
短期の結果を出さずして長期投資は成立しない。この論は、本格的な長期投資を実践する身からすると矛盾を感じる。例えるなら、短距離走を100本やることを長距離走と呼ばないのに等しい。テーマ型の短・中期投資を繰り返すこともまた、長期投資ではないのだ。運が良ければ、短期投資の積み上げで長期の財産形成は叶うかもしれないが、長期投資に求められる再現性は担保されない。
人生も長期投資もマラソンである
爆発力を必要とする短距離走。そのようなトップギアで長い人生を走り抜くことは難しい。肉体的にも精神的にも疲労が溜まる。そういう時に私たちは美味しいものを食べ、旅行を楽しむなどリフレッシュをするだろう。明日からまた頑張ろうと。そうした余暇の楽しみから、将来はアレがしたいな、こういう人生を送りたいな、といった夢を抱くようになる。そして、そんな夢を叶えるために日々額に汗をかき、必要な知識やスキルを習得し、時々の息抜きを楽しみにする。そのうち、年齢を重ねるにしたがって抱いた夢に輪郭が形成され、経験という現実を直視した結果の“相応の人生目標と終活イメージ”が頭をよぎるようになる。同時に、実現のための生活設計や資産戦略を考えることとなる。
大切なのは、環境変化に対応しつつも自分の軸を持って人生を走り抜くことだ。つまり長い長いマラソンである。もちろん途中で目的地を変えたっていい。
マラソンには戦略とリズムが欠かせない
長期投資の主目的は資産を増やすことだ。できれば、お金に想いを乗せて企業を応援し、豊かな社会を一緒につくりたい。そこからのリターンで資産形成を目指すのが理想だ。そういった長期投資の戦略・リズムの取り方は帆船の操縦に近いものがある。
天候やマーケットには凪もあれば嵐もある。常なる前進(上昇)を無理に望むのではなく、凪の時は帆を休め、嵐の前夜からは船を守ることに徹する(一定程度の待機資金を用意し、その間は企業調査を徹底)。そして追い風が吹くその瞬間(暴落時などの買い時)に、手入れの施された帆を目一杯に広げて力強く前進を始める(買い向かう)。そのためにも天気(相場)を読む力と、戦略を実行する忍耐力を磨かなければならない。
本来、企業経営も同じはずだ。しかし昨今は投資においても企業経営においても短期で結果を求められ、そうした結果を積み上げていくことが重要視される。将来の納得よりも現在の納得、つまり合理性や最適性が優先され、一本通った軸である理念や価値観のようなものが置き去りとなっている。未来を創ろうという希望や理想に対しての、本来あるべき投資家のリスクテイクの気概が消失する懸念が拭えない。
小遣い稼ぎは短期投資(その積み上げ)、人生設計や社会創造は長期投資……区別すら不要だが、目先の結果ではなく未来の大きな成果を求めるならば、やはり長期投資特有の戦略とリズムは欠かせないと思う。なお、短期投資家や長期投資家など多種多様なプレーヤーがいるからマーケットは成立し、厚みに繋がっているということも忘れてはいけない。要は、同じフィールドで違う種目を行っているのだ。
【2025.10.16記】代表取締役社長 澤上 龍







