
卯月四月。
多くの人にとって、新しい生活が始まる季節だ。
新しい制服に袖を通す若者。
慣れない満員電車に揺られる人。
仕事に追われ、気づけば夜になっている人。
新しい環境に、期待と不安が入り混じる季節でもある。
だからこそ、この季節に改めて「働くこと」について考えてみたい。
あなたは、なぜ働くのだろう。
趣味のため。自分の夢のため。そう言えるなら、それは幸せなことだ。しかし多くの人は、きっとこう答える。
「お金のために働く。生きていくためだ」
それも正直な答えだと思う。生活にはお金が必要だ。それは紛れもない現実である。ただ、ここで一つ想像してほしい。もし、あなたに10億円を渡したらどうだろう。
自由に使っていい。ただし条件が一つある。仲間たちとともに、青い海と空が広がる島で暮らすこと。最初は最高の気分かもしれない。ただし、その島が無人島であることを除けば。
さて、あなたは10億円を持って島に着いた。そこで何をするだろうか。すぐに気づくはずだ。10億円など、生きていくには役立たないということに。
水を探す者。
火を起こす者。
魚を捕りに行く者。
寝床を作る者。
気づけば人々は、自然と役割を分担し始める。そこにはもう、お金は存在しない。
無人島に立てば分かる。
働くとは、社会の中で役割を担うことだ。それが働くという行為の、一番シンプルな姿である。
お金という概念は、あとから生まれた。物々交換では限界がある。遠くの誰かと価値を交換するために、お金という仕組みが生まれた。つまりお金とは、人の働きを社会の中で交換するための仕組みにすぎない。
この無人島を大きく捉えれば、日本という島でも同じことが言える。
例えば東京を流れる神田川もそうだ。江戸の時代、この川は江戸の民を潤す水であり、江戸の都市を支える重要な役割を担っていた。
役割は時代とともに変わる。しかし社会の中で何かを担うという本質は変わらない。さらに広げれば、地球そのものが一つの島とも言える。私たちは皆、同じ島の住人なのである。
AIの出現によって、これから働き方は大きく変わる。AIが多くの仕事を担い、これまで人間が行ってきた仕事の多くは、確実に置き換えられていくだろう。しかし、社会の中で役割を担うという本質は消えない。
むしろ問いは、これからよりはっきりする。
あなたは、何を担うのか。
もし誰もが「お金のためだけに働く」と考える社会になれば、社会に必要な役割が担われなくなる。そうなれば、社会そのものが持たなくなる。
考えてみれば、これは長期投資の発想とよく似ている。私たち長期投資家は、目先の値動きではなく、社会の中で価値を生み出す企業に資本を配分する。
働き方も同じではないだろうか。目先の給与や肩書きではなく、自分が社会の中でどんな役割を担っているのか。それを問い続けることが、長い人生をかたちづくっていく。
どう生きるかを考えること。
それ自体が、人生への長期投資なのだ。
無人島の話を思い出してほしい。
私たちの働きは、社会のどこかにつながっている。
私たちは皆、
同じ島で役割を担って生きている。
【取締役副社長 熊谷 幹樹】
歴史に学び、未来を見る。
YouTube番組「熊谷幹樹と辿る長期投資の足跡」も放送中。ぜひご覧ください。
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