『次世代に繋げる130年の歴史』 株式会社 商船三井

草刈 数年前、ある商社のLNG プロジェクトが動き出した時に、御社が参入されなかったのを素晴らしい決断だったと感じました。恐らく当時、御社でも投資する上でのメリットやリスクについて色々と勘案をされていたと思います。そういう大型案件について冷静にリスクを判断して投資を回避した点が商社との最大の違いではないかと思ったのですが、何故、そのような判断が御社では可能なのでしょうか?

 

田邉 基本的に顧客の需要に応じた輸送モードを提供するということになりますから、投機的に考えて動くパターンとは少し違います。たとえばガスが出てもガスを買いに行く事はありません。どこかでガスを20 年間買い続けるという購買契約が発生すると我々がどのような役割で安定的なガス輸送を提供するかと考えます。予測に基づいて商売を創出しようとはしますが憶測で投機するわけではありません。今の役員会が投資の決定を下した営業資産を実際に使用するのは今の部下たちです。会社がきちんと運営できるかどうか、その為に必要なノウハウの蓄積を次世代に繋げる。ひょっとしたら私は成果物を見ないかもしれない。しかし次の経営陣に確実なものを残そうというのは息の長いビジネスだからです。ここが四半期ごとに方針を変えるような海外の海運会社と日本の海運会社の違いだと思います。当社のターゲット、経営を明日、明後日ではなく2020年に向けてステアリングしていく。向こう2 ~ 3 年は巡航速度、2017年以降はギアをあげて突っ走る、というような息の長い考え方は投資家の皆様にご理解いただけるのでしょうか。

 

草刈 もちろんです。長期投資では「将来の納得を現在の不納得で買う」と言いますが、将来の為に今投資するという考え方は長期投資の理にかなっています。一般の目線だと、目の前の上げ下げで物事を捉え、目の前の現象に「なぜですか?」という問いになりがちです。私たちも御社と同じく、先を見たビジネスをしているのですが、後から「間違いではなかった」と言った時にはもう次の5、10年先を見ていなくてはなりません。20 年先、30 年先を作るために今の不納得をどれくらいまで許容できるかという事は企業価値の一つだと思います。 ところで、投資家と消費者の発想が変わってきています。身近にある商品は全て海外から海を越えて運ばれてきているのに、海運業はダメだと言う人がいます。

 

田邉 スーパーに並んでいるものは皆海運会社が運んでいます。たとえば天ぷらそばは日本古来の食べ物といいますが、エビもそば粉もおつゆも皆海外から来ています。天ぷらそばを食べる限りやはり海運業は無くならないのです。130年もの間浮沈を見てきました。太平洋戦争ではすべての船を無くし、地獄の底から這いあがってきたのが日本海運です。会社の離合集散も繰り返してきました。しかし「21 世紀の今、俺はまだ立っているぜ!」という気持ちはあります。