Sawakami Asset Management Inc.

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皆さまのさわかみファンドは8月に20周年を迎えます。20周年にあたり代表取締役社長の澤上龍と取締役会長の創業者澤上篤人が創業当時のエピソードから今後の展開まで大いに語りました。2回に分けてお届けします。
前編の今回は、創業時の熱量あふれるエピソード、そしてさらなる発展のためにアホになれと発破をかけます。さらなる飛躍に向けて語ります。

― さわかみファンド20周年の記念対談にあたり、まずはさわかみ投信の設立の頃について聞いていきたいと思います。投資助言業から、なぜ投資信託を目指したのでしょうか?

澤上篤人(以下 篤)もともと投信をやりたいと思っていた。助言業務だと個人毎にポートフォリオをつくることとなり、それだとせいぜい200人程度と届けられる範囲が限定されてしまう。でも、投信だといくらでもお客さまを受け入れることができる。投信って多くの人に長期投資をお届けする最高の器なんだよ。

― ファンドを組成して3ヵ月後には定期定額購入サービスが始まりました。

 今さらながらにようやったと思うよ。8月24日にさわかみファンドを設定して、すぐに始めたのが積立購入制度の準備。調べたら日本のどこにもない。ないならゼロからつくらないといけないじゃん。そこから月賦販売やファクタリングの仕組みやらを組み合わせて、これならいけると8月中にめどをつけて、その月の月次レポートでアナウンスすることができた。

― これを一週間でやったとは、ものすごいスピードですね…

 それはすごいスピードよ。さわかみ投信はスピードが一番大事。世の中のために、ファンド仲間の皆さまのために何ができるかというのを常に考える。できると思ったら即座にやる。良いものをすぐにやるというのがさわかみ投信の原点。チャレンジングなことにも無理をしまくる。

2005年、さわかみファンド純資産1000億円突破記念 ファンド仲間大合流パーティにて。

― そのころの社内の雰囲気というのはいかがでしたか?

 それはもう皆が真っ赤に燃えて仕事をしていたよ、夜遅くまで。熱量が本当にすごかった。人生はさわかみ投信のみ、ファンド漬けという感じだったね。
澤上龍(以下龍) 情熱がすごくて、勢いもあって、それがどんどん広まったからファンド仲間数も大きく増えたんだと思う。
 あの頃はまったく疲れなかったね。もう熱に浮かされていたような感じ。苦労しましたか、しんどかったですかとか聞かれるけど、苦労とかじゃないんだよ、非常におもしろかった。
 昔は実績もない。ITバブルの最中は基準価額も下げていたから安心感もない。そんなさわかみファンドにファンド仲間の皆さまが集まっていただいたのは、実績じゃなくて期待に対して。その期待をいただけた理由が情熱とか熱量だったね。
 仕事を通じてどんどん想いが高まっていってね。セミナーでも準備なしでドンとぶつけることができる。
 セミナーについては皆、真面目になりすぎた。真面目というか説明的になっていて、これでは皆さまの心に届かない。丁寧な金融知識は話せても、それはさわかみじゃない。皆さまにとってウチでなくても構わなくなる。当時は金融や投信の説明なんてしなかったし求められなかった。それよりもこれから何をしていくのか、何を訴えているのか、何に燃えているのか、それが新しいファンド仲間を呼ぶにつながった。この勢いを再度起こさないと。
 がむしゃらにやっていて、そして期待をしてもらえた。こいつらを見守ってみよう、何かしてくれるだろう、という期待がどんどん集まってきて。そうすると我々はもっと前に進んでいかないといけないわけよ。そういう循環があった。
 現在は20年近くの実績があり、つくり上げてきた信頼という財産に甘えてしまっている部分があると思う。しかし、今日以降の信頼を勝ち取るには期待をいただく以外にない。自分達の過去を振り返るのではなく、今日以降に自分達は何がしたいのかということを己の中で燃やして突き進む、それが全部期待になる。がむしゃらにやる。それを全社員でやれたらさわかみ投信はもっとすごくなる。
 我々は歴史を切り開いているわけよ。突っ走っていくようでないとそれはできない。後ろを意識しているようではダメで、先だけを見て突っ走っていく。そうなると今の10倍とか100倍というスピードでファンド仲間が増えていく。自転車と同じで、スピードが遅ければふらふらしてしまうが、スピードが上がれば上がるほど安定する。もたもたしていてはいけないよ。
 あの頃は時間に対してイライラしていた。なんで時間がこれだけしか、24時間しかないんだって。
 そう。本当にそう。
 もう、まったく時間が足りない。アナリストは死にそうだった。火曜の運用会議、金曜は勉強会で発表しなければならない。そのためのネタを見つけるのも一苦労だった。なんせ毎週なので。
 調査だけじゃないから、あの頃は。毎日届く山のような封筒の事務処理や電話の応対などもアナリストがしてたのよ。
 すべきことがたくさんあったから。
 それに月中と月次のレポート発送作業もあった。

代表取締役社長 澤上 龍

― 月中月次のレポートのお話が出ましたが、初期の頃というのは、ファンド仲間とのつながり、接点はこのレポート以外に何かありましたか?

