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話題となっている “FIRE”。Financial Independence Retire Early の頭文字をとったもので、和訳すると「経済的自立による早期リタイア」となろうか。コロナ対策などでバラ撒かれた多額のマネーが金融商品の値を押し上げ、投資していれば自由になれるという自信と実感を生んだのだろう。そんな、米国で急増する FIRE が日本にも入り込んできている。コロナウイルスによって働き方も時間の使い方も多様化した。かつての、自宅と職場を行き来するだけの生活にはもう戻らない。FIRE が今、若い世代のあり方の一つとして光を放ち始めている。

FIRE と早期退職は違う?

早期リタイアと言うが、FIRE は一昔前のそれとは違う概念があるようだ。例えば江戸時代の日本では、家督を早めに子に譲り、その後は悠々自適に過ごすという文化・願望があったそうだ。念願だった伊勢参りもリタイア後に行われたのだろう。そうした、働くことから身を引くことだけを FIRE は指していない。働く・働かないが問われているわけではなく「自由に生きられるかどうか」が重要なのだろう。そのために「経済的に自立する」ことが求められている。FIRE ではリタイア後の生活に必要な金銭を事前に確保する必要はない。リタイア後も自由に働けばよいし、また不労所得(投資運用)がその後の生活を支えるという要素もある。

FIRE の先には何がある?

勝手な想像ではあるが、FIRE は「働くのを辞める」ことではなく「生き方を自ら選ぶ」ための行程だと考える。能力や時間を社会貢献に使いたいと願う人は少なくない。しかし「生活のために…」という現実がその足を止めている。故に FIREなのであり、「早期退職して悠々自適」と蔑まれる理由もない。「老後のために趣味を持とう」という話を聞く。それ自体を否定する気は全くないが、FIRE の概念には「彩ある老後を過ごそう」という以上に、「本当にやりたいことに挑戦するためのステージに上がる」といった意欲があるように見える。仮に、やりたいことがクリアに見えていなくても FIRE を目指した方がいい。「現在は経済的不安があるから何も考えられない」という人もいよう。当然だ、夢を見るより現実を生きる方が優先だ。むしろ、FIRE の過程で自信がついてこそ、徐々にやりたいことが見えてくるものだ。しかし、先のイメージもないまま FIRE をしてしまうと急に不安を覚えるかもしれない。FIRE はゴールではなくスタートなのだから。

FIRE は誰にでも可能か?

時間を味方にできれば誰にでも可能だ。ただし、昨今の経済・金融環境に依存しているだけでは、大きな落とし穴に気づけないかもしれない。現状の延長が未来にあるわけではなく、経済は生きモノであり、どう変化するか未来は誰にも分からない。FIRE を目指すなら着手は今すぐ、達成には時間がかかると覚悟しよう。覚悟といっても、未来を夢見て楽しみに待つだけのことだが。

[2021.11.19記] 代表取締役社長 澤上 龍

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