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タイガー・ウッズが戻ってきた。奈落の底から這い上がり、再び栄光の頂点へと返り咲いたのだ。その偉業に世間は騒ぎ、そして祝福の声を添えた。ウッズの過去は決して褒められるものではない。自ら招いたとはいえ、禊は尋常ならざる苦難だったろう。しかし彼は屈せず勝利を手にした。そして世間は彼に拍手をした。実力主義のスポーツ業界故の復活劇かもしれないが、それだけで拍手は生まれない。真に復活したいと願う彼の努力、そして現実にした力に世間は心からの拍手を送ったのだと思う。

昨今、世間を騒がせた某自動車会社会長の許しがたい事件があった。その事件とは比較できないまでも、世間を騒がせる著名人などのスキャンダルがなくなることはない。ここで考えてみたい。それらスキャンダルに対し執拗に叩く世間の姿は正しいのか。インターネット(SNS)を通じた数多ある匿名批判に至っては、もはや異常である。問題を引き起こした張本人は謹んで反省すべきだが、しかし我々に彼らの未来を奪う権利などない。復活への信認は容易ならざるも、能力ある人物が心を入れ替え努力するならば、彼らを応援しなくて未来に新たな価値を生めるのだろうか。その中にはウッズのような称賛もあれば、不死鳥の如く甦り世界を牽引する人物、企業だっているはずだ。

振り返ると平成は、国民にとって辛抱の30年だったように思う。力強い経済成長を果たした昭和から、そのツケを払うかたちで始まったのが平成だ。世界的な金融危機にも巻き込まれ、また幾度の天災を耐えることとなった。戦争のない30年とはその通りだが、他方で目覚ましい成長もなく、世界から置いていかれる結果となったのが平成時代だ。

長期デフレが国民にもたらしたものは、目先の利得を追う利己の精神と安価に流れる貧しい心かもしれない。安倍政権がいかに賃上げを声高に言っても、それ以上に社会保険料が上がれば購買力は増えない。購買力が増えなければ国は富まない。世界と比較しても、日本国民の値段に対する許容度は極めて低いように感じる。一人当たりの購買力のベースは高いものの、例えばサービスには値を付けず、また異様なまでにお得感を優先する。粗品(ポイントなど)に対する情熱も高い。事情はともあれ、平成は日本国民をケチにしたと言えよう。資産を持つ日本国民がサービスを是とし僅かでも対価を払えば、つまりケチでなくなれば、長期的には経済にプラスが生まれるはずだ。もっと他人に寛容になればイノベーションも起こるはずだ。新元号となった今、モタモタした平成とは決別しなければならない。国民自身が前向きになれば、日本は更に良くなるはずだ。

春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように一人ひとりが明日への希望と共にそれぞれの花を大きく咲かせることができる日本になろう、というのが令和の趣旨である。それぞれの大輪を咲かすため、努力には拍手を、そして喜びには少しの対価を払おう。弊社会長の座右の銘が「お先にごめんね」であるならば、私は、時間はかかっても皆と共に豊かな未来を築こうと令和に誓う。春が来たのだ。

2019.4.24記【代表取締役社長 澤上 龍】

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