いいモノは良い、ソコへ行った人には必ず伝わる

今回はファンド仲間の板倉正幸さまをご紹介いたします。私にとって板倉さまをファンド仲間としてインタビューするのは不思議な感じ!なんと数年前までは私たちの投資先企業である日東電工のIR※グループ部長を務めていらして、私たちの取材の窓口として、和やかにも厳しく机を挟んでやり取りしたことが幾度もあった方なのです。そんな板倉さまは2017年に「ディア・マスターズ」というIRコンサルティングの会社を起業され独立されています。当時、突然いただいた起業の連絡には驚き、その後はその挑戦を遠くから尊敬するに留まっていました。ところが今回、私たちグループ内で芸術振興をしているさわかみオペラ芸術振興財団主催のボローニャフィルハーモニー特別コンサートが再会のご縁を取り持ってくれ、このインタビューが実現することとなりました。

私自身の文化的な素養の浅さがお恥ずかしいですが、さわかみグループ主催のコンサートへのご参加・感激のメールをいただきありがとうございました。
「久しぶりに良いコンサートに出会いました。私だけでなくアンコールが終わっても観客がなかなか帰ろうとしませんでした。また耳の肥えた学生時代のグリークラブの先輩からも、久しぶりに良い音楽を聴いた、誘ってくれてありがとうと言ってもらいました。コンサートの最後に澤上会長が壇上で、ボローニャは演奏が一流なのは勿論ですが、団員の人柄がいいんですとおっしゃっていましたが、人そのものが出る演奏を感じたからこそ、他の方たちも拍手を続け、スタンディングオベーションしたのだと思います。会長は来年も再来年も続けると明言されていたので、次回も友人・先輩を誘ってお邪魔するつもりです」

以前どこかでファンド仲間でいらっしゃることをお伺いしたかと記憶しておりましたが、改めて投資のご経験などを聞かせていただけますか。
「さわかみファンドは2001年の6月に投資を始めて、積み立て投資をしています。投資を始めたきっかけは、2000年7月までの海外赴任の中で、その赴任先の一つであった香港での経験が大きいと思います。経済成長の勢いもあるかと思いますが、国民性として“利に聡い”とでも言いましょうか、現地の同僚が伸びる企業や株式投資などの話で盛り上がっていましたので、その影響を受けたように思います。さわかみファンドと出会った具体的なきっかけは思い出せませんが、当時幾つかファンドを検討する中でその運用方針に共感する所があり実際に澤上篤人会長(当時社長)の話を聞きに行ったことを覚えています。お蔭様でしっかり成績も出ており、さわかみファンドも含めて長期投資をしてきたリターンがあることは、起業する際の支えになってくれました」

2017年に独立を決意された思いをお伺いしました。魅力ある企業の責任あるポジションを捨ててまで、起業へと向かわれた行動力を尊敬いたしております。
「アフリカに“遠くへ行きたいなら皆で行け、早く行きたいなら一人で行け”というようなことわざがあったと思いますが、簡単にいえば早く行ってみたいと思ったのです。IRの仕事の醍醐味は、株主になって欲しい投資家にアプローチをして会社を理解いただき、狙い通り株主になって貰った時の喜びや、既存の株主に業績や株価が悪い時期でも会社を信じていただきその回復を共に喜ぶことができるような所にあります。ただそれを実現するためには、経営TOPの理解や他部署を巻き込む力などが必要です。日東電工では満足できる仕事をさせてもらいましたが、それは担当時に仕えた経営TOP自らによるIR活動の継続や、大きな企業の中で経営資源を使える環境のお陰であるとも思っていました。50歳を過ぎてから次の自分の成長を考える中で、経営資源の限られる企業に向けて自身のこれまでのスキル・ノウハウ、知識や人脈を提供することで、その企業の価値が市場でより評価されるようになるのなら、これほどやりがいのあることはないかもしれないと考えるようになりました。」

当時ファンド仲間でありながら投資先企業のIRでもいらしたことから、稀少な立場からの意見もお伺いすることができました。板倉さまが前職でIRの責任者をされていた時期には、金融危機もありました。投資される側の事業会社内では、株式市場やさわかみファンドにどのような印象をお持ちになっていたのでしょうか
「金融危機の兆しはまさに現地で感じ取りました。経営者に帯同した北米IRツアーの前日に現地ホテルで投資家からアポイントをキャンセルする連絡が入ったり、面談時間が大幅に短縮されたり、何が起こっているのかと思ったのを覚えています。日東電工の株価も大きく下落しましたが、社内はそこまで混乱していませんでした。危機になった時には逆に結束が固くなる会社だったように思います。経営からの鼓舞もありIRとしてもネガティブにならずに、今まで通り予定を崩さずにやっていこうということで、現場は業績も株価も戻ってくるという強い信念をもって活動していました。さわかみファンドはそういった時こそ応援したい企業に対してしっかり買いに入りますよね。企業側からすると、言っていることとやっていることが違う投資家もいる中ですごく信頼感がありました」

多くの気付きがあった楽しい時間も
アッという間に終わりが近づき…
「長期投資もオペラも文化として根付かせようとするもので、もの凄いチャレンジだと思います。どちらも簡単な道のりではないと思いますが、いいモノは良い、ソコへ行った人には必ず伝わると思うので頑張ってください」とインタビュー最後に板倉さまから激励をいただきました。企業のIR活動は私たち投資家の判断にとって重要な材料になります。ファンド仲間でありながら、同じ株式市場の中で投資家とは違う立場で“潜在的な企業価値を適正に評価したい”という志に向かって尽力されている板倉さまの“異床同夢”なご活躍があることを心強く感じるインタビューとなりました。
(運用調査部 斉藤)

※IR(インベスター・リレーションズ)
企業が株主や投資家向けに経営状態や財務状況、業績の実績・今後の見通しなどを広報するための活動。


板倉 正幸様

ファンド仲間として、株式市場関係者として、芸術愛好家として多面的にさわかみグループを評価いただける存在。現在はIRコンサルティングの会社を起業され活躍されています。