ファンド仲間100万人を目指して/二〇二〇年の行方

ファンド仲間100万人を目指して

代表取締役社長 澤上 龍

皆さまのさわかみファンドは、おかげさまで昨年8月23日に20周年を迎えることができました。単一のファンドで、しかも20年近く保有される受益者が存在するファンドは非常に稀なことです。そしてその20年の間、私たちは企業を応援し共に未来を築こうという長期投資を徹底してまいりました。投資先企業との信頼関係は目に見えるほどです。それらすべて、皆さまとご一緒できたからと社員一同感謝の念に堪えません。誠にありがとうございました。
20周年の感謝を直接お伝えしようと現在、“20周年感謝祭”と銘打って47都道府県を回っております。本年8月下旬までにすべての都道府県を訪問する予定ですので、是非とも私たちから皆さまへ感謝を述べる機会(お時間)をいただければ幸いです。

日本人の1%が“自立して堂々と生きるカッコイイ大人”となったら

社の目標を“ファンド仲間100万人”と設定いたしました。これは単なる顧客増加を狙っているのではなく、根底に私たちを突き動かす大義があります。
私たちは常日頃から“一般生活者の財産形成のお手伝いをさせていただくのだ”“未来づくりの長期投資を日本の文化にするのだ”と発しています。経済的な不安なく、一人ひとりが自らの美意識に従ってカッコよく生きられる世の中は素晴らしいと思いませんか? 自分たちや子たち孫たちの未来を自らの信念と行動でつくれたら良いと思いませんか?
私たちは、さわかみ投信の長期投資でそれらが叶うと信じております。未来に対し責任をもって行動する大人で溢れ、そしてそのような大人に憧れ「いずれ自分も」と頑張る子どもたちに繋いでいく。そのような方々が多ければ多いほど、本当に世の中は変わるものだと信じているのです。
さわかみ投信には12万弱の口座があります。つまり国民のおよそ0.1%、1000人に一人がさわかみファンドに関係しているという割合です。これを100万口座とし、国民の1%に近い方々が“自立して堂々と生きる”ようになれば、日本の未来は間違いなく明るくなるはずです。

逆行する世の中に抗うのではなく、人間的な当たり前の希望によって皆と寄り添いたい

“貯蓄から投資へ”という大テーマのもと、政府は数多くの施策を打っています。彼らの意思は疑いようもなく、施策や制度の端々から本気度が伺えます。しかしながら、それら一つひとつが繋がっておらず、むしろ国民の混乱を誘っている残念な面が露呈されています。これは施策や制度を利用する(従う)金融機関の問題でもあると言えるでしょう。
例えば制度の目玉の一つである“確定拠出年金”。800万人を超える加入者のうち大半が利息のつかない預金に甘んじている状況は、制度導入後の丁寧なコミュニケーションをおろそかにしているに他なりません。また投資促進を図って導入したNISA制度もツギハギとなっており、およそ国民が利用するに相応しくない方向に進んでいます。
昨今は利便性の追求から“手軽・お得”が投資の主要素となってきていますが、それが金融機関の営業ツールとなってはなりません。投資初心者が精神面でも実態面でも、結果的に財産形成に移行できるようなアプローチが必要です。投資家からすれば投信手数料は低いにこしたことはありません。しかしそれが客寄せツールになってしまうと本質を見失います。ESG投資など社会的インパクト投資についてもそうです。SDGsなど誰もが望む未来が世界で提示されている中、実態は無機質なインデックス運用が主流となりつつあります。これは顧客集めのための手数料の引き下げ合戦による結果、そして多くの投資家が目先の利を求める結果がそうさせているのです。インデックス運用を否定しているのではなく、そこにどれだけの社会的志向があるのかが問題なのです。

2020年からのさわかみ投信

もちろん、私たちは大義だけを語っていてもダメです。そして他人批判ではなく、これが王道だという姿・実力を示していかなければなりません。運用成績然り、直販として寄り添う姿勢然り。
私たちは今、成績や信頼をベースにした金融のあるべき未来像を模索しております。言い換えれば、金融のあり方が変わってくるのではないかと感じております。さわかみファンドをお持ちの皆さまからいただくお声として、「持っていることを忘れるくらい安心している」が多数挙げられます。とても嬉しいお言葉ですが、しかし私たち自身は忘れて欲しくないのです。そのため、長期投資の現場たる“投資先企業の実態や未来”をツアーや報告会で皆さまに共有し、またカッコイイお金のつかい方のモデルとなるべく、さわかみグループ全体で様々な活動をしております。今後はそういった“長期航海の景色”を共にするだけでなく、例えば長期投資家の収納術、感銘を受けた本、実践する健康法など非金融的な考え方も合わせてお伝えしていく所存です。成績や直接的なサービスだけでなく、哲学や姿勢といった人間性に共感できる会社を目指します。もちろん直接的にも、4月には新しいサービスを導入(2~3月にご案内予定)したり、長期投資アンバサダー制度の加速、それ以外の施策なども邁進してまいります。
改めて本年を、長期投資によるおもしろい世の中への開帆の年とすることを宣言いたします。同じ船に乗る仲間の皆さまと、そしてこれから乗船される方々と共に“まだ見ぬ、あの景色”へ疾走していければ本望です。

