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男の肖像
塩野 七生 著
文藝春秋

最近は、ひんぱんにポピュリズム政治の台頭とか、民主政治の曲がり角とかが指摘される。
それで、久しぶりに「男の肖像」を読み直してみた。昔から塩野さんの作品が好きで、かなり前に読んでいたもの。「たしか、政治指導者の視点で書いていたな」と思い出したからだ。
その中でも、ペリクレス、アレクサンダー大王、ユリウス・カエサル、北条時宗、織田信長、ナポレオン、コシモ・デ・メディチ、チャーチルの記述が、とりわけ興味を引く。
読み直しているうちに、つくづく思った。そろそろ歴史に名を残すような強烈な指導者が登場してくれて、現在の小粒政治を一新してほしいものだと。
一方、経済の面でいうと株主至上主義が、行き尽くところまできた感が強い。株主利益の最大化と株価上昇を迫る圧力が、企業経営をどんどん短期視点化させている。
そこへ短期の利益を狙った投資ファンドが企業を商品のように売買したり、事業部門を切り刻んで売却益を稼ごうと暴れまくっている。後は野となれ山となれの無責任さで。
そういった行き過ぎの反省が、ESG(環境社会企業統治)とかの動きとなってきているわけだ。
その時々の政治や経済の歪みや暴走に眼もくれず、われわれ長期投資家は、人々の生活とそれを支える企業活動、つまり経済の本質部分のみに視点を置き、淡々と行動していく。世の中がどうなっても、経済の本質的な部分はなにも変わらず続いていくのだから。

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