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マレーシア ツインタワー

▲マレーシア ツインタワー

 

タイの渋滞の様子

▲タイの渋滞の様子

今期の運用調査部の施策である「質の高い一次情報に触れる機会を増やす」という目標に沿って2024年1月中旬、アジアでの企業訪問・工場見学の機会を得ましたのでその内容を皆さまと共有させていただきます。今回は坂本・森實・斉藤の3人が1週間、タイ・マレーシアと移動する旅程で4社へ訪問してまいりました。
世界の地政学リスクや大国中国の経済成長が踊り場を迎える懸念も高まる中、需要と供給の両面から東南アジアでの日系企業の活動を注視する必要が高まっています。今回はその発展の方向性やスピード感を確認するために現地に向かいましたが、国内では得られない視点で様々な示唆を持ち帰ることができました。簡単ですが以下に各社毎の訪問内容をご紹介します。

 


 

オーエスジー株式会社

南アジア~中近東を統括するキーマンとの出会い、グローバルでの成長戦略伸展とその期待を確認。

 

世界トップシェアの製品を製造し、切削工具(タップ・ドリル等)でモノづくりを支えるOSG社のタイ工場に訪問いたしました。
タイ工場では主に現地で製造をしている二輪・四輪、エレクトロニクスなどの日系メーカー向けに製品供給~アフターフォローのフルサービスを提供していますが、社内で最高位に認定される製品も製造できるタイ人の丁寧な気質により、世界で戦える品質が維持されていることが確認できました。

また、そのタイに籍を置きながら南アジア~中近東の地域を統括されているキーマンとお会いできたことは、同社のグローバルでの成長持続性やBCP(事業継続計画)のための戦略がイメージできる好機となりました。各地を歴任しながら立ち上げた工場を、我が子のように語られる同氏から戴いた「これからインドは面白いですよぉ」のコメントが強く印象に残りました。
次の世界経済の牽引役が期待されるインドでは需給両面から確実に市場の成長の実感ができており、航空機や電子デバイスなどで必要となるハイエンドの切削工具の引き合いも手応えが出てきているとのこと。同社の中でインドの売上規模は相対的にまだ大きくないものの、その進出には歴史があり非日系顧客に対しての信頼や商流の構築がしっかりと伸展していることも、お伺いできたことで、今後の成長を取り込む自信の高さを確認することができました。

OSGタイ エントランスにて/運用調査部 森實(写真中央)

▲OSGタイ エントランスにて/運用調査部 森實(写真中央)

 


 

DOWAホールディングス株式会社

当局の規制やその変更に我慢強く対応、廃棄物処理の高度化による成長の可能性を確認。

 

非鉄金属の製錬・リサイクル~廃棄物の最終処分で高度な技術力を持つDOWAホールディングスグループにあり、タイで管理型最終処分場を営むEastern Seaboard Environmental Complex Co.,Ltd.(ESBEC社)を訪問いたしました。

同社はタイでの廃棄物やリサイクルなどの適正処理のニーズが高まる中、日本と同様の信頼あるサービスを広めることを目的に丁寧に運営されていますが、現地では予見しにくい政策や規制の変更・インフォーマルな業者も存在するという難しい事業環境の中、初志貫徹のために柔軟かつ迅速な意思決定が成されている姿が印象的でした。

現在同社では社会的意義・事業性の両面から今後増加が見込まれる有害廃棄物や廃棄バッテリーなどの受け入れを拡大し、同国内にある焼却設備との連携(マテリアルリサイクル含む)をより強固にする戦略に取り組んでいますが、現地で実感できたEV人気の高まりからも同社技術が必要とされる環境が迫りつつあることを確信いたしました。

駐在される皆さまとのミーティングではタイの生活環境の改善を少しでも前進させようという気概に敬意を抱きました。

足元でも加速する自動車の電動化や電装化、再生エネルギー導入拡大によるエネルギーMIX(電源構成)の多様化は、裏を返せばリチウムイオンバッテリーを本命とした二次電池の普及ありきのシナリオに基づくものと考えられます。これはエネルギーがレアメタルにかたちを変えて私たちの身の回りを囲むことにも他なりませんので、その循環を担おうとする同社の取組みへの期待が高まりました。

