世界的水不足と日本人への影響
地球の3分の2は水で覆われ「水の惑星」とも呼ばれますが、河川や湖沼など人が利用しやすい状態で存在する水は地球上の水量の0.01%に過ぎません(図1)。加えて東南アジアを中心に灌漑用水が不足し、エルニーニョ現象による降水量減少と相まって現地政府が減反政策を推奨するなど、水不足は地球温暖化の影響で年々深刻化しています。この水不足、私たちの食卓にも影響が直撃する可能性があるのです!日常生活においての水は、飲料用などの直接消費だけでなく、いわゆる「バーチャルウォーター」という間接消費も含まれます。
例えば豚肉の自給率は49% (2023年)と国内消費の半数は海外産ですが、その生産でも間接的に多くの水が消費されています。飲料水など豚の飼育時に直接使われるだけでなく、餌の穀物を育てるための農業用水までを足していくと、豚肉の生産は大量の水の確保が前提でなり立っていることになります。このように見ると世界中で起こる水不足の問題は、私たちの生活にも直結しています。
水の争いはいたる所で起こっている
日本は隣国と接しておらず、かつ水資源が比較的豊富であるため、私たちは水を重要な資源として捉えにくいかもしれません。しかし多くの国々が、河川の過剰取水、上流での水質汚濁、所有権問題で争っています。
例えば2018年、膨れ上がる自国債務の解消のため、マレーシアはディールの材料として隣国シンガポールへの水供給価格の見直しを迫りました。必要水量の58%を隣国マレーシアから“輸入”しているシンガポールにとって、水はその確保に緊迫感も漂う戦略的物資といえます。
今後発展が期待される新興国には水不足の国が多く、将来の経済拡大と人口増からますます水の需要が拡大していくとされており、経済面からも看過できない問題です。
日本の膜技術が水不足を救う
このように偏在する水資源問題の解決に、日本の半透膜技術が一役買っています。
水不足の地域で利用される海水を淡水にろ過する水処理膜の提供では、2000年代初頭に日本企業が高いシェアを持つことが話題になりましたが、実は20年経った今でもその立ち位置は変わっていません。
そのような中、海水淡水化大型プラントの稼働状況から2020年以降もその傾向が加速していることが読み取れ、今後も経済発展に伴いグローバルで水需要が増加していくことが予想されます(図2)。当然稼働を始めたプラントにおいて水処理膜の交換需要も恒常的に発生することも考えれば、日本企業の活躍がさらに拡がる期待が高まります。

出典:水処理事業”Vision 2030″の取り組み(P10) https://www.toray.co.jp/ir/pdf/lib/lib_a641.pdf
人の根源的欲求を支えるゲームチェンジャーに
近年では生成AIの進化も加わったことでデジタル化の更なる加速が確実視されており、そのため水にはデータセンターの冷却といった新たな需要まで加わっています。水処理を通じて水を使える状態にすることは資源循環の出発点であり、その需要面からは経済発展の出発点ともいえます。私たちの目には見えない膜の小さな孔ですが、その技術革新を通じて水資源を生み出すことのできる企業は、間違いなくゲームチェンジャーになると確信しています。
「AI」のような華々しさはありませんが、昨今の混乱しつつある社会情勢の中において、生命に不可欠な水の確保に重要な役割を果たす企業の存在意義はむしろ高まると考えており、長期投資家として注目しています。
【山本 泰平】








