2019年のさわかみ投信/長期投資のあるべき姿

2019年のさわかみ投信

代表取締役社長
澤上 龍

 

 

皆さまのさわかみファンドは、おかげ様でもうすぐ20周年を迎えようとしています。20年前、つまり1999年当時は資産運用がまだ一般的なものではなく、投資といえばギャンブルだと認識される時代でした。いまなお投資はギャンブルとの考え方は払拭しきれておりませんが、一方で資産運用はすでに当たり前の時代となりました。増えない給与、上がり続ける社会保険料、不安が残る年金。自分も精一杯働くがお金にも働いてもらおうと、国を挙げて資産運用を後押しする時代になったのです。20年という時を経て世の中は随分と変わりました。

さわかみファンド20周年に向けて

私たちは、唯一の商品であるさわかみファンドを丁寧に育てていくことが何より最優先の仕事だと考えております。当然これまでもそうしてまいりましたし、そして20周年を迎える本年も、更には10年後も私たちは同じことを述べているでしょう。

さわかみファンドを育てる…セミナー等でも申し上げておりますが、私たちはお金持ちを増やすことを目標としてはおりません。経済的不安がなくなり、自立して堂々と生きるカッコイイ大人が日本中に溢れていることこそがゴールなのです。一人ひとりが自らの美意識に従って世の中づくりに参加する未来、自分だけでなく周りの人や社会のあり方、地球そのものの未来に対し責任をもって行動する大人たち、そしてそのような大人に憧れ、いずれ自分もと頑張る子どもたち。そうした循環的な社会を形成するにあたり、ネックとなっている将来不安をさわかみファンドが少しでも解消できればと考えているのです。

さわかみファンドを育てるということは、財産形成のお手伝いをさせていただきながらも、そのプロセスにおける生き様や覚悟を提示していくことにほかなりません。弊社創業者の澤上篤人の表現である“銭ゲバ”ではいけないのです。したがって私たちはただ運用成績を出すだけでなく、出し方そのものにもこだわり、本当の意味で長期投資を文化にしていかなければならないという気概を背負っています。

長期投資は未来づくりへ参加する行為です。誰しも心貧しい社会で生きたいとは思わないはずです。だからこそ長期投資を通じて社会を豊かにしていかなければならない。その結果が公のリターンです。そして投資家の元へは逃げずに明るい未来をつくったお礼にと投資リターンが戻ってくる。長期投資は企業を通じて社会を成長させる力があります。社会に求められるかたちで企業の業績や株価が上がることが本来の投資リターンです。時間はかかりますが、それが私たちの考える長期投資です。そしてそれは単に理念の追求だけではありません。社会に必要な企業を応援し、その利益成長に乗るという極めて合理的な手法です。したがって丁寧に長期投資を進めていれば、結果は必ず後からついてきます。

しかし私たちがいくら長期投資を掲げても実行が伴わないと意味がありません。その実行の方法こそがさわかみファンドを育てることであり、そしてその道のりを皆さまと歩ませていただいているからこそ、私たちの今と20年という歴史があるのです。

20周年を迎えるにあたり、皆さまには様々な恩返しができればと画策しております。繰り返しになりますが、最大の恩返しはさわかみファンドを育てることに尽きます。しかしながら20年という節目に、さわかみ投信らしい施策をもって私たちより皆さまに感謝の意を申し上げたく考えております。直接的に皆さまにお返しできること、そして社会にお返しするものの両方を叶えられればと鋭意検討中です。また今一度、社内のレベルを引き上げることも必要です。資産運用を信じて託せるだけの実力、人間性を伴った成長が求められます。私たちは未来に対して何を成すのか、成せるだけの実力があるのかと自問自答を続け、楽しみながら成長していきます。

2018年は長期投資を広く世の中に伝える“挑戦”の年でしたが、2019年は“感謝”の一年として、私たちはファンド仲間の皆さまと共に未来に向かっていきます。私たちが皆さまのことを仲間と呼ぶ理由は、社会を一緒に変えましょうという想いからです。さわかみファンドを育て、皆さまに育てていただき、近い未来に笑顔でお会いできることを心より願っております。


長期投資のあるべき姿

取締役最高投資責任者 草刈 貴弘

 

 

さわかみファンドの最高投資責任者となり、早6年が過ぎました。その過程の中で運用方針を私なりに磨き上げ、昨年の運用報告会で示した『応援したい企業、CSV、地域経済活性化』にたどり着き、そのような中小型の企業を中心にコミットする投資を進めていきたいと考えています。なぜこのような考え方にたどり着いたのかというと、これまで多くの企業を調査し対話をしてきた中で、私の中に様々な葛藤や自己矛盾に陥り自問自答し続けた結果、この手法であれば自分たちの資産づくりはもちろん、投資先企業やそこで働かれている従業員の方やそれらが存在する地域社会の活性化を同時に成り立たせることができ、日本に活気を取り戻せる可能性を見出したからです。

