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最近、様々な人との会話で行き着くのは、「日本にはリーダーが必要だ」である。現状の延長に光を感じられず、痛みを伴ってでも革新を求めなければならないといった危機感なのだと思う。

昨今の日本の風潮は全体納得を土台とした柔らかいものであるし、事実、そういった背景を踏まえた制度が増えてきている。“ 個人の選択肢の充実” や“ 弱者救済”、“ 富の再分配” など一見してどの各論も間違っていない。しかしながら、制度解釈の甘さが権利主張に繋がり、延いては“ 強い日本” から遠ざかっている感が否めない。言い方を変えれば、国民から自助努力の精神を奪い、「幸せは誰かが与えてくれる」といったものが醸成されているように思う。物事には善し悪しがあり、現状のすべてを否定する気はない。しかし全部足したら漸減(ぜんげん)の道しか見えないのだ。

 

今後の日本経済に期待できませんが

痛みを望む者などいない。されど痛みの先に改善があるなら避ける選択肢はないはずだ。歯の治療を拒み、歯のない老後を送りたくないだろう。
およそ12年前の東日本大震災時、突然の苦難を乗り越えようと励まし合い、多くの人が手を携えた。さわかみファンドで言うなら、「西日本が支えるよ」と大量のお買付けをいただき、復興とその先の社会に資する企業に果敢に投資をした。「安くなったら買い」という合理的判断であることは間違いないが、その想いは“ 支え合おう” という人の優しさや共感力だった。歯も極限まで痛くなったら必ず歯医者に行く。人は顕在化された困難には協力して立ち向かうものだが、見えぬものには目をつぶってしまうのか。それとも課題や解決方法が分からないだけなのか。

例えば現状の日本経済のように困難が見えにくく、さらに困難を先送りする状況に人は他人事のように悲観だけする。「今後の日本経済に期待できませんが、どうお考えですか?」という質問に代表されるように。

 

だから動くのさ

経済を一枚の紙とするならば、表面は企業等の供給側、そして裏面は我々の消費側だ。いや、表裏どちらがどちらでもいい。要は表裏一体ということだ。株式市場も似たようなもので、表側が上場企業だとすれば裏側は投資家であり、一枚をもって市場となる。その片面、つまり100%を担う我々が臆していて経済や市場は良くなるものだろうか? 現状を見ていたら期待感を抱けないのも理解できる。だからといって他人事のように悲観してばかりであれば、紙を腐らせるのは裏面からとなってしまう。逆に、裏面から表面、つまり紙全体を刺激することもできる。裏面の発展はその裏面を担う我々消費者・投資家の行動にかかっているのだ。

だからこそ動くのさ。笑顔と共に。皆の足並み揃いを待つのではなく、余裕のある人から動き、後続に道を示し、結果を見せるのだ。果てには全体が良い方向に期待を抱きながら歩んでいくようになる。その先鞭役が長期投資家でありリスクテイカーだ。将来の納得に対し現在の不納得で動くとはそういうことだ。

目下の課題は、バラ撒くことしかできない政府や日銀、悪化する財政、改革を起こせない東証、いつまで経っても上向かないデフレマインドや賃金…様々だ。小利口に策を評論するのではなく、我々はできることから行動に移していこう。さわかみ投信は納得できないと評されても行動していく。

【2023.4.21記】代表取締役社長 澤上 龍

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