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銀行、証券、そして投資信託のような金融業者はリスクを毛嫌いする。本来、金融業者はリスクとどう向き合うかが生業のはず。しかしそのような金融業者が本業であるリスクをなかなか取らない。顧客のお金を預かっているという性質上、リスクを回避し安定を選ぶ癖が染みついている。いやむしろ、そういう姿勢こそが是とされてしまっているようだ。

例えばあなたが事業を始めたとしよう。運転資金の調達方法としてすぐに頭に思い浮かぶのは銀行借り入れだろう。しかし、いざ銀行に赴いたところで、希望通りの金額を借りることはまず難しい。あろうことか2期分の決算書を提出しないと貸せないと言うところもある。先日起業したばかりの会社に決算書などあるものか。

証券会社然り、投資信託会社然り、リスクに過敏であるのは銀行と同じ。下手に計算ができるが故に、頭の良い『出さない言い訳』の弁が立つ。しからば、金融業者がリスクを取らずして誰がリスクを取るのだろうか。事業主? それに共感する個人? では金融業者は何のために存在するのか? お金を扱うという免許を振りかざして直接金融の仲介・取り次ぎ程度しかできない金融業者など必要だろうか? リスクを取らない選択こそが、自ら廃業の道へと追い込んでいることに気づかないのか。

 

残念な確定拠出年金(DC)事情

企業型DCでは、加入者に対する継続的な投資教育を求めている。これは事業主(会社経営者)が行うものであるが、税理士などに経費削減できると勧められて導入したDCだとするならば、事業主が継続教育を施すのはなかなか難しい。そうやって放置された結果、せっかくの素晴らしいDC制度が有益に使用されていない残念な現状がある。具体的には、せっかく積み立てている将来の自分年金を働かせることなく、増えない定期預金に置きっぱなしにしている人が数多くいるのだ。掛け金の拠出時点で得られる所得税・社保の減額で満足してしまっているのだろうか。“時間”という最大の武器を味方にせず、とてつもない機会損失を被っていることも知らずに。

事業主が継続教育を施せないなら、パートナーたる金融業者が代わりにやってあげればよい。しかし教育は出張費やらなんやらとコストがかさむ。儲からないのであれば動く気にもなれない。そんなところだろう。

 

目先の損を取れ

目先の損だと分かっていても、産業を育むためにも金融業者はリスクを取るべきではないだろうか。産業そのものが大きくなれば未来に得られる手数料も増えるはずだ。無論、顧客資金を使うのではなく自己資金でだ。それこそが投資だ。しかしそのような長期視点を金融業者は持ち合わせておらず、全体の衰退の中で少しばかり足掻くことしかできない。

説明責任の名の下、金融業者は顧客に寄り過ぎて社会全体に背を向けてしまっている。リスクとは危険だとか損という意味ではない。分からないもの、不確実なことだ。すなわち、挑戦とか育むといった要素も含まれているはず。お金を扱う金融業者が多少なり“育む”視点でリスクを取るならば、社会の発展の末に自らを肥やす結果を引き寄せることもできると思うのだが。

【2023.9.20記】代表取締役社長 澤上 龍

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