Sawakami Asset Management Inc.

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さわかみ投信には、「セミナー集団」と呼ばれる活動チームがある。約30名が通常業務と並行しながら全国を巡り、「長期投資とは何か」を自らの言葉で語っている。
月に一度集まり、議論し、ときに哲学し、週末ごとにそれぞれの担当地域へと散っていく。

現在、私が巡回しているのは北海道・秋田・青森。故郷・新潟と同じ北の大地に、どこか“帰ってきた”ような感覚を覚える。

この活動の目的は、ファンドの販売促進ではない。私たちが本当に広げたいのは、「長期のまなざし」で世界を捉える力そのものだ。

運用会社としてリターンを届けることは使命である。ただし、そのリターンが一過性ではなく、持続可能なものであるためには、社会全体が長期で成長し続けられることが不可欠だ。そしてその鍵を握るのは、一人ひとりが「長期的に考える力」に向き合うことにある。

月に一度行われる、セミナーチームによる勉強会

月に一度行われる、セミナーチームによる勉強会

 

「フラット化」から「スワイプ化」へ

2005年、トーマス・フリードマンは『The World Is Flat』で、テクノロジーとグローバル化がもたらす“フラットな世界”を描いた。あらゆる人に機会が訪れ、対等に参加できる未来への希望があった。

しかし、現代を覆うのはむしろ「スワイプ化する世界」だ。

指先ひとつで情報はスキップされ、人間関係も気分で「次」へ。TikTokでは3秒で心をつかめなければスルーされ、ニュースは見出しだけで消費され、思想も商品も“瞬間的な興味”にさらされていく。思考は浅くなり、関係は希薄になり、政治も経済も、短期的なノイズに流されていく。

 

人間とは、本来「長期で生きる」存在である

文明以前、人はどう生きていたか。
狩猟民族だって、未来を見通す視点を持っていた。その日暮らしではなく、獲物の動きや季節を読み、次の土地を見定めていた。農耕民族はさらに未来志向だった。収穫だけでなく、5年後、10年後の土壌を思い描き、種を蒔いていた。特に日本の農耕文化には、その精神が深く根づいている。

「未来を思い描く力」こそが、人間に備わった本質的な能力であり、進化の源でもある。

文明人として生きる今、私たちはその力を手放しかけてはいないだろうか。

だからこそ、もう一度、「長期のまなざし」を社会に根づかせたい。長期的に考える人が増えれば、社会の意思決定は変わる。政治も経済も教育も、「いま」ではなく「未来」を基準に動くようになる。

 

非効率という、最短距離

この時代に、わざわざリアルで全国を回るのは非効率に見えるかもしれない。だが、顔を合わせ、言葉を交わし、空気を感じながら語ることでしか伝わらないものがある。数字では捉えきれない、熱や信念のようなものだ。

スワイプ化する世界で、長期を語ることは真逆である。
だが、その真逆こそが、社会を育てる「根」になる。

長期投資家がこの日本にもっと増えたなら。意思を持った資本が、社会の背骨を支えるようになったなら——
日本の未来は、きっと変わる。
それが、私たちさわかみ投信の信念である。

ある秋田の夜、セミナー後の懇談会。参加者は2名だった。だが、燻りがっこを囲んで語り合った日本のこれから、東北から見た世界、不安と希望の入り混じる話。
こうした時間こそが、未来を語る土壌になるのだと、改めて思った。

今週末もまた、セミナー集団は全国へ散っていく。
長期のまなざしを携えて。

【取締役副社長 熊谷 幹樹】

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