World Report

さわかみファンドの運用方針と 外国企業への投資について

取締役最高投資責任者  草刈 貴弘

 

 『私たちの生活を支えてくれている企業やこれから必要とされるであろう企業に、応援する気持ちで長期にわたって投資する』
 さわかみファンドは多くの方にご支持いただき、18年目を迎えることができました。これは設定来変わらぬ運用方針を貫いてきたからと考えています。私たち先進国の生活は企業活動がなければ成り立ちませんし、もはやその広がりは多くの新興国でも同様です。100年に一度の経済危機が起こっても、私たちの生活は止まりません。企業が製品やサービスを提供してくれなければお金があろうがなかろうが困窮してしまいます。だからこそ厳しい時や市場が暴落した時に応援する気持ちで投資することこそが大切なのだと思っています。
 さて、一般生活者の財産づくりをお手伝いするために生まれたファンドですから、当然ながら運用成績の向上はとても重要です。そのためには優れた企業に割安で投資すること、これからの企業を将来価値と比較して割安に投資することが大切です。ここでポイントになるのは、国籍ではなくあくまで企業であるということです。

 もちろん、日本人として日本の企業を応援する気持ちがあります。ですから日本企業が割安であり、可能性があると考えるなら当然投資をします。一方で、海外の企業でも私たちの生活に必要不可欠だが割安であったり、将来の可能性を感じたりする企業を発見したのであれば、成績の向上のためにも投資をしない理由はないはずです。また、現在では日本企業もグローバル化が進み、ビジネスのほとんどを海外で行っている企業も多くあるので、国籍で判断することが正しいわけではありません。

 そもそもさわかみファンドは海外株式、国内債、外国債、デリバティブなどあらゆる金融商品に投資できる設計となっています。これまでと同様に、基本的には国内株式を中心として運用を進めていきますが、国内・海外という枠ではなく一企業として調査し長期投資を進めていきたいと考えています。
 今後も運用方針は全く変えずに長期投資の航海を進め、ファンド仲間の皆様の経済的自立を達成すべく精進してまいります。

 

 

201612_worldreport01.jpg201604_column1.jpg

さわかみ投信 運用調査部

米国訪問インタビュー

 

2016年の運用報告にて草刈が外株の組入れを示唆してから勉強会などで多くのお客様からご質問をいただいております。今回は草刈と岡田に10月の米国出張についてインタビューしました。

 

 

今回はどのような目的で訪米したのでしょうか?
 今回は、投資候補企業へのIRと組入れ企業のIRイベント参加のため訪米しました。
 私が前半にシリコンバレーの企業訪問、後半に岡田がIRイベントへの参加で、中日に投資候補企業と情報セキュリティ企業へ一緒に訪問しました。投資候補企業だけでなく、シリコンバレーという地理も活かしてAIや自動運転、情報セキュリティといった、これからさらに拡大する分野の企業とのミーティングをしてきました。
 私はシカゴに移動してトプコンが出展する医療分野(アイケア部門)のイベントに参加しました。同社に対しては、建機やインフラ、農業といった分野の自動化に注目していますが、それだけでなく医療分野も期待しています。主力製品である3次元眼底像撮影装置 「Maestro」がFDA(米国食品医薬局)の認可取得を受けたこともあり、今回の視察はこれまで強かった欧州だけでなく米国市場においても拡大できるかを理解するために重要なものでした。

201612_worldreport02.jpg
左:運用調査部長 岡田 知之  右:取締役最高投資責任者 草刈 貴弘

トプコンは測量機器メーカーのイメージですが、医療機器も作っているのですか?
 そもそもトプコンという企業はプリズムの技術を持ち、光学機器メーカーとして測量機、双眼鏡、カメラなどを製造していました。その技術を応用して眼科向けの機器へ参入しました。
 トプコンは眼科向け機器でも国内外から高い評価を受けています。今回の訪問では、アイケア事業の戦略説明会だけでなく、米国眼科学会(AAO)にも参加させてもらいました。学会では実際に「Maestro」の機器操作を実演いただき、操作に不慣れな方でも簡単に高度な3次元撮影ができる、という他社にはない強みを確認することができました。また、学会に参加されている多くの方々が「Maestro」に興味を示している様子を目の当たりにすると、米国でも本格的に普及していく可能性を感じました。
 そして、早期診断を実現するためのビッグデータ解析に対する取組みについても詳しく説明いただきました。医療費の増大や医師不足といった社会問題に対する取組みを、実際に海外で働いている現場の担当者から熱意のこもった説明を聞けたことは、投資をしている私たちにとっても大きな自信となりました。経営者から発せられる言葉が現場にまで浸透しているとは限らないからです。実際の現場を確認しにいくというのは、企業が共通の目標を持って仕事に取り組んでいるかどうかを確認するうえでもとても貴重な機会だと考えています。

 

その他にはどのような企業へ訪問したのですか?

