世界のニーズを先取りし ナンバーワンをめざす

今、様々な業界でビッグデータの活用が叫ばれている中、多くは商品開発や営業施策といったことに活用の視点が向きます。そんな中、御社が取り組まれたのはビッグデータを使った生産性の改善ということですが、それは以前から行われていたことと違いがあるのでしょうか?具体的な例があれば教えていただけますか。
OSGでは世界中にアイテム数で約10万点の標準品という商品を各地域の需要に合わせて在庫しています。日本国内だけで4万点になります。これまでの在庫管理はアイテムナンバー単位で人が行っていました。そして製造部の生産管理担当者はさらに向こう3カ月の生産計画品目を見て、同じ加工工程がある製品を一緒に作るように調整してきました。この在庫管理者と生産計画担当者の業務の頭脳にあたる一部をITに置き換えることを始めました。例えば、超硬エンドミルであれば、サイズはもちろんですが刃の数は何枚か?コーティングの種類はどれか?使用する機械は?というように生産に必要な要素、グルーピングに必要な要素をアイテム毎のデータに付加していきました。
  そして次に取り組んだのがスケジューラーという生産工程管理システムの構築です。これにより生産を待っている製品が自動的にふるいにかけられてラインに流れるようになります。勿論そのためには、流れる側の生産ラインも自動で受けられるようにシステムに連携させる必要があります。つまり、常に最適な状況で生産ラインが最大限の生産能力を発揮できるように自動で生産の順番を組み替えるというイメージです。
  ビッグデータをもとに、生産スケジュールが自動で組まれ、それが自動的にラインに流れていくなかで私たちが目指したのが、金曜日夜から月曜日朝の操業開始までの72時間を無人で稼働させるということです。OSGの製品の精度は1~2ミクロンです。これは温度が3度ぐらい変わっただけで、精度に大きな影響を受けるレベルです。そういう高精度でモノを作る必要のあるOSGにとって72時間を連続で無人で稼働させるには大変高いハードルがあります。ですから、製造現場は「それは無理です!」と考えてしまいます。工場の温度管理では定温をめざしていますが、どうしても外気の影響で変化します。冬場なら、機械を始動させるときには「暖気運転をしないと実際の加工はできない」と製造現場は考えます。ならば、機械を止めずに、何とか動かし続けることで暖気運転を省略できないか?というように発想の転換と新たな技術を導入して自動運転化を進めています。
  また、私たちのような工具メーカーの納期が遅れることは、お客様の生産に大きな影響を与えることになります。多品種小ロットの生産でも納期を守り、お客様からの信頼を得るためにも、キメ細かく対応する必要がもちろんあります。こういう一つ一つの取組みの積み重ねが、シェアアップに繋がると思っています。

工場の生産予定と稼働状態が全て見える化されているディスプレイ


なるほど、これまで以上に、工場は土日に自動で汎用品を製造しておく。そうすると暖気運転の時間も短縮でき、人がいないとできない付加価値の高いカスタム品の製造にすぐに取り掛かれるわけですね。確かに品番の管理や時間の使い方において、新たな視点で見ると考え方が変わりますね。
  ところで、M&Aで欧州の小さな工具メーカーを次々に買収しています。今後も進める予定と伺っていますが、この戦略の意図はどこにあるのでしょうか?
OSGでは年に2回、世界中のOSG幹部を集めて幹部研修会を行います。毎回450名ぐらいが参加して、全グループが一丸となって進むべき道を示します。参加者全員とそのベクトルを共有し、幹部はそれぞれ持ち場に持ち帰ります。現在は、世界中の受注が好調に推移しています。さらに受注力は強化されることを考えますと、このタイミングでマザー工場をスマート工場化して、モノづくりの競争力を強化したいと考えています。
  積極的な設備投資を続ける背景には、「OSGは世界のトップメーカーを目指したい」という目標があるからです。それはトップメーカーになれば市場のデータの大部分を持つことができると考えるからです。例えばタップであれば、世界の約30%のシェアをOSGが持っています。どこでどんなユーザーが何を使っているかはかなり分かります。OSGのタップのシェアはまだまだ30%ですが、それでも大部分の市場データを握っていますから次のターゲットを明確にすることが可能です。ここからシェアを上げるには、さらなるユーザー開拓、次に次世代の製品開発、そしてコスト競争力の強化も必要です。この順番を間違えてはいけません。最優先は受注力なのです。大切なことは世界中で新しいニーズを見つけることです。この新しいニーズに取り組むことでOSGは成長もするし自身も変革できるのです。
  もう一つはOSGのシェアは世界的に見たら、まだまだ開拓できる余地がいくらでも残っていると考えます。まずそれぞれの国でどれぐらいのシェアを持っているのかをできるだけ正確に把握しなければなりません。OSGでは、世界のどこで、どんなお客様が、どんな加工に取り組んで、どんなことに困っておられるか、こういったデータを世界中の営業担当が共有できるようなシステムづくりに取り組んでいます。
 100%OSG製にすることはもちろん無理だと思います。OSGのものがすべてのお客様にとってベストということでもありません。それでも、現在接しているお客様の中でのシェアを上げるという努力が必要です。さらには、全く新しいお客様をどうやって開拓していくのか。そういうときに自分たちの力だけでは難しいこともありますから、M&Aが重要になってきます。特にヨーロッパにはシェアの低い国がたくさんありますから、そこでのお客様のニーズの把握には並々ならぬ努力が必要となります。
  企業を買収するにあたっては、明確な指針を持っていますので、進めれば進めるほどマーケットの見える化が進むわけです。全体的にみて、OSGのマーケットシェアが圧倒的に低いのはヨーロッパですので、ヨーロッパでは今後もM&Aを積極的に進めていきます。