『男子の本懐』

男子の本懐
城山 三郎 著
新潮社

日本の財政は、先進国でも最悪を独走している。果して、いつまで綱渡り財政運営を続けられるのか、もはや神のみぞ知るところ。
世界最速の高齢化で社会保障費の肥大化は避けられない。といって、このまま事態の悪化を放置するわけにはいかない。抜本的な改革を断行しないと、社会保障制度そのものがパンクする。
できるだけ早い段階で大ナタを振るう必要がある。それをやるのは政治家の仕事。一時の困難を国民に強いても、将来の世代の安寧のためにも蛮勇をふるってもらいたいもの。
ライオン宰相とも呼ばれた浜口雄幸は、剛直で正直な政治家として有名。一貫して、協調外交と軍縮による軍事予算削減、そして緊縮財政による景気安定化を政策の柱とした。ロンドン海軍軍縮会議の条約批准は、海軍の不評を招いたが、歴史を振り返ってみれば先見力ある政治決断だった。
一方、金本位制を復活させようとして1930年1月から金解禁を実施したが、これは失政となった。折からの不況に、1929年11月のアメリカ大恐慌が重なって景気を大きく減速させた。結果としては、ライオン宰相の歴史的な評価は二分される。
だが、いまの日本においてこそ浜口雄幸のような剛直な政治家が出てきてほしいところ。軍部の暴走によって太平洋戦争に突入していったが、高齢者層はじめ既得権益層の圧力による財政悪化も、いつか来た道。このまま突っ走ってしまうと、社会は収拾のつかない混乱に陥ろう。