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年始めの本稿では、投資先企業の発掘・調査・議論といった役割をいただいている私が日頃どのように企業を見ているのか、担当する信越化学工業株式会社(以下信越化学)を題材にその一端をご紹介していきたいと思います。

 

化学企業を調査する際、私はまずその企業の事業範囲を原料を軸にしたマップ上にイメージするようにしています(下図)。

マップの左右は原料の違いですが、例えば物質的に安定的な原料を利用する無機化学(塩やケイ素)と、より利用しやすい化石資源を原料とする有機化学(ナフサ≒石油)のどちらに祖業があるかで、その企業のコアとする技術の優位性や研究開発の広がりなどが想像できます。
またマップの上下に目をやると、川上では大きな需要を獲得できる反面その荒波を乗り越えるダイナミックな経営力や、川下では高い利益率になる反面、顧客への技術対応や次の成長の場を探すスピード感ある経営力など、求められてきた組織能力が理解できます。

このように企業のコアと現在の事業の範囲をマッピングしてみると、今後の成長や課題をイメージするスタートラインに立つことができます。
さてここで信越化学に目を移すと、コアから上方向(原料)と左方向(無機化学)へ事業の範囲を拡大してきていることが確認できます。
同社は肥料メーカーとしての始まりがコアになっていますが、現在は塩ビ樹脂(有機+無機)、シリコーン樹脂(有+無)、半導体シリコンウェハ(無)、希土類磁石(無)など無機化学の領域に事業範囲を拡げ世界でTOPシェアの製品を多く有しています。

実はこの無機化学への拡がりが既に世界でも類を見ない同社の競争力の高さを示しています。有機化学は原油需要とも紐づく関係から経済発展に先行する形で発展しますが、それに比較して無機化学は原料の確保・顧客の創出を企業独自で築きながら発展させていく難しさがあります。このような観点から、世界の化学メジャーと比較しても、無機化学においてこれだけの事業範囲を歴史的に拡げてきた同社の独自性が際立ちます。

他方で、塩ビ樹脂の主要原料であるエチレンは米国、シリコ-ン樹脂・シリコンウェハの主要原料であるケイ石は豪州と、どちらも歴史的に早い段階で安価な原料を確保し事業範囲を上方へも拡げています。この事実は同社のこれまでの高い収益力の源泉になっていますが、高まる環境規制により原料確保のコスト上昇が予想される将来において、さらに高い競争力となることが期待できます。さらに同社はこの戦略により生まれる余裕の一部を安定供給の約束などを通して顧客の信頼醸成に繋げることで、マップ上方に位置するどの企業も抱える成長と低収益・業績変動というジレンマも克服し関係者を驚かせてきました。

 

このようにやや大きな視点に立てば、一見複雑な化学企業でもその成長戦略が一枚の絵として浮かび上がってきます。今回は調査活動の触りをご紹介しましたが、私共アナリストはこういった分析と取材や議論を繰り返し日々調査する力を磨いています。
ファンド仲間の皆さまには相場が変動する中でもポートフォリオを毎月安心して眺めていただけるよう、引き続き研鑽を重ね、投資先企業に対し丁寧な調査を行ってまいります。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

【運用調査部 アナリスト 斉藤 真】

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