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企業は何のために存在するのか。
利益を上げるためか、社会に貢献するためか。
だが、その本質は「人のために」ではないだろうか。

時代は常に新しい指標を生み出してきた。SRI、CSR、ESG、そして近年は「人的資本経営」。時代が変わるたびに新しい言葉が登場する。だが、本当に問われているのは、どんなラベルを掲げるかではない。企業の原動力とは、いつの時代も「人」だ。それ以上でも、それ以下でもない。

2025年7月、日本で新しい動きが始まった。「JPX日経インデックス人的資本100」。人材育成への投資や女性管理職比率など、人的資本を可視化する新しい株価指数だ。多様性を尊重し、公平な処遇を進めることは、組織の想像力を高め、意思決定を柔軟にする。まさに今の時代が求める経営の姿といえる。

しかし、指標はあくまで手段であり、目的ではない。かつてCSRが注目された時代、企業は立派な冊子をつくり活動を誇示した。だがその紙の束が、どれほど環境を変えたのか。形が目的化したとき、本質は遠のく。

持続的に成長する企業は、流行語に頼らない。地域に根ざし、人々の暮らしを支え、時代の変化に応じて進化し続ける。そうした企業こそ、信頼を集め、長期資本を託される。長期投資とは、言い換えれば「人を信じる投資」である。

人的資本経営の真の価値は、多様な人材がそれぞれの強みを発揮し、互いに刺激し合うことにある。同質性からは新しい発想は生まれない。異なる視点が交わるとき、未来を切り拓く判断が生まれる。女性管理職比率や多様性は手段であり、目的ではない。経営の中心に「人」を据え続ける「姿勢」こそが、企業の未来を照らす。

9月に横浜で実施されたさわかみファンド運用報告会では、その本質を目の当たりにしたように思う。登壇した企業の言葉に宿る情熱。それを受け止める投資家のまなざし。その場にあったのは指数でも株価でもなく、人と人のあいだに生まれる共感のエネルギーだった。企業の未来を動かすのは、数値ではなく「人の意志」である。

AIがどれほど進化しても、それを使うのは人だ。新しい市場を開くのも、挑戦のリスクを背負うのも人だ。だからこそ、経営は人の可能性を信じ、その力を育む営みでなければならない。

長期投資とは、理想論ではない。人を軸に、長い時間をかけて企業を信じ、社会を育む現実の行為だ。どの時代も、人間社会の中心には「人」がいる。その想いが企業を動かし、地域を変え、未来を形づくる。

私たち投資家の使命は、その歩みに寄り添い、人の現場にある努力と希望を見つめ続けることだ。未来は、いつも現場の中から始まる。

【取締役副社長 熊谷 幹樹】

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