201612_worldreport03.jpg 具体的な企業名は伏せますが、実際に投資候補としてユニヴァース※に組み入れられた企業です。この会社では私たちの生活に密着した製品・サービスを提供していて社会のインフラとしてもなくてはならない企業です。これは米国に限ったことではなく、日本の私たちの生活も支えているという点がポイントです。キャッシュフローも安定していますし、今後も成長が見込めると考えています。訪問する前に日本の拠点にも取材に行きましたが、本国でも同じ考え方なのか、コミットする意義ある企業かどうかを確かめるためにも本社に行ったわけです。

 私はベンチャースピリット溢れるシリコンバレーの企業にも訪問しました。訪問した企業のCEOは、以前ある企業の画像処理部門にいたのですが、その企業が買収されることになり画像処理から撤退することになったため、独立し起業したという経緯があります。2004年に起ち上げてこの10年で売上が100倍、時価総額が2,000億円規模の会社へと成長、今や世界中の自動車メーカーやドローンメーカーと取引し、画像処理の分野で世界トップレベルの技術をもつ企業にまで成長しています。彼は技術者ゆえに、自社の持つ強みやそれを活かして進むべき方向性を明確に示していました。成長への貪欲さにおいても日本の経営者にはない強さを感じました。

 

 他にはAIに使われるチップメーカーに訪問しました。この企業は今注目を集めているディープラーニング※に使用するGPU※を提供しています。元々はゲームや映画、デザインなどのグラフィックス処理や演算処理を高速化するためのGPUを作る会社でした。そこにディープラーニングという分野への応用が進み、これまでの分野に加えて今後は自動運転やロボット企業と提携し工場の自動化など、事業分野を拡大していっています。この企業は経営者ではなく、IR担当者達とのミーティングではあったものの成長への意欲は十分に感じました。大手CPUメーカーとの戦略の違いや技術的障壁など、新たな視点を得ることもでき、情報量の多さや多岐にわたる分野での動きを理解する意味でもシリコンバレーという場所のアドバンテージを感じることにもなりました。
先進的な技術があると、現在の投資先企業のシェアが奪われることになりますか?

 

 それはあると思います。AI関連だとドラスティックに変わる可能性はあります。ただ全てが自動化されればよいという話ではありません。今後も人間にしかできない技術を持っている企業なのか、それともAIに置き換え可能な技術しかない企業なのか、企業価値がどこにあるのかを丁寧に見極める必要があります。
 ビジネスにおいて競争は常ですから当然のことと言えば当然です。投資先企業がきちんと時代の変化に対応し、競争に負けないようにしているかどうかを見ていかなければいけません。そのためにも私たち自身が時代の変化が起きていることをきちんと認識しなければならないため、小さな変化にも目を配り調査し続けることが必要なのです。

 

どうして今、海外企業への投資を 検討しているのでしょうか?
 201612_worldreport04.jpg
 日本企業だから、海外企業だからという意識はありません。日本企業でも海外売上高比率が圧倒的に高い企業はたくさんあります。一方で私たちが毎日使用し、「これがなくては生活ができない」といった製品やサービスを提供している海外企業は数多くあります。「さわかみファンド」の投資対象は国内外と設定されていますし、ファンド仲間の皆様に経済的自立を届けるにはパフォーマンスは重要です。生活者として必要で、その企業が割安となっていて、今後も期待できるのであれば祖業の国を理由に投資をしないというのはおかしな話です。あくまで個別企業を見て判断するべきなのです。

 

 とくにIT関連の企業は私達の生活の基盤となる社会インフラを支えています。そういった企業に投資をするため、国内外問わず投資対象のリサーチを進めています。そのため、今回海外の企業が候補に挙がったのもリサーチを深堀りした結果です。

 

 急に海外と言い出したように見えますが、以前から検討してきていました。ただ実際に近い将来、海外に投資する可能性があるため行動に移しています。

 

為替リスクについてはどのように考えていますか?
 一時的なボラティリティが激しいのは確かです。なぜある程度リスクをとるのかというと、価格変動のリスク以上に将来的に日本円の価値がさらに高くなり続けることは考えにくいからです。個別企業が現地通貨ベースできちんと成長すればそれを取り込める、むしろ円資産だけというのがリスクで、外貨資産を一部持つことも資産保全という観点で意味があると考えています。
具体的に海外の株式が組入れられるタイミングはいつでしょう?

201612_worldreport05.jpg

 投資候補の企業が、企業価値に対して割安であれば買います。そうでなければ買いません。これは日本の企業でも海外の企業でも同じことが言えます。
※ユニヴァース : 組入れ候補の銘柄群。銘柄ユニヴァースの中から投資対象を絞りこみ、ポートフォリオが作成される。
※ディープラーニング:人間の脳の仕組みを参考に作られた「ニュートラルネットワーク」により膨大なデータをシステムで処理する機械学習。
※ GPU : Graphics Processing Unit の略。3D グラフィックスの表示に必要な計算処理を行う半導体チップ、グラフィック処理ユニット。