人工知能(AI) 技術の発達で 私は職を失うのか

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はじめに
 人工知能(AI)という言葉はメディアを通じて見ない日はないほど注目されています。このAIの発達によってトレーダーという職業がなくなる日は近いといった文言も目にします。本稿では実際にトレーディングを行っている私の視点からこの表題についてお話します。
人工知能とは
 人工知能に人間のような振る舞いをする機械(鉄腕アトムやドラえもん)というイメージを持つ方も多いのではないのでしょうか。人工知能学会のホームページによると、研究には、①人間の知能そのものをもつ機械を作ろうとする立場②人間が知能を使ってすることを機械にさせようとする立場、という2つの立場があります。そして研究の殆どは②の立場だということです。言葉よりもイメージの方が理解しやすいと思いますので具体的に見ていきます。①のイメージは人間の感情を持ち優しい心の持ち主である猫型ロボットのドラえもんや、読み書きは苦手ですが愛くるしい「キテレツ大百科」のコロ助といった感じですが、我々が生存している間の実現は厳しそうです。②のイメージは2016年3月中旬に行われた囲碁における人間対人工知能で使用されたGoogle傘下の会社が開発した人工知能「AlphaGO(アルファ碁)」。人工知能自らが考えて対戦しているイメージを持つ方もいるかと思いますが、AlphaGOのソフトウェアには囲碁のルール自体は組み込まれていません。
 ただ、ルールや盤のサイズは後から変更されないので、繰り返し同じことを起こすことができます。よっておびただしい回数を処理すれば相当のケースを網羅できます。つまり、膨大なデータから類似性や規則性を見つけ出す学習と、決まったルールを当てはめ起こり得る状況を見つける推論がされているということです。他にも様々な分野がありますが本稿ではこれくらいにしておきます。
淘汰されるトレーダー?!
 さわかみファンドは現状(2017年3月1日現在)日本株の現物のみのポートフォリオです。無駄な自信ですが、人工知能の発達によってトレーダーの中で真先に淘汰されそうな自覚があります。それはさておき、トレーダーの業務がどれほど人工知能に置き換わる可能性があるのかを見ていきます。まず、トレーディングに関わる人工知能は上記の②の分野で過去のデータを基にします。これは想像に難くなくチャート分析など昔から過去のパターンを参考に判断するテクニカル分析があるからです。また、膨大なデータがお金を払えば手に入る時代なので、データマイニングによって過去の板データから類似性や規則性を学習とルールに当てはめ起こり得る状況を見つける推論ができます。株の売買もアルゴリズムを選択することで自動化することができます。つまり、今まで画面にしがみつき売買しているルーチンワークだけのトレーダーの分析、判断、売買は人工知能に置き換わる可能性があります。
 ただ、トレーダーが全て必要ないかというとそうではありません。一見万能に見える人工知能ですが、完全情報ゲームの囲碁とは異なり不完全情報ゲーム(ゲームではないですが)の株式市場では時に人間に優位性があります。不完全情報ゲームの事例として、米カーネギーメロン大学が作ったAIがポーカーにおいて苦戦を強いられました。それは掛け金を上げていく人間への対応でした。また手の中にあるカードがなぜゲームに影響を与えるかを理解できない点も人間にとっての優位性となりました。
 このことから、思考の裏をかくといった行動を時にとるトレーダーの相場観から生まれる投資行動は上記のポーカーにおけるAIの苦戦同様に、現状人工知能に置き換わることはできないようです。ひとまずどのような場面で人工知能が有効で、その仕組みや使い方を理解し使いこなすことで私も職を失わずに済む可能性の一部が見えてきました。
最後に
 トレーディングに限らず様々な職業において、人工知能によって職を失うといった衝撃的なタイトルの文面が昨今見られます。今まで過度に時間を要した人の作業が、大量のデータを高速に飽きもせず行う人工知能に置き換わることは間違いないと考えます。しかし、人工知能の技術の強みと弱みを理解し道具として使いこなすことで、共存可能であることも間違いなさそうです。ただ、昨年の本誌10月号にプログラミング教育の必要性でも記載しましたが、今後の社会を生き抜くためにはやはりITの知識は必要不可欠(部門によって必要になる知識は異なりますが)になる日も近く、極論ではありますが使いこなせない場合は職を失う日がくるかもしれません。
※板:コンピュータ上に表示される銘柄値段ごとの売買の注文状況を示した情報
【運用調査部 前野 宏明】