再生細胞薬の大きな可能性

 例えば自動車業界のようなところに、30年も経ってから新規参入するのは無謀だと思いますが、バイオテックの業界はセグメントが細かく切られており、新しい技術がどんどん出てくる業界です。再生医療、細胞治療についてはまだまだ小さかったので、そこに日本の優れた技術とアメリカのインフラを組み合わせれば勝てるという意識はありました。

日本の種を持ってきてアメリカのいい土壌で育てれば、けっこう面白いものができるのではないかということですね。

 当時の日本も再生医療の技術について決して米国に引けを取っておらず、世界の最先端を行っており優れた技術がありました。日本の技術をアメリカに持っていくと、研究者やバイオテックで働く人たちが「これは面白い」と言ってくれました。世界にも類を見ないこの技術を使って事業をしたいと。この点に関しては、それが外国人でも日本人でも変わりません。技術がおもしろかったらやってみようと思う土地柄なのです。

そして、SB623が形になりそうなときに、改めて日本で会社を設立して上場されるわけですが、やはり2014年に再生医療新法ができて、薬事法が改正されたからですか(図3参照)。

 会社を設立した時に、どんなビジネスをやるかということもですが、どこでやるかということも非常に考えました。当時は日本でやりたくてもできないことを目指していたので、やむを得ずアメリカで起業しました。2014年の法改正の報せを聞いて、これはすごいことが起きたと思いましたね。もともとは日本でやりたかったのだから、これは日本で開発しないなんてことはありえないということですぐに動きました。日本をグローバル本社、アメリカを子会社とし、日本で早く開発、承認を取り、それからアメリカやヨーロッパへ展開していくという方針転換をしました。

この改正で条件付き承認が早くなったことが、再生医療を変えると聞きましたが、この衝撃というのは相当大きなものだったのでしょうか。

 すごく大きいですよ。50年とか100年に1回の制度改正だと思います。今までは臨床試験で10年かかっていたところが2~3年になります。そうすると投資回収が早くなります。開発が早くでき、投資回収も早くできるので投資家の皆さんからの評価も高まります。お金がたくさん集まると開発がもっと加速できるというように、好循環を生め、これをやっていない会社と比べて、この業界で勝っていける。日本でやらない再生医療の会社というのは考えられないですね。