本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。


二〇二〇年の行方

取締役最高投資責任者 草刈 貴弘

あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。20周年を迎え、その感謝を申し上げる会を全国にて開催しています。年初からは四国、九州地方となりその後、近畿、東海と伺いますので、ファンド仲間の皆さまにお会いできることを楽しみにしております。ぜひご参加いただければと思います。

今回の紙面では2020年はどのような年になるのか、それを踏まえてどのように行動するのかについて、ファンド仲間の皆さまにお伝えしたいと思います。私たちは長期投資家ですから、この一年のことだけを考えて行動するわけではないという前提を置きます。そのうえで大きな歴史の流れの中で今がどのような状況で、今後どうなっていくのかを想像していきます。

2020年に行われるイベントとして日本国内で関心があるのはもちろん東京五輪です。同じ都市で開催されるのは、戦後ではロンドンに次いで2番目。そのように考えるとなかなか名誉なことに思えてきます。大会自体に注目が行きますが、同じようにオリンピックが終わった後の景気後退について心配する方も多くいらっしゃるようです。それは前回のオリンピック時も不景気に見舞われたという経験則もあるのでしょう。そこで忘れてはいけないのが山高ければ谷深し。開催国の実質GDP成長率の推移を開催決定から開催年、その後3年ほどの期間で見てみると、成長率の鈍化はあるもののマイナスになるというケースは欧州通貨危機があったスペイン以外はありません(ITバブル、リーマンショックも含めて)。もちろん建設投資の伸びやインバウンドがピークを迎えその反動はあるでしょう。しかし現状の日本を考えると、人手不足により建設ラッシュは起きにくい状況となっており、東京の建設工事の出来高は2017年以降頭打ちになっています(全国では2014年から頭打ち)。そもそも需要が強くないことに加えて供給も増えていないことから、ピークを迎えて転落するといった構図にはなりにくいのです。インバウンドにおいてもオリンピック以前から拡大していますから同様でしょう。ですからオリンピックに関してはそれほどの心配はいらないと思っています。それ以上に影響するとすれば消費の落ち込みでしょう。消費税率は上げたもののキャッシュレスによる還元によって支えている部分がありますが、それが終わった後に消費が落ち込んだ場合は間違いなく景気は悪化してしまいます。対処する有効な財政政策が行われなければなりませんから、国債発行した以上のリターンが得られる成長分野への投資をしてほしいものです。

絶対に忘れてはいけないイベントがあります。それは英国のEU離脱と米国の大統領選挙です。EU離脱は前例をつくってしまったことと、今後英国がそれによって復活すれば当然ドミノ倒しのように他国へ広がってしまう可能性があります。米国大統領選は現職の型破りな人物の再選を注目しているのではなく、世界をリードする国が指導者選びに四苦八苦することで自らがその覇権国としても地位を危うくすることです。これらが象徴しているのは、グローバル化が逆回転し、地政学的には対立や紛争が増え、経済では成長率が鈍化し金融政策が行き詰まりを見せている状況の中で国際的な協調性が崩れてきているということです。グローバル化によって格差が拡大し、資本主義、民主主義に失望した人々がポピュリズムに走ってしまうことで自国優先主義になります。世界の経済的つながりは網目のようになっており、これらが一部でも寸断されれば生活に多大な影響を与えます。そこに地政学的な対立が加われば解消はより難しくなります。国家レベルにおいても個人レベルにおいても非常に厳しい時代であるといえます。

それらを踏まえると、遅かれ早かれ大きく市場が変動し調整局面を迎えると私たちは考えています。ですから現金比率は7%~10%の間で一定程度保有し、株価が下落する場合には積極的に投資したいと思います。ではどのような企業へ投資したいのか。それはCSV※企業や地域社会に貢献している企業で、特に中小型の企業へです。CSV、地域社会に貢献する企業についてはこれまで何度も書いてきましたが、それらの企業は大きな変動の中でも新たな市場への挑戦によって成長が可能であると考えています。また、中小型の企業は株式の流動性から価格が大きく上下してしまいます。大きく下げたときに買うことで株価が戻ったときにはより高いリターンの源泉となります。もちろん大きく買えば長期株主が保有する比率が高まりますから、経営も安心して成長に長期で専念できます。

※CSV:社会課題を解決することによって、社会価値と経済価値の両方を創造する次世代の経営モデル

この数年は金融緩和と低いながらも着実な経済成長、そして金利の低下は債券バブルとユニコーンバブルの様相を呈してきました。政治的な対立が調整局面を生み出しましたが、これらの難題がより深刻化するのはこれからです。それによって市場は今まで以上に大きく上下に変動し、その周期は短くなっていくでしょう。そんなときは丁寧な運用が後に効いてきますから、ホームラン狙いではなく一つ一つ繋いで積み重ねて結果につなげていきたいと考えています。