緑の黄金アボカド~ミレニアル世代を添えて~

昨今ニュースアプリをひらくと、激化する米中貿易戦争、関税引き上げ検討、Huawei制裁等々の見出しで溢れています。その傍らで「人工肉の米ビヨンド・ミートが上場 初日株価は2倍以上に」という景気の良い話が目に付きます。ビヨンド・ミートは先日米国にて新規上場された企業であり、植物性由来の代替肉を製造しています。現在米国の一部地域では植物性たんぱく質で作られたパティを使用したハンバーガーが流行しており、同社の人工肉が多く使用されているようです。現在の株式市場を賑わす健康食品の象徴とも言えますが、一足先に市場でテーマになっていたのが、今回のタイトルにもある“アボカド”です。先日のBloombergニュースでも、「『アボカドETF』投資家が望んでも市場投入には時間必要」という見出しになっています。

緑の黄金アボカド

ファンド仲間の皆さまは普段からアボカドを食されますか? 筆者は1日1食生活実践中に大変お世話になりました。アボカドは様々な栄養を含有しており、ギネスブックにて世界一栄養価の高い果物として認定されるほどです。
そのアボカドが市場で注目を浴びる理由とはなんでしょうか? それは需要の増加とともに商品単価が上昇しているからです。米国での消費量は長きにわたって増加しています。1998年から2017年まで20年間の年間消費量は5倍、1人当たり消費量は6倍近くになりました。これはひとえにヒスパニック系人種の増加とミレニアル世代の台頭であると言われています。日本における輸入数量も過去10年で3倍になっています。サラダの具材として定着し、ファーストフードのメニューとして加えられることが増えてきたことも実感として感じられるかと思います。
商品価格は基本的に需要と供給で決まります。需要はこの数十年間で大きく増加してきましたが、供給面はどうでしょうか? アボカドの最大の生産地はメキシコです。1年中栽培可能な熱帯気候と肥沃な大地によって、世界のアボカド生産量の約32%を占めます(出所:世界の主要果実の生産概況2017年版(公益財団法人 中央果実協会))。アボカドはメキシコをはじめとする中南米で主に生産されていますが、これら地域にとっては雇用の重要な創出源でもあります。そのため歴史的に政治的な問題の影響を強く受け、とくに最大消費国である米国との関係に大いに左右されてきました。例えば最大生産国メキシコにおいても、米国に輸出できるのは政治的に認められたミチョアカン州に限られます。隣のハリスコ州も輸入候補に挙がりましたが、米国製品の輸入をメキシコが受け入れなかったために頓挫しています。これは目下話題の貿易問題にもつながります。
またそのミチョアカン州では環境悪化が問題になっているようです。森林破壊が年率2.5%で進み、集約的なプランテーション栽培がもたらす農薬による大気汚染、海抜2,600mがもたらす下流の水質汚濁などです。最近では環境問題に対する意識の高まりにより、森林破壊の原因を作っている何百人もの人が逮捕されるなど、無作為に生産を増やす生産者は生き残れない状況になっているとも言えます。
このような需要と供給のギャップもあり、アボカドの価格は上昇を続けています。アメリカ合衆国農務省の統計によると、米国における生産者価格(カリフォルニア産)は過去30年間で8.4倍になっています。波はありながらも年平均+7.4%の上昇であり、リターンを求める投資家にとっては垂涎の的になり得ます。

ミレニアル世代の健康意識

アボカドや植物性人工肉といった食品が流行る背景には何があるでしょうか? 味でしょうか? それとも物珍しさでしょうか? 本質的には消費者における健康意識の高まりがあるからだと思います。
前述の通りアボカドはミレニアル世代におけるブームとなっているようですが、同世代の健康意識の高さはいくつかの統計結果に表れています。例えば、米国ではバータイプの栄養補助食品がスナック市場で最大の成長カテゴリーであり、とくにミレニアル世代の消費頻度が高いと報告されています。また40歳以下の年代における1人あたりの野菜消費量は対10年前比で50%も増加しているようです。
しかし健康意識の高まりは今に始まったことではありません。ミレニアル世代の親世代であるベビーブーマーにおいても健康意識は高かったようです。『ベビーブーマー アメリカを変える力』(長坂寿久著)のなかで、「ベビーブーマーたちは、この国に健康産業を作り上げた」と綴られており、ベビーブーマーからその子世代のミレニアル世代へと脈々と受け継がれているように思います。いつの時代も健康は重要な資本であり、その資本を形成する食事に対するこだわりは世代を超えても永遠に尽きることの無いテーマでしょう。

最後に

地政学的リスクなどの外部要因によって株式市場が大きく揺れるときこそ、需要者が真に何を欲するかに立ち戻りたいものです。今回はアボカドという商品について取り上げましたが、需要者の期待に応え続ける企業は外部要因の荒波を乗り越えいずれ大きく成長していくことでしょう。ちなみに米国にある世界最大のアボカド生産会社の業績は過去10年で右肩上がりに伸びています。今回お伝えした内容は、以前に弊社の金曜勉強会のテーマとして取り上げたものの一部です。このような身近な話題もありますので、ご興味のある方は是非足をお運びいただければと思います。運用調査部員一同お待ちしております。

【シニアアナリスト 坂本 琢磨】