乱高下する株式市場に どう向き合うか

相場の変調

ここ数年、世界の株式市場は「適温相場」と言われる緩やかな上昇を続けてきました。ところが、今年に入り乱高下し始めました。その要因として米中摩擦、米金利の上昇、更には消費増税などが挙げられています。加えて、ここに来ての急落の根底にあるのは「高値恐怖症」だと思われます。リーマンショック以降、株価は大きな調整局面もなく10年近く右肩上がりです。多くの投資家が、そろそろ暴落するのではないか?ちょっとした懸念材料でも不安にかられるのもやむえません。その一方で、株価がこのまま伸び続けるかもしれない、との見方もあります。トランプ氏と習近平氏が折り合い、FRBが利上げのペースを落とせば、すぐに株価は上昇軌道に戻るかもしれません。

経済は正直

こうした方向性が見えず、上下に大きく動く現在の相場環境では「買おうか、売ろうか」悩ましくなるのは当然です。だからこそ、無理のない範囲で積み立て投資を継続すべきだと考えます。経済は、一年後のことはわからなくても、長い時間軸で見ると起こるべきことが起きています。ただし徐々に変化する経済に対して、株価は素直には反応してくれません。それどころか、突如劇的に動いたり、経済とは逆方向に大きく振れたりすることがあります。
短期で結果を求められる機関投資家とは違い、個人投資家は長期目線でゆったり投資できるのが強みです。値動きが激しくなると、投資家は嵐の海に浮かぶ小舟のように翻弄されます。とはいえ、ゆっくりと落ち着いてその荒波を見極めれば、その先にある大きな経済の潮流が見えてきます。世界全体では人口は増えていきますし、新興国の生活水準も向上して地球規模でのインフラ整備も進んでいます。更に、人工知能や自動運転の開発も楽しみです。

主役は企業

20年、30年といった長期の積み立て投資では遅かれ早かれ、上げ相場も下げ相場も両方経験します。ほぼ確実に儲かりそうな時もあれば、誰もが損をしている時もあるのです。けれども資産形成で大切なのは、そうした相場の価格変動を乗り越え投資を継続することではないでしょうか。将来に向けて企業価値が高まると想定できる企業の株式であれば、どんな相場環境で買ってもいいからです。
そして、株式市場で評価される企業の価値とは、私たち生活者のニーズにどれだけ誠実に応えるかにほかなりません。だから生活に必要とされる企業の価値は、政治の混乱や震災、金融危機で一時的には下落してもいずれその本質的価値に見合った価格に落ち着きます。そこだけに目を付けて投資を続けていれば、知らず知らずの間に資産は膨らんでいるはずです。
「賢いとは、多くのことを知っている人ではなく大事なことを知っている人」 古代ギリシャの哲学者アイスキュロスの言葉です。そして、投資にもぴったり当てはまる言葉です。「経済の色々なことを知らないから投資が怖い」「仕事一筋で投資を勉強していないから始められない」とおっしゃる方に数多くお会いしてきました。ですが、難しい金融知識や日々変化する世界経済のニュースなどは投資の成功に必修ではありません。本屋にいっぱい並んでいる投資本の多くは短期で売買タイミングを狙うには参考になります。それよりも、生活者の願いをかなえ利益成長する企業の株価は上昇する。この原理原則を守り、時間を味方につければ乱高下する相場環境も恐れるに足りません。

雲外に蒼天あり

先月、弊社の運用調査部は各社の決算説明会を精力的にまわってきました。そこで、目先の利益より社会との共存を目指す長期ストーリーを語る経営者が徐々に増えている状況を見ました。彼らの話は、新聞にのるほどのインパクトや市場が飛びつくようなサプライズはありません。けれど会社の歴史を踏まえ、自分たちが何のためにこの事業をやっているのか、これからどのようになりたいのか、のメッセージは強く伝わってきました。顧客との信頼関係を深める、次を担う人材を育てる、より良い製品を提供するために技術を磨く。企業トップが論じる、そういう見えざる資産を育てる施策は地味です。しかし愚直に積み重ねているうちに、顧客と社会から支持される企業に昇華していくのです。
投資家が株価変動に右往左往している間も、経営者や社員は前向きな企業活動を続けています。私たちアナリストもこの荒天相場に惑わされることなく、雲が晴れた後高く羽ばたく企業を精査していきます。

【アナリスト 村上 康弘】