レアアースは産業のビタミンとも呼ばれています。磁石に微量混ぜることでより高い性能を引き出すなどの用途に使用され、産業界では不可欠な材料です。しかし困ったことに、レアアース大国の中国がたびたび政治的交渉カードとして持ち出しています。先日もレアアースを使用した部品の輸出規制を行い、日本のとあるメーカーでは一時製造停止という事態に追い込まれました。今後もレアアースの供給には不安定な状況が見込まれ、産業界では大きな懸念材料となっています。
このレアアースは、個別の金属によって事情は異なりますが、全体像で言うなら地球上の至るところに存在し、陸上で発見されているだけでも世界需要の900年分程度はあるそうです。しかし採掘されている場所は限られ、その上で最終的な精錬場所(電気分解や化学処理により金属の純度を高めること)は中国に集中しています。その理由は、ビジネス的に美味しくないためです。国土を汚すわりに取引量が少なく、価格も大きく変動するため、どこもやりたがりません。中国では人件費が安いことに加え、環境規制も緩いのです。例えば、レアアースの鉱山に硫酸アンモニウムを抽入して溶け出した金属を回収するのですが、その後は放置している状況です。また掘り出した場合は、放射性物質のウランやトリウムも一緒に採掘されてしまうのですが、除染処理もせずに砂漠地帯に山積みにしているようです。かくして中国は安値攻勢で世界シェアを高め、今日ではレアアースの供給や価格をコントロールできる状況にあります。
この状況に世界は危機感を覚え、中国に頼らないルートで鉱山採掘・精錬を開発しています。日本では南鳥島付近の海底から世界3位の推定埋蔵量のレアアースが発見され、国産のそれらが実現するかが話題となっています。来年1月からの試掘開始に向け、既に始動しています。水深5,500mの海底から1日あたり350トンの泥を回収し日本で精錬します。幸いこのレアアースには放射性物質は存在せず、レアアース濃度も高いとのことです。今後の試掘でより具体的にその費用構造が明らかになり、本格的な採掘をするか議論が始まります。一方これには端から否定的な意見があることも事実です。筆者の想定でも、量産となれば採掘・輸送・精錬費用のみならず、南鳥島で中間処理(酸でレアアースを抽出した後に環境負荷を抑えるためアルカリで中和する)施設を建設するなど大規模な初期投資が必要で、価格で中国と競争するのは難しいと考えています。
しかしながら、経済安全保障の面からこれは行わなければならない事業だと思っています。もはや企業努力のみでは隣国に太刀打ちできない状況になっており、戦略的投資として国家が面倒を見るべきでしょう。レアアース大国として輸出するほどではなくても、レアアースを自給することにより、政治的に揺さぶられる危険性を回避できるはずです。
さて、私たちアナリストは関連企業にも注目しています。その裾野は広く、採掘や精錬のみならずスクラップからのリサイクル、レアアース使用製品、レアアースの削減や代替技術、廃棄物処理・環境技術等、種々の産業があります。継続的に必要とされる企業の見極めをしっかりと行い、応援していきたいと思います。
【運用調査部 アナリスト 田中 和則】









