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トレードオフからの脱皮

 ところで、ここ数年の売上高の成長を見ると、これまでの成長曲線よりも一段二段と上のステージに進もうというように見えます。これまで『やらない』というトレードオフを明確にしてきたけれど、一方でこれを変えなければいけない、もしくは凝り固まってそれが成長を阻害させているので改革しているという印象があります。そのあたりの話をお聞かせいただけますか。
 売上高100億円、1000憶円、1兆円の壁があって、それを超えるときにはビジネスモデルを変えないといけないという話を随分と聞かされたことがあり、その時はそうかなあというぐらいに思っていたのですが、いみじくも100億の壁の前で6年ほど横ばいになっていました。もちろん、外部の環境として円高が進んでいたことなど、いろんな要因がありましたが、そこで感じたのは、我々のモデルというのは100億円までのモデルだったのかもしれないなということです。
あとは、生産工程の移管を約20年やってきてようやく完了に近づいた時期で、そろそろビジネスモデルに手を加え、心機一転してやってもいい時期なのかなということで、変えていってみようと考えました。ただし恐る恐る進めているという感じです。
比較的高い利益率というのが守られているのは、製品戦略としてこれしかやりませんとか、セールスはやりませんとかそういうビジネスモデルのおかげですので、少しずつほぐしていっています。失敗もあると思いますが、正解というのはなかなか見つけるのが難しいと思うので、トライアンドエラーをしながらやっていきます。
 今まではこのトレードオフに、ある意味縛られてきていたような感じだったのでしょうか。もしそうならそこから変えることは難しいですよね。無意識にそれを絶対的不文律であるように社員が感じていたり、穿った言い方をすると、社員に考えさせなかった、そうなってしまっていたところがあったのでしょうか。
 こういった規律のようなものは、作った人は試行錯誤して決めていったわけですけど、だんだん形骸化していってしまうところがあります。何が起こるかというと、規律に縛られ過ぎてフラストレーションがたまってくるわけです。研究開発の規定の中にこれしかやらないといっぱい書いてあって、それに抵触してしまうのです。本来であればそこで、なぜこれはやっちゃいけないのかと問えば変わっていく可能性があるわけです。しかし、それを決めてきた人たちが偉大だったので、有無を言わさずこれが正解だというような空気になってしまった。そういった中で試行錯誤するということがおろそかになっていました。ちょうどタイミングとして売り上げが5期6期横ばいになっていたというのと、古くからの人たちが退いていくということ、あるいは生産工程の海外への移管の終了など、様々な条件が整ったということです。いろいろな条件が整わないと、規律の変更はうまくいかないと思います。外界も含めて所与の条件も変わってきたということですね。外の状況も変わっていく、我々の状況も変わっていくということに合わせて少しずつ試しています。規律を作った人たちも、その場その場で変えてきたのです。規律・ルールは作ることよりも変えていくことのほうが難しいよねと、作った方たちはまさに変えることをやり続けてきたわけです。

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