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ASEANの人口動態と1,000人当たりの自動車保有台数

ASEAN10ヶ国の推定人口は約6億7000万人であり、国連の世界人口予測 によると2054年に7.8億人とピークを迎える見通しです。その中でインドネシアは約2.8億人 、フィリピンやベトナムも1億人規模の人口を有していますが、1,000人当たりの自動車保有台数はインドネシアで約78台、ベトナムで約50台、フィリピンで38台と、先進国に比べてまだ低い水準にあります。一方、タイでは約220台、マレーシアは535台と比較的高い水準で、市場としての成熟度がうかがえます。ちなみに、日本は612台です。
(出典:Total-World-vehicles-in-use-2020.pdf

 

一般生活者は自動車に何を求めているのか?

2024年の自動車販売台数は、日本が約440万台ですが、ASEANの主要国では約330万台、 そのうちインドネシアで約86万台、ベトナムで約45万台となっています。人口増加と中間層の拡大や前述した1,000人当たりの保有台数の状況を考えると、今後もASEANの自動車需要は堅調な伸びが期待されます。

ここから、東南アジア市場における自動車購入者の心理、その理由について考察していきたいと思います。近年多くの消費者が各国政府や自治体の補助金や減税などのインセンティブによって特に電気自動車を選ぶケースが目立ちますが、実際に、ユーザーが重視するのは「壊れにくさ」「実績に裏打ちされた安心感」「故障時に迅速な修理・メンテナンスが受けられるサービス体制(販売拠点の数)」など、日常的な利便性や信頼性だと考えます。東南アジアは高温多湿でインフラ未整備の地域も多く、信頼性とアフターサービス体制の充実が、重要な購入の決め手となります。日系メーカーの「納入実績」「壊れにくさ」「幅広いサービス網」といった長年培われた強みは、現地消費者から依然高い支持を受けており、自動車購入時の重要な判断要因となっています。それゆえ、東南アジアにおける日系メーカーの販売シェアは引き続き高い水準を維持しており、特に、インドネシアやフィリピン、タイでは圧倒的なシェアを獲得しています。

人口のピークが来た後は…

まだまだ先の話ですが、人口がピークを過ぎ、保有台数が飽和して新車販売の伸びが鈍化することが予想されます。しかし、メンテナンスや修理、部品交換、定期点検などのサービス分野は、車の保有期間の延長や安全志向の高まりとも相まって、今よりもさらに需要が伸びていくことでしょう。さらに、先進安全運転装置(ADAS等)の装着やコネクテッドサービスなど、新たな付加価値創出によって既存顧客とより強固な関係構築を図り、収益源の多角化が可能です。このような事業展開は、メーカーや販売会社の価値向上に直結すると考えられます。

東南アジアでは短期的には政府補助金や減税策によって電気自動車導入が進んでいっている様ですが、消費者が本質的に重視しているのは壊れにくさやアフターサービスなどの車両の信頼性といった点は今後も変わらないと筆者は考えます。一時的なメリットで電気自動車の普及がすすみますが、中長期的には補助金頼みではなく、地域のインフラやユーザーニーズに合わせた段階的なパワートレイン(HEV、BEV、PHEV等)へのシフトやアフターサービスの充実度が、企業価値向上を左右する重要な要素となっていくでしょう。

【運用調査部 アナリスト 森實 潤】

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