何が起きても長期投資家として冷静に企業を見ていく

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IoTやロボットは労働環境を変えるか?
西 昨年はIoT元年とも言われるほど、急速に進むIoT技術に注目が集まりました。さわかみファンドの投資先企業の工場に見学に行っても、ほとんど人を見かけないという現場もあるようです。IoTの進化により、人工知能を搭載したマシーンが私たちの生活にどのようにかかわってくるのでしょうか?
 一部でIoTにより機械に雇用が奪われるのではないかといった指摘があるけど、そういった指摘は過去の歴史を見ればそう深刻な問題ではないんじゃないかと捉えている。例えば、労働市場というのはミスマッチにより、いつも時代に追いついていない。例えば建設現場の職人さんが一つのいい例。日本では90年代以降、徐々に公共投資が減らされてきたけど、相変わらず建設や土木に従事する人の数は多いままだった。
 その後、人余りの時代が長く続いた結果、建設関係に進む人材は減少し、経験者は高齢化し続けているために優れた職人の取り合いとなってしまっている。現在は全国各地で深刻な人手不足が問題となっている。マンション等の建設費の高騰により販売価格が上昇したけど、これには作業員のコスト上昇の影響もあるよね。
西 超高齢社会という時代のニーズもあり、介護や医療といった労働集約型の産業に労働人口がシフトしていくことが考えられますが、この分野はサービスや労働環境の改善が強く望まれる分野です。医療や介護の現場でイノベーションはあるのでしょうか?

 看護師の世界は職業としての歴史が長く、雇用はある程度保障されていると感じるけど、介護の世界はまだまだ産業として確立していない印象がある。介護保険という制度自体にもあまり歴史がない。だから、少ない介護保険料というパイの中で非常に無理を重ねているのではないか。ただ、超高齢社会では介護業界には非常に大きな成長の余地があるし、絶対に成長してもらわなくてはならない。

 そのためには、身体的に負荷の高い介護の仕事をサポートできるロボットの開発、普及が急務。投資家としては、介護業界にもっといい人材がどんどん挑戦して、IoTやロボットの技術を駆使しながらこれまでの常識を打破するようなイノベーションを起こして欲しい。応援投資家として、そして日本に暮らす一人の人間として介護業界を支えていかなければと強く思っている。

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ポケモンGOの大ブームが
教えてくれたこと
 去年の驚きの一つに、ポケモンGOの大ブームがあった。正直、これほどまでにゲームがみんなの生活に入っているのにびっくりした。夜道を歩いていたら、急に人だかりができている場面に何度も遭遇した。これまでゲームは若い男性だけの世界と思っていたけど、老若男女がポケモンGOを楽しんでいる姿に、時代の変化を痛烈に感じたね。
西 これまで草刈さんは「自分はゲームをしないから、そもそもゲームは必要だとも思っていない。だからゲーム開発の企業に投資する気もない」と言っていましたが、ポケモンGOの現象を見てこの考えに変化はありますか?
 確かに以前は、ゲーム業界に限らず自分が興味のない分野についてはその必要性について否定的に考えることがあったと思う。ある時、セミナーでお客様から「引きこもりの人が唯一外の世界と繋がれるのがゲームなんです。ゲームを起点に社会と繋がりを持つ、人付き合いは苦手だがバーチャルな世界の技術開発で貢献するという道も開ける。ゲームにはそういう役割もあるんです。」と言われ、ハッとさせられた。
 前に西島さんがアウトドアの魅力を力説している時にも「自分の興味のない世界、知らない世界でもこんなに好きで熱く語れる人がいるなら興味を持ってみよう 」と同じように感じたしね。強固な自分の価値観も大事だけど、それだけに固執すると見えてこないものもあるということに気付けたことは運用者として大きな価値があったと思う。
西 それはすごい変化ですね!確かにこれまで草刈さんには、どちらかというと触れると切れそうな鋭利な印象がありましたね。おかげで、運用の現場にはいつもヒリヒリとした緊張感があって、それはそれでいいことだと思うのですが、なかなか近寄りがたい存在でした。2016年は少し人間的に丸みができてきたように感じます。これにより、社内でもCIOの考え方がこれまでよりも浸透しやすくなっていると思いますね。