Sawakami Asset Management Inc.

CONTENTS
# タグリスト
はじめに

初めまして。4月1日に入社しました佐藤と申します。

前職では国立の研究所にて「企業が排出する温室効果ガスの算定」に関する仕事に従事しておりました。その知見を活かして当社のリサーチに貢献していく所存ですので、末永く宜しくお願いいたします。

今回は地球温暖化の要因である温室効果ガス排出量に関連したレポートを書かせていただきます。
最近「スコープ1,2,3」という記事を新聞等で良く目にします。金融庁は東証プライム市場上場企業に対して、これらの温室効果ガス排出量の将来的な開示義務化を検討中です。今回はその「スコープ1,2,3」について簡単に解説いたします。

 

スコープ1,2, 3排出量の定義

3つの温室効果ガス排出量の定義は下記の図の通りです。「スコープ1」は自社内の企業活動で発生する排出量です。鉄鋼会社が保有する高炉の燃焼に伴う排出量や、海運会社が保有する船で航海している際に発生する排出量が該当します。「スコープ2」は電力会社等から購入した自社で使用する電力の使用に伴う排出量です。
スコープ1、スコープ2は自社内での企業活動に伴う排出量であるため各企業はその排出量を把握しやすく、すでに大部分のプライム市場上場企業が算定・開示済みです。一方で「スコープ3」の開示はそれほど進んでいません。

 

スコープ3排出量算定の難しさ

開示が進んでいない理由は、スコープ3は企業活動の「外」の排出量を算定しなくてはならないからです。
「外」の定義には下図にあるように「上流」「下流」があります。上流では自動車製造業の場合、車を作るために他社から購入した原材料ができるまでの排出量も算定する必要があります。アルミニウムを使用して製品を作っている自動車製造業は多いですが、スコープ3算定にはアルミの原料となるボーキサイトの採掘時に発生する排出量から、ボーキサイトを加工してアルミニウム地金に加工する工場が出す排出量、その地金を日本へ輸入する際のコンテナ船が出す排出量まで含めて算定する必要があります。「下流」では顧客に販売したクルマの燃料使用に伴う排出量や、クルマが廃棄された場合のリサイクル工場での排出量も算定する必要があります。
スコープ3では、企業自身だけではなく購入先や販売した顧客が使用する燃料の排出量も算定する必要があるため、企業にとって相当な労力・コストがかかります。

 

スコープ3排出量の割合が高い企業が多い

負担が大きいためスコープ3の算定・開示を進めていない企業も多いのですが、一方で上記のスコープ3を開示している企業の排出量の表を見ていただけばわかりますように、温室効果ガス排出量の内、9割以上がスコープ3という企業も多いのです。そのためスコープ1,2だけを削減したとしても、必ずしも地球全体の排出量削減に貢献したとは言えません。そのためスコープ3が脱炭素への重要な要素として注目されているのです。

「環境への対応」は企業にとってコストがかかるだけの問題でしたが、今世界中で大いなるビジネスチャンスに変化してきています。そのチャンスを生かして成長していく企業を徹底的に調査し、心から応援したい企業を見つけておきたいと思いますので、ぜひともよろしくお願いします。

【運用調査部 アナリスト 佐藤 賀一】

関連記事
RELATED

「コラム羅針盤」の他の記事
OTHER