
リーマン・ショック以後、金融政策運営力を大幅に引き上げた世界(中銀)は、相場の下落圧力を弾き返す術を身につけることに成功した。2025年4月にも世界の株式市場は突然の急落に見舞われたが、間を空けずして何もなかったかの如く振る舞う。市場に滞留する過剰マネーが即座に穴を塞いでしまうのだ。
後講釈では「アレが昨今最良の買いタイミングであり、暴落からの見事な上昇相場だった」となる。しかし長期投資家はそう考えない。アレを暴落とはせず、フラッシュクラッシュ程度のノイズと見る。では何をもって暴落とするのか、改めて定義したい。
暴落は破壊を伴う
15倍程度のPERに割高感はない。稼ぐ力が増した日本企業には更なる注目が世界から集まる。NISAという国内資金フローもあり、2026年末には平均株価で55,000~60,000円も視野に入る……経済評論家による一見筋の通った見方だ。日本企業の利益創出力は改善し、株主に対する意識改革が進んだのは事実。構造自体の変化、つまり企業は別人となりつつある。しかし“稼ぐ力”は経営のギアアップに過ぎず、本業の力強い成長を語る根拠としては心許ない。
世界、すなわち主要な国家や国民は過剰債務に慣れてしまった。米国は金利を力で引き下げ、多くの投資家もそれを期待する。健全とは思えない。前借り消費はいずれ息切れするのではないか。中国の“水増しなき統計”にて景気減退が明確になるなか、米中関係、日中関係には課題が山積みだ。そもそも積極財政策を採った高市ニッポンの行く末は? 金利上昇の影響は?
金融政策で穴埋めできぬほどの“根本的なリセッション”を迎えたら、企業のEPSなど瞬時に吹き飛び、“皆のPER”は機能不全となる。年率X%の経済成長と仮置きして、都度のサプライズ要素で調整的な舵取りをするのが現代の分析・運用方法……つまり驚異の頻度と速度で後講釈を垂れるのが主流であり大勢ならば、それらを根本から暴力的に破壊するのが本当の暴落となろう。
暴落は株式の価格を半壊させる。株式のみならず債券(金利高)、不動産、金、暗号資産など、あらゆる資産価格が下がるだろう。溢れたマネーが干上がるのだから。そして暴落のトリガーは何にせよ、市場の冬将軍は2~3年ほど世界に留まるかもしれない。
長期投資家が考える暴落の“その時”
市場が長期マネーを必要とする時、企業が長期応援株主を求める時、それが“その時”だ。能動的に考えてみよう。長期投資家は「市場にリスクマネーを供給する」役割を果たす。きっと多くの投資家が売り逃げたがっているはず。だから易々と買えるのだ。長期投資家は「社会に必要な企業を“ここぞ”という時に支える」存在だ。きっと多くの企業が努力に関わりなく評価どん底で困っているはず。だから驚くほど安い株価で買えるのだ。
暴落の定義など正直どうでもよい。長期投資家として「本格的な買いを入れる“その時”はどこか」の方がよほど重要である。ポートフォリオの細かいメンテナンスは常時行うも、刹那的な騰落には過剰反応せず、長期投資家は自らのリズムを大切にするもの。いざ“その時”に投資資金が足りないなんて赤恥などかけない。
【2025.12.16記】代表取締役社長 澤上 龍