ESBEC社エントランスにて、DOWAグループの皆さまと

▲ESBEC社エントランスにて、DOWAグループの皆さまと


 

KOA株式会社

マレーシアの国民性とKOA社の企業文化の融合、競争力のある大型新工場への期待を確認。

 

抵抗器メーカーの大手専業では唯一の存在であり、「循環型地域社会のモデルづくり」を先鋭的に取組み続けてきているKOA社のマレーシア(マラッカ)工場に訪問いたしました。
同社の海外進出として、そしてマラッカの日系企業工場としてもお互いに初であった工場設立は既に50年の歴史を持っています。その工場からは製品一片のサイズが1mm以下であるような小さな抵抗器が月産数十億個の単位で安定的に製造されていますが、非常に小さな製品を大量に正確に製造する必要がある抵抗器メーカーとして求められる素養と真面目なマレーシアの国民性が、地域や従業員を大切にする同社の文化を通して調和している姿を随所で確認できました。


また自動車の電動化などを背景に拡大が期待されている抵抗器市場の成長を取り込むために、同社が既存の工場から10分の地に建設している新工場に詰め込まれるノウハウに関しても、その建設中の現場で説明を受けることができました。生産性が向上する計画を以てしても、より多くの従業員が必須となる規模の工場であり、その人材を確保できるという観点からも長きに亘り築いてきた同国との関係性により、同社だからこそ取り得た選択肢であると理解しました。
「稼働が始まった新工場も是非見てください!」と言っていただいた新工場立上げの指揮を取られている皆さまの誇り高い語気が心に響きました。
現在同社全体の投資計画からみてもマラッカ新工場は大きな成長ドライバーとして期待されていることが解ります。生産効率の改善活動を強みにしてきた同社ですが、実際これまでの経験で蓄積してきたノウハウの全てを既存工場に採用するのは様々な制約もあり困難でした。しかし今回建屋から設計するマラッカ新工場にはその全てをゼロベースで組込むプロジェクトが進んでおり、同社の競争力が強化される“夢の詰まった工場”の稼働に大きな期待を持つことができました。

 

 


 

さわかみアセットマネジメント(タイ)

タイ国で運用を開始したグループ会社に初訪問、同国での長期投資の意義の高さを確認。

 

タイの地で23年7月に運用を開始したばかりのさわかみグループに属するさわかみタイ社へ訪問いたしました。
同社はタイの一般生活者の資産形成に資するために、さわかみ投信と同じ哲学をもったファンド運営の途に就いたところですが、今後も異榻同夢(いとうどうむ)のグループ会社として様々なシーンでお互いの持つ情報を活用していけることが確認できました。運用調査メンバー同士の議論は初であったために、その内容はお互いの国の市場や企業の情報交換に留まらず運用~調査の戦略や手法まで幅広い範囲に及びました。今後は産業や企業などより踏み込んだ内容に発展させることができる手応えが得られました。
同国での資産運用業は当局の認可や規制の煩雑さに加え、経済発展の恩恵が都市部に偏る中で人口の高齢化が始まるなどと投資環境的に順風満帆な状況とは言えませんが、かつての同僚である川上社長の「長期投資はタイの一般生活者にとって、自助努力で格差から抜け出す大切な手段になるはず!!」との発言からは非常に大きな覚悟と責任を感じとることができました。

パソコンのキーを叩くだけで多くの情報に触れられるようになる中でコロナ禍でのオンラインミーティングの普及も加わり、フェイスtoフェイスでの対話やその場へ移動する価値は随分と過少評価されるようになりました。
一方で久しぶりに海外の現場に出向いた今回の調査は、常に未来に対して意志決定していく投資家にとって重要な“そこにはどのような人の意志が介在し、どの程度の確度で、いつ頃実現を期待できるのか?”など現場でしか得ることのできない生きた情報の価値を再認識させてくれました。
「カイガイの状況はいかがですか?」オンライン取材でその全てを把握したような慢心はせずに、現地で奮闘されている皆さまの背中を思い出しながら丁寧な企業調査を続けて参ります。

 

【アジア(タイ・マレーシア)調査特集記事執筆者: 運用調査部 アナリスト 斉藤 真】

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