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「振り子の金融史観
金融史と資産運用」平山 賢一 著
シグマベイスキャピタル

このコラムで経済書が紹介されるのは、きわめて珍しい。この仕事をしていると、経済の専門書や経済原論・理論といったものを紐とく機会は多い。だからといって、長期投資家としては、そうありがたがる気にもなれない。
とりわけ最近は、経済学なるものが数式やデータ分析で固められて、もはや科学の領域に入ってきた感さえある。その精緻さには、とてもついていけそうにない。
悔しまぎれではないが、「そう難しく考えなさんな」と言いたい。というか、経済活動をなんでもかんでも数字に置き換えて、数字を操ることで経済を活性化できるとする政策当局の考え方には違和感を覚える。異次元の金融緩和とかマイナス金利とかも、マネタリズムを信じて疑わない人達は別として、ごく一般の経済感覚からすると「落ちつかない」の一言。

人類の歴史をたどるまでもなく、経済の大原則は需要と供給のバランスである。そこを逸脱して、貨幣の量でもって経済を動かそうとする強引さと傲慢さなど、長く続くはずもない。いずれ必ず、その反動に直面し、経済社会は大混乱に陥ろう。

そろそろ本書で、金融の歴史を振り返っておくタイミングだろう。すこし長い時間軸でみると、上がったものは下がり、下がったものは上がるのが世の常。また、行き過ぎには必ず戻ろうとする力学が発生する。いつも早めに行動するのが長期投資である。

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