
物価が上がっている。
先日、近所のスーパーで卵1パックが250円を超えていた。かつて「物価の優等生」と呼ばれたあの卵でさえ、もはや元々の値段ではない。同じものを買っているのに、払う金額だけが増えている。しかしこれは、単なるインフレではない。日本の国力そのものが、落ちているのだ。
その象徴が「実質実効為替レート」だ。円とドルだけでなく、貿易相手国との関係をすべて含めた、円の本当の実力を示す指標である(出典:日本銀行/BIS)。この指数が、1995年のピークから2026年2月時点でその3分の1の水準まで下落し、変動相場制移行後の歴史的最安値を更新し続けている。
この事実を、私たち日本人はどれほど知っているのだろうか。
同じ給与をもらっていても、海外では以前の3分の1の価値しかない。30年かけて、その差が、着実に積み重なっていった。
かつて、日本人は世界を買っていた。海外の不動産、ブランド、リゾート。「爆買い」は、かつて日本人を指す言葉だった。その面影は今はない。世界も高くなった。だが、同時に円の力も、弱くなったのだ。
逆説的に言えば、世界から見た日本は驚くほど安くなった。訪日外国人が急増しているのは、日本が素晴らしいからだけではない。日本が安いからでもある、という事実を私たちは直視しなければならない。
では、その「安さ」をどう捉えるか。嘆くだけでいいのだろうか。
ここに、地方の大きな岐路がある。「安いから来る」という構造は、長くは続かない。価格に依存する限り、いずれ限界がくる。値札を下げ続ける店は、いつか底をつく。地方もまた同じだ。しかし、見方を変えれば、地方には磨かれていない原石が眠っている。水、土、食、そして人の営み。長い歴史の中で育まれた文化と暮らしの知恵。それは都市では再現できず、AIでも生成できない。実は、日本人自身がその価値に気づいていないだけかもしれない。価格ではなく、歴史と文化で選ばれる地方へ。それが、持続する道だ。
では、その原石をどう磨くのか。答えは二つある。一つは高付加価値化だ。土地の文化と食に体験としての質を重ね、世界に届ける。そこに集まる消費が地域に循環し、雇用を生み、若者が戻る。もう一つが、長期投資だ。円の実力が落ちた時代、預貯金のまま持ち続けることは、一見安全に見えて実は最もリスクが高い。世界で外貨を稼ぎ、その成長を日本に還流させる企業に、長期で資本を託す。それが、さわかみ投信の答えだ。投資のリターンは、東京に住む人も地方に住む人も、同じ金額として手元に戻ってくる。生活コストが相対的に低い地方では、その価値がより大きく生きる。お金が地域で働きはじめる、その瞬間から未来がつくられるのだ。
物価はなぜ上がり続けるのか。世界人口の増加、地政学的分断、関税の壁。要因は複合的だ。しかし円に力があれば、その痛みは半減する。ならば、私たちは何をすべきか。
原石を磨き、お金を働かせ、未来をつくる。
この三つが、答えだ。
その一歩を、今日から始めてほしいと思っている。
さわかみファンドとともに。
【取締役副社長 熊谷 幹樹】
歴史に学び、未来を見る。
YouTube番組「熊谷幹樹と辿る長期投資の足跡」も放送中。ぜひご覧ください。
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