ではまず何に葛藤や自己矛盾を感じたのかをお話ししたいと思います。私たちのセミナーで“生活に必要な企業”というキーワードを何度も聴いたことがあると思います。丁寧に企業調査を行い、そのような企業の株価が安くなった時に買うことで資産づくりができると。この考え方は非常にシンプルで確かにその通りなのですが、生活に必要な企業だからと言って本当に投資して上手くいくかどうかは分かりません。何故なら結果的に株価が戻らなければ投資した意味が無いからです。この考え方の前提には、例え株価が下がる事象が起こったとしても、生活に必要であれば需要が戻り業績が回復して結果株価が戻る可能性が高いという循環が無ければなりません。たとえ必要不可欠であっても海運業のように自らで価格を決定できず、ゲーム理論的に自ら積極的に負の遺産を取り崩すことができず業界全体で苦境が長引くこともあります。(黒鉛業界も苦境が続きましたが、さすがに経済合理性のない価格競争は続かずM&Aによって玉突き人事的に寡占状態となり、価格は上昇し業界が回復しました。)誰の生活に必要なのかについても曖昧です。個人的に必要なのか、社会として必要だと考えているかによって企業の見方は大きく分かれるでしょう。例えばお酒などの嗜好品や軍事に関わる技術を持つ企業です。こういったことから正確に伝わっていないのではないか、言葉が独り歩きして自らがそれに縛られているのではないかとも考えました。

また、この6年間に2,600億円を超えるファンドの解約に対応しつつ、ファンドのパフォーマンス向上といい世の中づくりのために集中投資を実行し3割以上の企業を売却し銘柄を絞り込みました。生活に必要な企業を応援したいと言っているにもかかわらず売却しなければならない状況、良い企業であるとは思うものの企業価値の向上は見込めずパフォーマンスに優先順位を企業に付けなければならない状況、企業との対話の中で埋まらなかった溝、企業価値とはいうものの結局は株価でしかファンド仲間にお返しできない実態。いつの間にか私たちが選ぶ企業が素晴らしくて世の中に役立つ企業であるかの様な、まるで裁定者のごとき振る舞いになっていたのではないかと恐ろしくなったのです。

だから考え方を根本的に改め、”何をすべきか”ではなく“何をしたいか”に切り替え考え直した答えが”応援したい企業かどうか”というものでした。そもそも世の中には多くの企業があり、それらは必要とされているから存続している。だから企業を良し悪しや必要かどうかで見るのではなく、苦しい時すなわち業績がなかなか向上しない時期や需要の回復が難しい時などでも信じて投資できるか、応援できるかどうかという点を大切にしたいと思ったのです。企業を取り巻く環境は刻々と変わっていきます。規制が変わることを見越してビジネスを準備していたとしても、その規制自体が先送りされたりすることで投資資金が数年無駄になってしまったり、確実に技術的に効果が高いとわかっている工法にも関わらず採用されずに違うものが採用されてしまうなど思った通りには行きません。でもそれらの企業のビジネスは今後の世界を考えるうえで必要になる可能性は高く、その本業が伸びることで社会課題にも対応できる可能性があると知ったら応援しない理由がありません。企業は多くの場合すべてを自社で賄うことはせず、部品や協力工場に加工を依頼したりしています。それらがその地元にあればその企業の発展が地元にも還元されるのです。ある企業が世界の社会課題を解決しつつビジネスを拡大させ、それに周りの協力工場も共に成長することは十分に成り立ちます。先頭に立つ企業に器量が求められますが、それができる企業であるからこそ厳しい時に応援できるわけです。

このような考え方を一般的にはESG投資と捉えられてしまうでしょうがそうではありません。あくまでも私たちの意思が大切で、そこに示された曖昧な基準ではないからです。2018年に、全米最大の年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)の役員選挙においてESG投資を主導してきた人物が退任し、その反対派の人物が理事に就任することになったことが話題となりました。ESGでは満足な結果が得られなかったことが要因とされていますが、大切なのは投資する側の意思です。排ガス規制の厳しいカリフォルニアの州職員の年金が環境に配慮しない方向に進むという矛盾。考えさせられます。

これからも米中の貿易問題や英国のEU離脱など、金融市場には話題が事欠きませんが本年も愚直に信じる道を突き進んでいく所存です。