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ドイツ出張報告


運用調査部では、アナリスト自身の観察や実体験から導き出される推論を何よりも大切にしています。今回、ドイツ・ミュンヘンで開催された世界最大級の建設機械見本市「Bauma 2025」を視察し、広く・深く・遠くへと思考を巡らせ、推論を深めてきました。建機の最新動向にとどまらず、ドイツの政治・文化・食・環境といった多角的な視点から、さまざまな知見を得ることができました。その一部ではありますがファンド仲間の皆さまと共有したいと思います。

 

Bauma2025の視察を終えて
運用調査部 アナリスト兼トレーダー 新野 栄一

4月にドイツ・ミュンヘンで開催された世界最大級の建設機械見本市「Bauma 2025」を視察してきました。注目は規模の大きさと環境に対する認識の高さです。会場は東京ドーム13個分、57か国から3,600社超が出展し、実物の巨大な建機を比較しながら業界を体感できます。特に目的としたのは、欧州の野心的なグリーンディール政策の対応や人手不足といった建設業界が直面する課題に関する具体的な解決策のトレンドを確認すること、そして要素技術を評価するためです。

視察の背景には、日本国内におけるインフラの老朽化に対する問題意識があります。1960年代の高度経済成長期に整備された高速道路、新幹線、ダム、河川護岸、トンネルといったインフラは今や築50年が経過し、陥没事故や構造劣化などが社会問題となっています。また、都市化が進んだために既存インフラの更新には物理的な制約が多く、騒音や振動への配慮、省スペース施工、環境対策が必要です。

 

▲ ミュンヘンの街並み。マリエン広場と新市庁舎

会場で多くの建機を見てきましたが、注目度が高くこれらの課題に応える投資先企業の2社である、クレーン大手のタダノと独自技術の杭打ち機で知られる技研製作所についてコメントします。
タダノは完全電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR-1000XLL-1」を欧州初公開しアピールしていました。超静音設計で住宅地での夜間作業にも適しており、吊荷監視カメラや過負荷防止装置などの安全機能も備えています。

技研製作所は、同社独自の「サイレントパイラー」技術を用いた杭打ち機を屋外展示エリアで実演。
無振動・無騒音で施工が可能なこの技術は、都市部や住宅地、環境保護区域などでの使用に適しており、持続可能な建設を支える重要なソリューションとして注目されています。

 

▲▼ タダノのクレーン車と高所作業車


今回の視察を通して、先進国の都市における工事は、人手不足、既存インフラ、そしてコストという三つの課題に配慮した、新しいかたちへと変化していく転換期だと実感しました。老朽化する既存インフラについては、センサーやデジタル技術、非破壊検査などを活用することで、コストを抑えながら常時モニタリングを行い、状態を把握することが可能になります。そして、補修が必要な箇所には、インフラの使用を完全に止めることなく、夜間に、静かに、人手をかけず、省スペースかつ短期間で施工できるような建機が求められます。つまり、これからは「つくって終わり」のインフラから、最新技術を活用していかに保守、更新していくかを前提とした持続可能なインフラへと、発想を転換していく必要があります。さらにその先に、1,000年先を見据えて人々の暮らしを支え続けるようなインフラの実現を目指すならば、それは建機業界にとどまらず、日本が世界に誇れるインフラのあり方となり、未来の世代にも胸を張って残せる価値ある取り組みであると確信しています。

 

▲ 注目を集めていたコマツブース

 

ドイツ出張報告【環境編】
運用調査部 アナリスト 田中 和則

今回は環境先進国として名高いドイツの実情についても調査しました。ドイツでは過去の公害の教訓から国民レベルで環境に対する問題意識を持つ教育が行われ、高度なゴミ処理システムを構築しているとのことでその実効性について興味を持っていました。そこでミュンヘン市街での実地調査やJETRO(日本貿易振興機構)ミュンヘン事務所でのブリーフィングを行い、実態を確認しました。

まず実際に行って気づいたのは、街にゴミが落ちていないことです。ペットボトルを例にとると、容器と蓋とが一体化しており(EUで義務化)、ゴミが散乱しない工夫がされています。その上で容器を返却するとお金が返ってくるデポジット制が導入されており、リサイクル率を高めていました。またスーパーマーケットでは、過剰な包装を極力減らした上で、卵容器やレジ袋などに紙素材の導入が進んでおり、プラゴミを減らしていました。また宿泊したホテルでは、日本のように使い捨てのアメニティーは置いておらず、電灯もやや薄暗いと感じるほど省エネが徹底されていました。このように現地では高い環境意識が生活の中に根付いていることが確認できました。

▲ 容器と蓋とが一体化したペットボトル

▲ 紙素材の卵容器

JETROとのブリーフィングにおいては、理想の環境対策を実現するために苦悩するドイツの姿を確認することができました。ドイツでは再生可能エネルギー導入率が50%を超えているものの、原発は廃止し、残りはロシアの天然ガス等に頼っています。ロシアのウクライナ侵攻によりこの歪みが一気に表面化し、ガス代・電気代が高騰し市民生活に多大な影響を与えました。この影響により企業も、エネルギーコスト増に加え、ドイツの労働コストが時間当たり約7,500円とそもそも大きかったことから、工場の海外移転を検討するところも多いとのことでした。これに対して原発を再開しようという動きもあるようですが、一度全廃したことから技術者がいないという状況にも悩まされています。ドイツの物価は、工業製品で日本の2倍、食料品では1.5倍程度といった状況でとてもGDP世界3位という実感は持てていないようです。

▲ ドイツのエネルギー源別発電割合の推移(単位:%)
出所:ドレスデン情報ファイル 2023 年
https://www.de-info.net/kiso/atomdata01.html

 

ドイツではかねてより太陽電池・電気自動車などで多くの補助金を投じてきましたが決して上手くはいっていないようです。イメージ戦略主導では結局長続きはしません。かといって環境対策を後回しにして良いはずもありませんが、一部の施策については今のところ機が熟していなかったと感じます。背景にはドイツの政治状況があり、票稼ぎの極端な政策や連立政権などの歪みがあります。アナリストとしては、一過性のブームに踊らされず、虎視眈々と次世代の本物の技術を研究している企業に今後とも注目していきたいと思います。

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