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2026年が始まった。

2025年は、AIが生活の内部に深く入り込み、人のふるまいを大きく変えた1年だった。仕事の段取り、判断の基準、人との向き合い方。あらゆる領域で、人とAIが同じ景色を見るようになった。その変化は投資家の期待を押し上げ、日経平均は50,000円を超えた。量子計算の実装や気候テックの進展など、未来を照らす出来事も続いた。

では、2026年には何が起こるのだろうか。

長期投資家の答えは変わらない。わからない、である。短期の動向はそもそも読めるものではない。ただし視点を数十年に引き伸ばせば、人類が向かう方向はむしろはっきりしてくる。

2050年には世界人口は97億に達し、2080年には104億と見込まれている。多少の振れはあっても、この流れは変わらない。人が増えれば食が要り、食には水が欠かせない。そして水は、つくるにせよ守るにせよ、必ずエネルギーと結びついている。生活、移動、情報、どの領域も人の数に応じて広がっていく。

長期投資とは、人間の変わらぬ欲を理解し、その根が張られる場所を見極め、そこに未来を託す行為である。そして起業家や事業家が少しずつ未来を実装し、その積み重ねが社会の形を変えていく。

未来を考えるとき、もう1つの前提がある。地形は変わらないという事実だ。

数百万年という規模では姿を変えるが、私たちが生きて感じうる数百年の単位ではほとんど動かない。日本列島は海に囲まれ、中国は大陸の東端に広がり、ヨーロッパは複雑な地形を抱えたままだった。変わらぬ地形が、人々の思考や行動に長く影響を与えてきた。これを地政学と呼ぶ。

日本は海に囲まれたことで、争うより協働し、調和を重んじる文化が育った。大陸国家は脅威が近いため、領土を求め、競争を生き抜く文化が生まれた。海か大陸かという違いは、国の性格だけでなく、外交や産業のあり方にまで及んでいく。

AIが国境を越えても、地形は変わらない。国家の深層心理が変わらない理由もそこにある。アメリカが海軍を基盤とすることも、中国が海洋に向けて勢力を伸ばすことも、ヨーロッパがエネルギーに揺さぶられることも、日本が食とエネルギーの確保を重視することも、すべて地政による因果で説明できる。

近年は温暖化が進み、冬眠しない熊が人里に降りるようになった。変わらぬ自然の前提に、変わりゆく気候が交差する地点で起こる象徴的な現象である。

長期投資も同じ構造を持つ。地形、気候、人口。これらが過去にどんな市場を生み、どんな企業を育ててきたのか。その因果をたどっていけば、未来の輪郭は自然と立ち上がる。偶然当たる未来には再現性がないが、因果に根ざした未来には再現性がある。未来を過去から学ぶという姿勢は、逆説ではなく、本質である。

2026年が始まった。この先の10年をどう見るか。20年先、50年先をどう想像するか。確かなことは多くはないが、未来は、私たちが日々積み重ねる小さな選択の先に、やがて姿を現すものだと私は思う。

そしてその未来は、誰かがつくるものではなく、私たち自身が歩いた跡の延長線上に現れてくるのだろう。

2026年が、皆様にとって穏やかで、実りある1年となることを心から願っている。

【取締役副社長 熊谷 幹樹】

 


 

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