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2024年に向けて

2023年ももう終わる。そして2024年には、政府肝いりの新NISAがいよいよ開幕する。投資をこれから始める人も多数存在することだろう。是非、新NISAを一つの機会と捉え、未来への投資と向き合っていただきたい。

ところで、改めてではあるのだが、このNISAなるものはあくまで“制度”であって、NISA口座を開設しただけでは投資は実現しない。その制度を活用して何に投資するか?の意思と行動があってこそ、この制度は意味を成すわけだ。

さて、あなたは何に投資していくのだろう?

 

どこでお金に働いてもらうのか?

何に?投資していくのかを考える上で、次のようなケースを考えてみたい。それは皆さまも気になるであろう海外への投資だ。

周知の事実だが、少子高齢化が加速的に進む日本において、かつてのように日本全体が急成長することは難しい。一方、例えばアメリカは先進国の中でも未だに人口が増加している稀な国だ。世界屈指の教育機関も多数存在し、世界の優秀な人材はこれからもアメリカに集まっていくだろう。そういったアメリカの国家としての競争力が今後も続いていくイメージは十分に持てる。投資先として、そのような国が日本よりも優れて見えるのは悔しいところだが否定はできない。

実際、アメリカの株式市場全体に投資するインデックスファンドなどが日本でも人気であることはよく耳にする。世界的な金融緩和の中で10年以上続く株価の上昇に加え、30数年ぶりに進む円安により、円換算した時の為替差益でリターンもより膨らんで見える。人気が人気を呼ぶのも理解できる局面だ。

ところで、この為替というものも極めて厄介な存在でもある。近年の円安の背景の一つにあるのは日米間の金利差だ。つまり、アメリカがインフレを抑えようと果敢に金利上げに挑む一方で、日本では未だ金利水準を抑え低空飛行で舵取りしている。となれば、お金は高い金利を求めてアメリカに向かう。円を売ってドルを買う。結果円安が進むという話だ。

一方、アメリカのインフレが一段落し金利を下げる局面に入ったとしよう。あるいは逆に日本の金利がいよいよ上がり、この日米間の金利差がなくなれば、バランスが変わり円高に向かう可能性がある。そうなれば日本の投資家たちに待っているのは為替差損だ。せっかく蓄えた株式投資からのリターンも、為替で大きなマイナスダメージを被る。そんなシナリオがないとは言えない。

為替とは、国家間のそれぞれの経済や政治が複雑に絡み合い形成されている。さらには中央銀行のトップがどんな判断をするのか?と、究極的には“その人”の判断で大きく動いてしまう。だからこそ、為替動向を予測することは決して簡単ではない。海外に投資するということは、その“為替”という魔物を相手にするということでもあることは忘れないでおきたい。

 

あなたはどこで生きていくのか?

そして海外への投資を考える上でもう一つの側面を考える必要がある。例えば、新NISAや昨今熱を帯びてきている“運用立国”構想により、国民たちが投資に興味を持ち実際に動き出したとする。ところが、その日本に眠る膨大な資本の投資先が、成長期待のある海外に向かってしまったらどうなるのだろう?

理屈を言えば、円を売って例えばドルに転換して投資を進める。円が売られれば円安が進むことになる。さてどうなる? ここに避けられない現実がある。言うまでもなく日本という国は、エネルギー資源をはじめとして多くを輸入に依存して国家を運営している。円安の進行は、輸入物価のさらなる高騰をもたらし、結果的に国民は生活に窮することなる。これは、国民が海外に興味を抱きお金を移動させればさせるほど、自分自身の生活を苦しくしてしまうというひどい真実なのだ。

グローバルな時代。そしてデジタルな時代。未来の社会は、国境という概念を飛び越え、どこの国にいても働ける時代になっていくだろう。情報格差もなくなり、世界はこれからさらにフラット化していくに違いない。それでもだ。どんなに利便性が向上したとしても、大多数の日本人が今後も日本で働き、人生の多くを日本で過ごしてはいかないだろうか? そして “円”という通貨を使用して生きていくという未来は大きくは変わらないはずだ。先述のように世界には様々な投資機会が存在するのは事実だ。だが私たちが日本で生きていく以上、この“円”という資産をどのように築いていけるかは無視できない事項なのだ。

さわかみファンドが創業以来、ファンドの使命として“円資産の最大化”を謳っている所以はここにある。円で投資いただき、円で換金していただく。そしてその後の円をベースとした生活や消費に役立ててもらう。そう、さわかみファンドには、これからも続く日本での生活において、投資家の人生により近い位置から財産形成をお手伝いさせていただきたいという思想が根本にはある。

他方このことは、さわかみファンドが海外への投資をしないということではない。現在さわかみファンドが日本企業への投資が中心なのは、あくまでその個別企業に成長可能性を見出していることに加え、上述のように円での投資が可能であるからだ。その一方で、同時に海外投資チャンスも常に見計らっている。現実として、ファンドの設計は創業以来“国際分散型”としており、いつでも世界中に投資できるように設計している。

そもそも論として、日本のお金を海外に投資して他国の経済に寄与するよりも、日本国内でお金を動かしこの元気のない日本経済を活気づけたいという想いが根底にはある。だが仮に、時流が変わり、急激な円高の時代がやってきたならば、海外のもの(企業)が安く買えるようになるわけだ。その時は、世界へ向けた投資戦略もドラマチックに変化していくことだろう。それでもあくまで最終目的は円資産の最大化にある。さわかみファンドはこれまでも、そしてこれからも、日本で生活を営む投資家と共に“円”という資産の最大化を一貫して目指していく。

「貯蓄から投資へ」という言葉が生まれて久しい。そして今日、これまで以上に多くの日本人がこの“投資”というものに向き合っているに違いない。そして世界には様々な投資機会が存在するのは事実だ。投資家の皆さまには、是非ともこの新NISAという仕組みを上手に活用して適切な投資先を丁寧に選択していってもらいたい。その中で、自分がこれからどこで生きていくのか? どの通貨を使って生きていくのか?は忘れがちな点だ。結果として自分が生活する土地のお金が育っていなければ元も子もない。

さわかみファンドは、これからも日本で生活を営む投資家の皆さまの身近な存在として、人生を共に歩むパートナーとして、円資産の最大化を目指し財産づくりのお手伝いを実践していく。その流れの中で信頼と実績を丁寧に積み重ね、結果としてこの長期投資の輪が日本全体に広がり、さわかみファンドが誰もが知る国民ファンドにまで成長していけたら本望だ。そして日本全体で「貯蓄から投資へ」が大きな潮流となり日本経済に血が通い、活性化に向けて歩み出す。それがさわかみファンド、さわかみ投信が目指す未来である。

【取締役 戦略室長 熊谷 幹樹】

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