より様々な機器がネットに繋がることによってウイルスの侵入経路が格段に増えていくIoT時代においては、社会インフラを守るという観点においても、情報セキュリティ企業が担う役割は益々高まっていくはずです。

今回は「IoT」に関する3つの見方を紹介しました。顧客に新しい価値を提供することができるIoTへの取り組みは今後も加速的に進んでいくことになるでしょう。同時に先の見方で示した通り、企業の取り巻く事業環境も大きく変わっていくことになりそうです。それにより、これまでとは競争のルールが変わり、違った形で淘汰が進んでいくと思われます。そういった視点から調査をすることで、時代と共に変わりゆく事業環境の変化に対応し長期的に成長する企業を発掘していきたいと思います。

運用調査部長
岡田 知之

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