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日本の上場企業の配当金総額が年々増え、その規模なんと20兆円に達する勢いだ。日本経済新聞によると、単純計算で約3.5兆円が家計に入り、増えにくい実質賃金を補って個人消費を支える効果が期待できるとのこと(7/11記事)。先日の当社セミナーの冒頭に「配当金が増えるのは嬉しいことですか?」と参加者に問うたところ、ほぼ全員がYESと答えた。配当金の増加は多くの人にとって嬉しいことなのだろう。
しかしそれは本当に正しいのか? 個人投資家は諸手を挙げて喜んでいいのか? 冷静に考えてみたい。

 

配当金の本質

例えば、株価1,000円の企業に投資をして50円の配当金が出た場合、配当利回りは5%となる。一般的な金融商品と比べても遜色のない利回りだ。その配当金が翌年以降も増加していけば、とても貴重なインカムとなる。または、それだけ多くの(かつ増加見込みの)配当金はお得だと、その企業は人気化して株価が上がるかもしれない。高配当利回りの投資戦略は、高い配当を得るだけではなく、割安感是正による株価上昇期待も含まれているのだ。

しかし配当金は天から降ってくるものではない。実際には、企業の財産から拠出されるもの。つまり、企業の身を削って株主に還元するということだ。一株当たり利益(EPS)100円の企業が50円の配当を出したら配当性向は50%と高めだと感じるが、そもそも税引後の最終利益100円は株主に帰属するものだから、配当金を出そうと出すまいとその利益は株主のもの。単に企業に内部留保するのか、それとも株主の手元に戻るかの違いなのだ。

企業は毎年の利益を積み増し、株主資本の価値を上げる努力をしている。その積み増されるはずの利益の一部が配当金として社外(株主の元)に出ていってしまえば、企業自体の価値の上昇を鈍化させることに繋がる。無論、株価は配当金の分だけ下がる(上がらない)ことになる。極端な言い方をするならば、投資家は“株価上昇”か“配当金”かのどちらかを選んでいるに過ぎない。配当金とはそういう性質のものだ。

 

配当金の意義と合理的な資産運用

視点を少し変えてみよう。企業は株主のもの(所有)であり、資金を企業に内部留保するか、株主の手元に戻すかの違いが配当金だと述べた。すなわち、企業が配当分の資金を更なる事業投資に用いるか、または個人投資家自身が次なる運用資金として回すか、どちらが効率的だろうかという視点だ。果たしてどちらが未来のリターンを高められるだろうか。

配当金の意義は、株式を売却しなくてもリターンの一部を現金化できる点にある。持ち株を減らしたくない時、しかしながら手元資金が多少なりとも欲しい時には最適だ。その配当金をもって同じ企業に再投資をすれば、持ち株は少しずつだが高めることもできよう。しかし決して「配当金は高いほど良い」とは言えない。手元資金が増えるのは確かに嬉しいが、資産運用全体の効率を考えたら、配当金など求めずに力のある企業を信じて更なる飛躍を共にするのがベストアンサーになることだってある。

【2025.7.17記】代表取締役社長 澤上 龍

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