 直接的な接点は多くなかった。入社一年後に月次レポートの執筆に挑戦して、会長(当時社長)にダメだとつき返されて…3~4ヶ月かけてやっと書き上げ発行されたそのレポートを見た方が顔を見たいと来社された時ぐらいかな。後は日々の来店応対と、毎週の金曜勉強会。一般社員はファンド仲間の皆さまとの接点はあまり持てなかった。よく「顔が見える会社」なんて表現するよね。でも、単にホームページに顔を載せたくらいで本当の顔など見えない。むしろ、レポートの文章などなんでもいい。そこから魂や志が見えるようにならないといけない。表面的な笑顔よりも、真剣に取り組んでいる姿やその背中、そしてその上での笑顔だよね。一方的だけど、それこそが社員がファンド仲間の皆さまに対する接点を持つ方法だった。今は勉強会や感謝会、運用報告会などあるけどね。
 俺はカリスマなんて言われることもあるけれど、全然興味ないし、そういうのは良くない。さわかみ投信には訳の分からんおもしろいヤツが一杯おるわと、そうじゃないといけないのよ。訳の分からん、アホになったヤツらが先へ先へと突き進んでいる。そういう印象を持ってもらわないといけない。
 どこかで良い意味でアホになれる社員を20人ぐらい入れて、そういう人たちが引っ張っていく会社にしたいと思っている。きっちり丁寧に仕事をするのはとても大事だけど、ぐいぐい引っ張っていく少しアホな人が未来をつくるんだよね。そういう人で会社を構成していかないと。
 強引にガンガンいく、後ろがちぎれていく。それぐらいでないと。
 そういう人はなかなかいないけど…。
 感触はある。まだ完全にアホになれていないけど、なれる可能性があるのが社内にも何人かいる。それが本当に良い感じでガーンときてくれれば。どこかで燃えたぎるような人間が7~8人と出てくれば一気に変わるよ。むちゃくちゃ変わる。
 20年後はこうなっているだろうから、だったらこれをしよう、あれをしようというような議論をしたい。未来に対してこれが必要じゃないか、だったらやろうよというような。
 いくらでも思いつくし、おもしろいそれ!こうやろう!とか、そういうのをやりたいね。
 社長はいつも突拍子もないことを言うと思われているけれど、実際、世の中は突拍子もないことで進化している。
 突拍子もないことと言うけれど、我々からすれば別に突拍子でもなんでもない。普通の人たちはびっくりするかもしれないけど、良い世の中をつくっていくってそういうことなんだよ。今にこだわって、今しかできないこと、今で終わっている人にはとてもついてこられないレベルで考えないと。あれもできるし、これもやりたいというように。
 突拍子もないことが実際に現実になっていくんだという自信、追い風を経験できるようにすることが今の会社の課題だと考えている。つみたてNISAを導入しないと言った時も突拍子もない意見のように思われたけど、本来はそれ以上のものを自社で生みださないと意味がない。やらないというだけでなくて、スピード感を持ってもっとすごいことをやっていく。

取締役会長 澤上 篤人

― 初めの頃の期待というのは、今後の基準価額が上がるか下がるかといった字面で見えるものではなく、スピード、想いに期待されていたのですね。

 同時にウチのような長期投資が世の中になかった。世の中にないなら俺達でやればいいじゃんという格好なんだけどね。
 長期投資という手法であれば、本当に世の中がおもしろくなるんじゃないか…見てみたら本気でやっている変なアホがいるぞと。これはおもしろいじゃないかということで期待していただいた。そうであるならば、今は20年やった実績がある。そこから生まれてきたものを、さらに発展させていきたいと頑張り続ければいいんじゃないかな。例えば企業との関係性についても、ここまでやってきた土台から様々なことができるだろう。20年先を見据えて、こんなことができればおもしろいんじゃないかと突っ走れるよね。
 言い方を変えると、ここまで20年やってきて実績がこれだけ積み上がっているんだから、20倍はできるはず。それぐらいの気持ちを持ってやってほしい。いろいろなものが財産だからね。実績が出てきたから安定を、なんて考えてはいけないよ。ここまでの実績はファンド仲間の皆さまに喜んでもらえた。しかし我々はもっと先に、どんどん先に行かないといけない。20倍進んでいかないと。そのためには悪乗りをしていくしかない。
 社員の悪乗り提案には経営としておおむね賛成するだろう。やり方については多少指摘をするかもしれないけど、まずはやってみようと言うだろう。そういう提案が出てくれば、多分方向性は良くてじゃあ具体的にどうやるのという話になっていくと思う。今は提案が小粒になっている。もっと風呂敷を広げていいんだよ。ほらを吹くというか、せっかくなら大ぼらの方がおもしろい。だって、ほらを吹いたらやらないといけないから。もっと広げようよ。

6月号へ続く

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